70 断れない依頼
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エスイアとジュイナはC組で大人気の調合書の著者である、あのスペンサーを目の前にして少し緊張しつつもしっかりとスペンサーの話を聞くのである。
「数日前にデニス団長とマリエルが潜入調査で手に入れてくれた魔石を調べていた時に気になった事があるんだけどね。君達が見た魔石はこの位の大きさだったかな?」
スペンサーは特殊な魔法陣の中に入った箱を開け、中にある魔石を見せたのだ。この特殊な箱はノワズ組の魔導具の1つであり現在王都での魔石事件に使われているのである。
「いいえ違います。それより少し大きめの魔石でした」
「色も少し違うかと……黒は黒なんですが少し灰色がかかった色をしていました。これは黒光りですが、くすんだ黒と言ったらしっくりくるのかと」
エスイアとジュイナは丁寧に答えたのだ。
「お兄様。それがどうなさったのですか?」
「この箱に入っている魔石は恐らく、マッセラ教会で作られた物なんだ。君達が見た黒い魔石は他国で作られた物なんじゃないか、というんだよ」
「どういう意味なんです?」
クリスティーヌの質問にスペンサーは丁寧に答えたのだ。
マッセラ教会で製作された魔石は漆黒の魔石であり主に魔力や生気を吸い取る役割をしており、クリスティーヌ達が見た魔石は灰色っぽい黒色で他国で製作された物だと言うのだ。そして、灰色っぽい魔石は体内に埋め込み力を増強させる人体に多大なる影響をもたらし、死に至らしめる物なのである。
「そこでだ。各地に黒い魔石の噂がある場所へ趣き魔導具を設置して欲しいんだ。勿論、初級生の生徒だから護衛として大人も着いていく」
「……大人……ですか?」
「お兄様……嫌な予感しかしませんわ」
クリスティーヌ達三人はもう先が読め、諦めたかのようにスペンサーの指示に従うしか術はなかったのだ。
「その大人というのはもしかして…」
「あぁ。デニス団長とローウェンだ」
「……やっぱり…デニス団長なのね…」
クリスティーヌは令嬢とはあるまじき白目向きという変な顔をしながらうなだれたのだ。きっとマリエルが見たら怒るであろう。
「ローウェン…さん?というのはどちらの所属なのでしょうか?」
そんなクリスティーヌを放置し、エスイアは不安を隠せずに恐る恐るスペンサーに尋ねるのだ。
「騎士団だよ」
「ここだけの話、まだデニス団長よりはマシだと思うわ」
「こら。クリスティーヌ。デニス団長に失礼だろ。デニス団長も優秀なんだから」
「クリスさん、どういう事?」
「ローウェンさんはグラッサ家の長男よ」
エスイアとジュイナは同時に深く頷き納得したのである。
三人の中でのデニス団長の評価は置き去りと言う名の放置によりだだ下がなのだが、グラッサ家はお世話になった分の贔屓目を無くしても、やはり信頼があり安心できる家なのだ。
「それとクリスティーヌ。ソルティオの件だけれど」
「え?ソルティオ?何かあったのかしら?」
「マリエルからの情報で気付いていると思うけど、トワライ王国での黒い魔石の件は第二王子反対派が関係しているらしいんだ。マッセラ教会とも関係があるとみても良いと思う。そうなると、ソルティオの周りも騒がしくなり、何が起こるかわからない。クリスティーヌ自身も身の回りを注意して欲しいんだ」
「やっぱり……そうだったのね。私の想定内だから大丈夫ですわ」
「ちょ、クリスティーヌと買い物行くだけで厄介事に巻き込まれたんだぞ?本当に大丈夫なのか?」
「ん?厄介事とは?」
エスイアの言葉に眉がピクリと動き、密かに前髪で隠れているこめかみに青筋が立ったのだ。静かにエスイアの次の言葉を待つスペンサーの後ろに黒いオーラが漂うのである。
「魔法大会前に街へ買い出しへ行ったのですが、そこで変な傭兵がいきなり俺達を襲ってきて……多分、クリスティーヌが狙いだったかと」
エスイアはスペンサーの黒いオーラの空気を一瞬に読み取り、ここは包み隠さずに話す方が得策だと判断したのだ。
「へーそんな事あったんだ。僕は何も聞いていないんだけど?クリスティーヌ、どういう事かな?」
「え。いいえ、お兄様には特に報告はいらないかと思いまして……」
"エスイア!!なんでお兄様にそんな事言うのよ!ややこしくなるじゃない!"
"だってさ、絶対これ言っとかないと後々俺等が痛い目みるやつだろ?"
"私もそう思います。エスイアに大賛成"
"裏切り者おぉぉぉぉ!!!後で覚えていなさいよぉぉぉぉぉ"
念話でまた下らない言い合いをしていた三人だが、クリスティーヌはスペンサーにしどろもどろと言い訳を並べ続けたのである。だが、そんな言い訳もスペンサーに通じる訳もなく、話が終わった後暫くは説教から始まり、終わりは小さな報告でも必ずする事、と約束を一方的にされやっと開放されたのだった。
開放された頃には日がどっぷり暮れ、付き合わされたエスイアとジュイナはもう自分達で口頭で報告するより早便で報告するように決めたのである。
げっそりした表情のまま三人は食堂へとはいったのだ。食堂は遅めの時間帯でもあり、食堂には数人の生徒しかいなかったのだ。
三人は静かに食事をし、静かに寮へ戻り明日の予定を確認しそれぞれの部屋へと戻り眠りについたのだった。




