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57 人は見かけによりませんよ

 2回戦が終わり、1年C組はベスト4へと上りつめたのだ。今年の魔法大会は一味違う、と観客の誰もが感じたのである。まさか1年生が、しかもC組が残るなど思ってもいなかったのだ。


 生徒達がC組へ戻り、本日の最終戦の準備をしてるとき教室の扉が勢いよく開いた。


「お前たち〜!!もう少し手加減しろよ〜、さっきの試合でジュイナの父からの怒号が凄くて対応出来ないぞ!!」


 コダックは涙目になりながら、生徒達に助けを求める。だが、誰一人として助ける気配は全くないようで動く気配すらないのだ。

 仕方無しにエスイアとルーダがコダックの元へ行き、声をかける。


「センセーガンバッテー」

「オレラモ ガンバルカラー」


「全く優しさが感じられん言葉だ」


 コダックは肩を落とし、後ろに怨霊か何か不吉な物がついてるかのように淀んだ空気を出すのだった。流石に可哀相になってきた当事者であるジュイナが駆け寄り、コダックの耳もとで何かゴニョゴニョと囁いたのだ。


「本当に本当か?!一大事だぞ!!」


 コダックは慌てて教室を出て行き、ジュイナ達の親の元へと走り去ったのである。


「何を言ったんだ?」


「秘密〜」


 ジュイナはくすくす笑いながら、結果を待つ事にしたのだ。コダックが起こした行動により、大人の間で大騒ぎになったのである。勿論、ジュイナの父はその光景を目の当たりにし驚くのであった。


 ジュイナの母親は昔、一世風靡を巻き起こした大人気の売れっ子オペラ歌手だったのだ。全盛期に突然引退し、表舞台から去ったのだ。今も昔もジュイナの母ナージェアの歌を超えるものはいないと言われており、ナージェアを題材にした演劇もとても人気があるのだ。


 コダックもナージェアのファンの一人であり、サインを求めた際に大騒ぎになったという。そして、ジュイナも伝説のオペラ歌手の娘として注目され始めるのである。

 C組がその事を知るのはまだまだ先のお話。


 ルーダとカミラが作戦を練ってる時に、また扉を開ける音が室内に響いた。


「B組勝利!」


 その声に静まり、そして今までふざけていた生徒は顔を引き締め自身の作業に没頭するのである。


「このまま勝ち進んでくれれば、決勝であたるって事か」


()()()の話だけどね」


 カミラが念を押して言う。

 決勝の前に、準決勝戦があり中々厳しい戦いになりそうなのである事、去年の優勝クラス四年B組こと現五年B組は確実に今までとは違う事。


 そして、私達も記録しているように相手も記録しているだろうということ。


「なぁ。使役している魔獣さ、相手のやつらのは全部わかってるだろ?俺達のはバレてるのか?」


「エスイア〜良い質問!模擬戦での事はバレてると見て良いわね。だけど、まさかクリスちゃんに最強クラスの魔獣2体ある事はバレてもいなわよ。それにルーダも私も達のも見せていない」


 カミラがドヤ顔で答えるのだ。


「まぁ、次は楽に勝たせてはくれないだろうな」


 ルーダは作戦を考えるのであった。


 そうこうしているうちに、今日の最終戦の呼び出しアナウンスがかかりメンバーは闘技場へと向かったのだ。


 本日の準決勝戦は昨年優勝の四年A組、現五年A組なのだ。


 クリスティーヌはばっちり瓶底眼鏡をかけ、後ろに一纏めにした格好できているのだが、何故かこちらを見てくすくす笑われている。


 "ねぇ。わたくし笑われてませんか?"

 "自意識過剰なんじゃねーか?"

 "確かに……何か馬鹿にされてる気がしますね"


 念話で無表情を貫こうとする一年C組の生徒達は、五年A組の言葉によって無表情から一変するのである。


「こんな餓鬼共に負けたクラスは本当になにをなさっているのか」


「貴族でもない集まりに負けるなんて恥ずかしい限りですわ」


「一応、貴族はいてるみたいだぞ」


「あの瓶底やそこの男達だろ?」


「まぁ!瓶底なんて。野暮ったいこと」


「僕達上級生は優しいですから、跪ければ許してあげましょうよ」


 高笑いする上級生達はクリスティーヌ達を見て嘲笑い、侮辱の言葉ばかり並べたのだ。



 """ぶっ潰す!!!"""


 クリスティーヌ達の想いは一致した。


「では、今から準決勝一試合目を一年C組と五年A組!前にでて」


 "クリスちゃん、開始の合図から頼むぞ"

 "任せて"


「では、始め!」


 五年A組の生徒達は詠唱をしている途中でクリスティーヌに邪魔をされる事となる。魔力が高い攻撃は大半は詠唱が長いのだ。


 クリスティーヌは開始合図と共に、五年生の真下に無詠唱で魔法陣を展開し攻撃をする。

 魔法陣から突き上がる槍が、五年生の腕や脚を刺す。血飛沫が飛び散り、悲鳴があがる。


 "お貴族様の詠唱ごっこに付き合ってられねーよ"

 "エスイア、そのまま叩きつぶせ"


 メリッサとカミラが五年生の周りに魔法壁を作り逃げられないようにし、エスイアは防御魔法をかけながら無詠唱で火炎魔法を繰り出す。


 ルーダとジュイナは、魔導具を持ち負傷した者を片っ端から狙い遠くから撃ち込むのだ。


 ルーダとジュイナが撃った球は、負傷した者の近くにいくと魔力を感知し弾け、中から柿色の蔦が延び狙った者の身体に巻き付いた。


「ひゃっひゃっ、ひやっひやっ」


「やめ……ひやっひゃっ、やめろ、ひやっひやっ」


 闘技場に似つかわしくない、盛大な笑い声が響き渡る。観客は、何事かとオペラグラスで確認をするが身体に蔓が巻きついている姿しかわからないのだ。


「成功だな。笑い死にしなけりゃ良いけど」


「駄目。私、見てるだけで、プッ…フフフ」


 カミラが五年生の滑稽な姿を見て笑いを堪えていたが、とうとう吹き出してしまったのだ。


 五年生はC組の魔導具(おもちゃ)によって、実験台にされているのである。ルーダとジュイナが撃った物の中身は、植物の種(リグロード)だったのだ。リグロードは蔓を伸ばし、蔓に捕まると綿毛が幾つも出てきて全身をくすぐるという全くくだらない発明なのである。


 五年生の戦闘不能数が4人となったところで、メリッサに向かって攻撃がしかけられた。

 五年生の狙いは回復役のメリッサだったのだ。


 メリッサは腕に軽い火傷を負ったのだが、黙っている訳ではなかった。きっちり、魔獣召喚し魔獣の餌食になってもらったのである。


 メリッサの召喚は魔獣草薔薇(バルラ)だ。バルラは名前の通り、魔獣と薔薇が合わさったものなのだが大きさや根と茎の長さも自在に変えれのだ。花粉を撒き散らし、幻影をも見せる厄介な魔獣草である。モルテリリーと似ているが、バルラは魔獣草なので移動可能なのだ。

 魔草好きなメリッサらしい魔獣(草)である。


 残り一人は、ルーダが体術により打ちのめしていたのだ。


「五年生A組、戦闘不能により一年C組の勝利!」


 試合終了のアナウンスが入り、救護班達が五年生の手当に入るのだった。


 五年生の戦闘不能にするまでの時間は僅か10分程。一年生なのに上級生を叩きのめす圧倒的強さに観客はまたもや度肝を抜かれ、座ったまま呆然としているのであった。

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