62 ジラン司教
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「ジラン司教様、最近手広くやり過ぎではないでしょうか?」
「大丈夫だ。我々が関与しているなど、誰も気付かないし気が付かないであろう」
「ですが、王立騎士に目を付けられると厄介になります」
黒いローブを着た者が、ストラトと呼ばれる青い帯を首からかけ、薄い黄色の礼服に見を包んだジラン司教と呼ばれる男に必死に訴えていた。
「ええぃ。大丈夫だと言っているだろう。何度も言わせるな。我らにはあの方がついてらっしゃる!」
ジラン司教は黒いローブを着た者を一蹴し、祭壇にある黒い魔石を光悦した顔で眺め自分に抜かりなどある筈がないと信じるのであった。
マッセラ教会ではバザーをしており、孤児の為の慈善活動をしているのだ。しかしそれは、表向きの活動であり本来の目的は、黒い魔石を広げ出来るだけ多くの人間から魔力と生気を吸い取る事なのである。
先程、数名の街人が教会に押しかけ娘の容態が悪くなったのは教会のせいだ、と大声で喚き散らし騒動を起こしていたのだ。
その娘の手首には教会から施されたという黒いブレスレットをつけており、巷では幸運の魔石と噂され人気がでているのだ。
折角、黒い魔石の良い噂が立っているというのに、このまま苦情を放置していれば街人達に悪評を流され、今まで行ってきた計画が全て水の泡になってしまう。そう考えたジラン司教は、騒ぐ街人を浄化の魔法を使い容態が回復するよう手助けするなどと嘘をつき、言葉巧みに落ち着かせながら教会の中にいれたのだ。
勿論、ジラン司教には浄化の魔法を使い正常にする気など全くないのである。
ジラン司教は教徒達にいつもの魔法を使うと伝え、自身は先程まで騒ぎ立てていた街人達に催眠魔法をかけ教会内の椅子に座らせたのだった。
準備ができたと声がかかり、自身も魔法の準備をするのである。
教徒達が一斉に詠唱を行い、ジラン司教と黒のローブの者は別の魔法の詠唱を始めるのだった。魔法詠唱の声は外に聞こえても構わず、寧ろ中ではきちんと浄化の儀式をしているとおもわせたいのである。だが、ジラン司教と黒のフードの者が唱える魔法は浄化の魔法とは違うものであり、独特な発音なのだ。少しでも声が大きすぎると周りから不審がられ教会内での行いが漏れる恐れがある。疑われないように慎重に声量を調節する必要があるのだ。
ジラン司教達の詠唱が終わると、街人達から白いモヤが黒い魔石へと吸い込まれ魔石は以前に増して艶が出ており、石自体から禍々しい気を漂わせているのだった。
街人達は、魔力と生気を奪われ目は虚ろになり顔は青白くなっている。触れれば倒れそうなほど衰弱し椅子にもたれかかるように座っているのだ。街人達が救いたかった肝心の娘は、残りの魔力と生気を全て吸われたのか間に合わなかったのかはわからないが、ぴくりとも動かず祭壇の上で目を閉じて横になっているだけだったのだ。
手首に光る黒い魔石だけが艶々と光り輝いているのある。
「この調子でいけば、もうすぐ例の件が遂行されるだろう。このバザーを期に街、いや王都にもどんどん魔石をばら撒き魔力と生気を一気に吸い取るように手配しろ。モルテリリーのような失敗は絶対に許さん。おい、お前達。こいつらはいつものように地下にでも放り込んでおけ」
「かしこまりました。国の警備兵はどういたしましょうか?」
「そこは大丈夫だ。金さえ撒けばどうとでもなるわい」
ジラン司教は不敵な笑みを浮かべ教徒達にそう言うと金貨を手にし、ならず者を雇い警備兵を痛めつけ情報を手に入れろ、と指示をするのである。
教徒達の中では、ジラン司教が些か暴走しすぎでは?と苦言を漏らす者も数名いたのだが誰もジラン司教を止める事はできないのである。
「ハミルは何をしておるのだ?」
「ハミル様とは先日から連絡が取れなくなっており、私達が必死に捜索をしております」
「貴奴の事だ。また何処かで道草でもくって遊んでいるんだろう」
「何か嫌な予感しかしません」
「くどい。心配しすぎだ」
教徒達は不安そうな顔のまま頭を下げ、ジラン司教の指示に従うのである。
地下の牢では、先程の抜け殻のようになった街人達やこの教会に寄って運悪く捕まってしまい魔力と生気を吸われた者達が押し込まれていたのだ。
側には黒い魔石が禍々しい光を放ちながら最後の最後まで力を吸い取ろうとしていたのである。
地下の別室には、黒い魔石の加工がされており、数名の黒いフードを被った者達が魔石に魔法をかけたり、身に付けるものなどに加工をしている作業をしていたのである。
だがある日を境とし、忽然と皆姿を消していたのだ。近辺など捜索をしたのだが、誰一人として見つからなかったのである。
ジラン司教は不信に思いながらも、別の者を寄越せと連絡係の黒いフードの者に言い放ったのだ。
外にはマリエルが仕掛けた魔導具がきっちりと作動されているが、マッセラ教会の者達は誰一人として気づく事はなかったのである。




