59 魔獣対決
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少し雲の多い空にラッパのファンファーレが響き渡り紙吹雪が舞い上がる。魔法大会2日目の決戦が始まる。
観覧席はいつもの倍の人が押し掛け、一時入場を規制し急遽、追加で特設会場まで用意したのだった。
街のダフ屋によれば一年C組の倍率は跳ね上がり91倍へとなったらしい。ラネック達エルノーワ領民達はホクホクとした顔でクリスティーヌ達の優勝を待っているのだ。勿論、何かあった時の為の備えも忘れていないのであった。
「皆、準備は良いか?」
コダックはクリスティーヌ達に声をかけると、返事を返し顔を引き締め会場へと入った。
クリスティーヌ達が会場入ると歓声が湧き上がるが、四年生が会場に入ると更に大きな歓声が湧き上がるのだ。
「アウェイ気味だな」
「ですわね。エスイアが愛想よくしたら良いのじゃないかしら?」
「だったらクリスティーヌの眼鏡を外すのが先だろ」
「「間違いない」」
どうでも良い言い合いをし、満場一致した所でアナウンスが流れる。選手一人一人名前が呼ばれ手を上げ前に出ると、国王、来賓、観客の順で頭を下げ挨拶するのだ。
「正々堂々とベストを尽くしやり切る事。では、始め!」
べアンド先生の声が終わると同時に、四年生の魔法攻撃が始まる。
簡単な魔法攻撃なので威力は少ないが、時間稼ぎには持ってこいだ。四年生は数名長い詠唱を唱えており次の攻撃を示唆している。
こちらも黙ってはいない。エスイアが赤竜を召喚し、火炎攻撃で応戦する。その間、メリッサとカミラは防御結界を張り魔導具の装置を組み立て始める。
四年生の詠唱が終わったのか、3人分の威力の攻撃をエスイアのヴァームに攻撃をし、自身の魔獣召喚をするのだ。出てきた魔獣はクリスティーヌと同じ黒大狼だ。すばしっこく中々やっかいである。
次々と詠唱し、四年生は魔獣を召喚していく。海蛇竜はとぐろを撒き威嚇しながら素早くこちらに噛み付いてくる。木魔人はこちらの魔力を吸い込み味方の魔力へと移していくのだ。
「おい!ルーダ!おされまくってるぞ!」
「わかってる!ジュイナも召喚しといてくれ!カミラはあいつを。クリスちゃんは……ぶっ放し許可する!」
ジュイナは直ぐに不死鳥を召喚し、素早さとかけ合わせながら反撃を繰り出す。カミラは言われたどおり、土魔人を召喚するのだ。ドフルドが地面を叩くと地面に亀裂が入り、みるみるうちに崩れだしホーリーを奈落の底へ落とす。そしてまた地面を叩くと地鳴りがし、亀裂が閉じていったのだ。
「装置完了、いきます」
スイッチを押すと天井に向かい何か光る物が打ち上げられたのだ。光りをよく見ると槍が猛スピードで幾本もこちらに向かってくるのだ。
四年生は慌てて魔獣に攻撃命令と自分達のフィールドに防御結界を展開する。
光りの槍が結界に刺さると、消滅したように光りが消えたのだ。その瞬間、結界がガラスの様にひびが入り粉々に砕け散ったのだ。
容赦なく降り注ぐ光の槍に魔獣も刺さり、呻き声を盛大にあげる。
「未だ!」
クリスティーヌが四年生を囲む様に何個も結界をはり、水龍を召喚し一気に水攻めをする。そこにジュイナのフェニックスの業火を降り注ぐのだ。
会場は静まり返り観客は勿論、教師達は唖然としていた。
べアンドが我に返り、勝利の宣言をする。
「そこまで!1年C組の勝ち!」
会場に歓声が起きた。王立学園創立以来、初めての1年生が優勝しそれもC組が取ったとなると大騒ぎが起きたのだ。
新聞記者がC組生徒達に集まり、インタビューを開始しようとするがコダックがそれを阻止するのである。そそくさと、C組メンバー達を闘技場内の控室に摘み出し、頭を抱えながら口を開くのだった。
「だから、お前達はやり過ぎだ!なんでこうも手加減出来ないんだよ!」
「先生、大分手加減しましたよ?」
「1年B組が相手だったらまどろっこしい事なんてしない」
「そうそう。一撃ガツンと総攻撃予定だった」
「わたくしも、黒龍を召喚してませんし」
生徒達は、何を言ってるんだ、この先生は、と言わんばかりの表情で口々に反論するのだ。
「おまっ、リヴェグブルとか出したら死人出るじゃないか!」
「いえ、大丈夫ですわ。ちょっと生死を彷徨うだけで、こちらに戻って来られるかは本人次第ですし、大丈夫ですわ」
「全然大丈夫じゃないだろーが!!」
クリスティーヌは、出さなかったから問題ないですわ、と分厚い眼鏡をクイッとあげたのだ。
「コダックせんせー、ルーダはまだ召喚してねーよ?まだまだ余力残してるしさ」
「だから、そーいう問題じゃ…はぁ……」
エスイアの言葉に反論する事を諦めたコダックは、この生徒達に正論は通じない、と悟りまた物は言いよう作戦に転じたのであった。
まんまと言いくるめられたクリスティーヌ達は、渋々コダックの言うとおりにするようになるのである。
水攻めからの業火責めにあった四年生達は、負傷しているが命に別状はないとのことである。
表彰が始まり、リーダーのルーダがトロフィーを受け取る。最優秀賞はジュイナが取ったのだ。今回こそは取れると思ったクリスティーヌは、地団駄を踏んだのであった。そんなクリスティーヌは、串肉を頂いて機嫌を取り直しエスイアにため息をつかれていたのである。
無事に何事もなく、魔法大会は幕を閉じたのだった。クリスティーヌ達が懸念していた、幸運の黒い魔石も出ずに安心していたのである。
クリスティーヌ達はトロフィーを寮の台座に置き、両手を腰に当て満足そうに見上げた。本人達は既に本来の目的であるジェシカ達を徹底的に負かすという事をすっかり忘れていたのであった。




