6 ダニエル御対面ですよ
ありがとうございます。
ラブ要素今はございませんが、後々に。
クリスティーヌの父ガウスが婚約の話をしてからあれよあれよという間に日が経ち、婚約者ダニエルとの顔合わせの日がやってきたのである。
ここ数日、クリスティーヌは気分が悪い、体調不良など深窓の令嬢ぶって何とか会わなくて良い方法を模索し実行していたのだ。
だが、家族にはそんな幼稚な嘘は通用しないのである。本気で返ってくるのがエルノーワ公爵家である。
「気分が優れないわ。」
と言えば、兄のスペンサーが超苦い魔薬草ブレンドジュースを持ってきて飲ませ、追い打ちかけるように母のジュリエッタが健康に良いと言われる隣国の足つぼ師を寄越し、クリスティーヌを悶絶させる。
「体調が思わしくない」
と言えば、兄のスペンサーが更に苦い魔薬草ブレンドスーパージュースを持ってきて飲ませ、また追い打ちをかけるように、母のジュリエッタが体調がよくなると言われる食用カエルや食用幼虫などを使った食事を用意し、再びクリスティーヌを悶絶させた。
お陰で身体はすこぶる調子が良くなってしまったのだ。傍から見ればクリスティーヌ想いの家族なのだが、当の本人からすれば軽い虐待ではないのだろうか…と思ってしまうのである。
数日程同じようなやり取りを繰り返し、ようやくクリスティーヌは悟った。
この深窓令嬢作戦は駄目ですわーー!!
今更感が強いがこんな事でへこたれるクリスティーヌではない。
またしょーも…いや素晴らしい回避作戦を考えているのである。
しかし、顔合わせは回避出来そうにないのでクリスティーヌはマリエルに、地味作戦をしますわ、と無駄に宣言し、瓶底メガネをかけてただ後ろに束ねる髪型をし、服は地味色のドレスを選び決戦に備えるのであった。
「お嬢様…急に瓶底メガネをかけますと旦那様や奥様が驚いたりされませんか?」
マリエルは、クリスティーヌの髪を後ろにまとめ三つ編みをしながら不安そうに尋ねる。
「家族や屋敷の者には通達済みですわ。この瓶底メガネをかけると前が見えないですから、魔石を使い視力を調節をしますの。いわゆる伊達眼鏡になるのですわ!ウフフフ。私、冴えてますでしょ?」
クリスティーヌは鏡越しに渾身のドヤ顔を披露したのだが、視力調節せずとも伊達眼鏡にかわりないのでは……と喉まできた言葉を飲み込み平静を装ったマリエルである。
顔合わせ当時の朝は屋敷中、慌ただしく人が動いていた。
顔合わせの場所は、エルノーワ公爵家のガーデンテラスで行われる。
少し肌寒くなってきた季節だが、太陽の光が入り気持ちの良い風が吹く、エルノーワ家自慢のガーデンテラスだ。
テラスには何時も白いベンチと小さなテーブルが置かれているのだが、今日は大きいテーブルをテラスに出しクロスが敷かれ、椅子が綺麗に並べられている。
そして、現在クリスティーヌの目の前には容姿端麗な金髪の茶色の目をしたバードン伯爵家次男ダニエル・バードンがいるのだ。今日の装いは王都で流行りのネイビーと白のジャケットとパンツだ。ジャケットには綺麗な金の刺繍が施されており中々お洒落である。
対してクリスティーヌは、瓶底メガネに三つ編みを後ろに束ね、くすんだワイン色のなんの変哲もない普通のワンピースなのだ。明らかやる気がない事は伝わるであろう装いだ。
親達は、社交という名の自慢に腹の探り合いの駆け引きを見事に繰り広げている。クリスティーヌとダニエルは、あとは若いお二人で、と言う決まり文句により二人っきりにさせられていた。クリスティーヌにとったら、迷惑この上ないのである。
仕方なしにクリスティーヌは、自慢の庭を案内しようと声をかける。
「ダニエル様。お庭をご案内いたしますわ」
クリスティーヌは、この男の側にいると蕁麻疹がでますわ、と心が大暴れする中、平静を装ってニッコリと微笑んだ。
「あー。別にいいよ。花より俺の姿のほうが美しいし、何より俺と比べられる花たちが可愛そうだろ?それに君さ、センス全くないんじゃないかい?なんだい?フフッ。その野暮ったいメガネと服は?」
ダニエルは、開口1番にクリスティーヌの姿に指摘する。
クリスティーヌは色々と突っ込みたい気持ちを我慢し、待っていました!、とばかりに口角をあげ渾身の演技に努める。
「ですわよね。ダニエル様はお洒落でいらっしゃいますから、このような野暮ったいメガネでセンスのかけらもない服の女は似合わないと思いますの。ですから、婚約はなかった事にした方が宜しいかと思いますの」
内心では、そこに植えてるマンドラゴラの方がまだ美しいわ!引っこ抜いて叫び声を聞かせてやろうか、と令嬢にあるまじき悪態をついていたのだ。
「まー親同士が決めたものだし?いいんじゃないか。クリスティーヌ嬢は聞いていた話と全く違うな。美人だと聞いていて楽しみにしていたのに。残念だ。」
「まぁ。噂は噂ですし、自分で見られるのと人から聞くお話とはまた違いますからね。オホホホ(もうマンドラゴラ抜く。今すぐ抜いてやりますわ。宜しくなんてされてやりますか!)」
マリエルがただならぬ殺気を放つクリスティーヌの異変にいち早く気付き、そっとクリスティーヌの側に寄り身体を支える振りをしながら言葉を発する。
「ダニエル様、申し訳ございません。クリスティーヌ様は少し体調を崩されておりまして、今日はこの位で宜しいでしょうか?」
「あぁ。何だか顔色も悪そうだし、俺も帰るとするよ。こんな草や花だけの庭を見ても楽しくないしな」
「では。失礼致します」
あぁ……何てことを……
折角回避したのに、この次男坊は頭がアホゥなのかしら……早くお嬢様を部屋にお連れしなければ暴走してしまいます。
マリエルは、ダニエルに頭を下げクリスティーヌを急いで屋敷の中に押し込めたのである。
その後、体調がすこぶる良く機嫌はすこぶる悪いクリスティーヌは草原へ行き、ありったけの魔力を使いストレス解消をしていたのである。
その日の事は、エルノーワ領民の間でも噂となりクリスティーヌの黒歴史として刻まれる事となったのだ。
マリエル ナイスプレイ。
危うく死人が出るところでした。




