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67 狩られる前に狩れ

いつもありがとうございますm(_ _)m

 クリスティーヌの合図と共に三人は無詠唱で魔法を繰り出し同時に動き、相手を動揺させたのだ。


 エスイアは赤竜(ヴァーム)を召喚し素早く飛び乗ると空から傭兵に向かって容赦なく火炎を降り注ぎ、ジュイナは自分達のいる場所に防御結界を何重にも張りクリスティーヌのフェンリルに跨ったのだ。

 クリスティーヌは自分達の周りにいる傭兵達の下に魔法陣を展開させ、地面から蔓で足を固定させ自由を奪い次の攻撃へと備えるのである。


 傭兵達は悲鳴を上げながら、頭を抑える者、火が着き悲鳴を上げるもの、蔓をナイフで切り動こうとする者と一瞬にして慌てだしたのだ。


「この糞ガキ共!!容赦なく殺せぇぇぇ!」


 傭兵のリーダーと思われる男の怒号と共に傭兵達は必死に蔓をナイフや剣で切り落とすが、切っても切っても再生し動く対象物(傭兵達)を捕獲し自由を奪うのである。


 クリスティーヌはエスイアに合図をすると、無詠唱で辺り一面白い霧で多い尽くしたのだ。エスイアは素早く攻撃を止め、防御結界をヴァームと自身にかける。


 暫くして霧が明けると傭兵達は蔓に捕まったまま、ぴくりとも動かなくなったのである。


「上手くいきましたわね」


「さて、これからどうするかだな」


 ジュイナは蔦に捕まった傭兵達の場所に召喚した小さな蜘蛛を数匹向け、糸で身体を全て縛りあげエスイアが作った特殊な蔓の檻に放り込み防御、防音と姿隠しの魔法をかけたのだ。


 クリスティーヌが辺り一面に撒いた白い霧の正体は睡眠魔法である。焼き殺しても良かったのだが、この状況から見ると警備兵の誰かが裏切り自分達を身の危険に晒したのだろう。その誰かがまだ判らない時点で捕縛した事を公にし、デニス達に渡すのは得策ではないと判断したのだ。それに敵兵はまだ外壁の外側にもいるのである。


「敵の人数も判らないな。それに味方はきっと奇襲を受けて後方へと一時撤退したに違いない」


「私達を忘れてね」


「ええ。デニス団長には後でこっ酷く怒られてもらいましょう」


 クリスティーヌ達三人は作戦を練り始めたのだ。ただ、時間が限られており外壁の向こう側つまり、メンドラ国側にいる傭兵達がすぐに乗り込んでくる可能性もある。


「狩られる前に狩れ、だな」


「そうですわね」


 クリスティーヌとジュイナはフェンリルに跨り、エスイアはヴァームに乗り地上と空のふた手に分かれ念話での情報交換をしつつ敵の殲滅に繰り出したのだ。勿論、デニスの元へ現状報告と、私達を忘れた事は身をもってお返ししますから、との文言を最後に付け早便を出したのである。


 "右側前方に警備隊の装備をした者と傭兵達がいる"


 "捕まっているとかではなくて?"


 "雰囲気からしてそうじゃないと思う"


 "裏切り者かもしれないって事ね"


 "ああ。敵はまだ上空の俺にも気付いていない。やるなら今だな"


 "他にはわかる?"


 "いや、熱感知ゴーグルではこれが限界だな。あー……魔獣が数匹いるな。形から、多分巨人(トロール)とか人型魔獣だ。あとは小さいのが数匹……小人(ドワーフ)か……"


 "数を集めて戦力攻撃をするみたいね"


 "力でねじ伏せるってやつね"


 "やるなら今しかねーよな"


 "そうですわね"


 エスイアは敢えて空から敵の傭兵達に見つかるように動き注意を引き付けたのだ。


「上だ!」

「上にいるぞ!」


 エスイアの思惑通りに傭兵達は食い付いた。傭兵達はエスイアに向け火の矢や投石等を使い撃ち落とそうと空への攻撃ばかりに注意がいくのだ。トロールも棍棒を振りかざすがエスイアまでは届かない。エスイアはヴァームで火炎を撒き散らし、無詠唱で雷を落としていく。地面に雷が落ちると爆発音と共にぽっかりと穴が空いたのだ。


 "地面に地雷がある。気を付けろ"


 エスイアは念話でクリスティーヌとジュイナに忠告をするが少し遅かったようだ。


 空の攻撃にばかり手が一杯になっている敵の傭兵達。()では守備が手薄になる時を狙っていたジュイナが地雷を踏んでしまい、爆発してしまったのだ。ジュイナの瞬足がなければきっと身体は木っ端微塵に吹き飛んでいただろう。


 "もう少し早く言ってよ!吹き飛ぶところだったじゃない!"


 ジュイナは周りの敵を体術で薙ぎ倒しながら、ニズカザンの国境警備隊の一味を目視で捉える。クリスティーヌが魔法で周りから援護し、ジュイナが国境警備隊の捕縛に向かったのである。


「お前達のせいで計画が丸潰れだ!」


「ここで始末してやる」


 鋭い剣先をジュイナに向け切りかかってくる。流石に2人同時に攻撃をされるとジュイナとて苦戦をしてしまうのだ。裏切り者でも相手は警備隊の屈強な兵士である。ジュイナは素早さでカバーをし魔法を駆使し何とか応戦するが、やはり実践の差が出てしまうのだ。


 "ジュイナ!少し離れて"


 クリスティーヌはフェンリルから飛び降り、辺り一面に魔法陣を展開させ攻撃を開始する。

 敵の傭兵に容赦なく魔法陣から繰り出される光の刃を突き刺していき、血祭りにしたのだ。


 "あとは警備隊の二人の捕縛だけだな"


 エスイアは空から動向を確認し、何時でも攻撃出来る準備に入る。


 きっと、普通の令嬢や同じ歳の子ならこんな悲惨な光景を見れば心の傷となるだろう。しかし、クリスティーヌ達はそんな事を考える余裕などないのだ。

 ここは戦場であり、戦の最前線。常に死と隣り合わせなのだ。食うか食われるかの極限状態の中、綺麗事など言ってられないのである。


 クリスティーヌの援護から形勢を立て直したジュイナは、手前の警備兵から落としていく。殺さず捕縛するのだ。魔法陣を掌の上に展開し、無数の球を警備兵に向け解き放つ。警備兵の太腿や肩に風穴が空き膝から崩れ落ち地面にうつ伏せになりながら呻いている。 


 ジュイナはクリスティーヌに捕縛を頼み、もう一人の厄介な警備兵へ向かって攻撃を繰り出す。警備兵は詠唱をするがジュイナの攻撃によって上手く唱えらずに怒りを露わにするのだ。


「くそっ!小賢しい餓鬼のくせに」


 怒り狂った警備兵がおもむろに黒い魔石を取り出し自身の胸に埋め込みだしたのだ。

 警備兵が絶叫を上げながら、黒い影が身体全体に纏わり付き始めるたのである。


「ふはははははは。凄い。凄いぞ。力がみなぎってくる」


 目は紅く血走り、顔は青ざめ口が弧を描くように真っ赤に浮かび上がったのだ。


 "なぁ、これ非常に不味くないか?" 


 "冷静に応えますが、不味いですわね"


 クリスティーヌは、初めてみる光景に一瞬身体が固まってしまったが判断が遅れると命取りになると痛感しておりすぐに防御の体制に入るのだ。


「逃さん!皆殺しだ!!」

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