4 魔獣と魔法ですよ
ご覧頂きありがとうございます。瓶底メガネはまだ活用しません。もう少し後で使います。
クリスティーヌは手に魔力を込め、再び魔法陣を展開させる。
「お嬢様の魔力はいつ見ても、美しいですわ。魔力が高ければ高いほど、見える魔力がキラキラと輝くのですね」
マリエルは、ほぅ、と感嘆の声を漏らし、クリスティーヌの魔法陣に見惚れるのである。
少し魔力量を多くする為に掌に集中する。
魔力が掌に集まってるイメージをすると集まりやすいのだ。初歩的な魔力調節の一貫であり、これが出来なければ魔力暴走と繋がるのである。
クリスティーヌが魔力を流すようにイメージをすると、魔法陣は先ほどより少し大きくなり、青白く光っていた部分が更に濃く光るようになったのだ。
「スモーグ、魔法陣に入りなさい」
スモーグはクリスティーヌの命に従い、素早く魔法陣の上にちょこんと座る。
するとスモーグが一回り大きくなり、白色の毛の中に銀色の毛が交じる身体になったのだ。
魔獣は使役者により、覚醒が出来ると言われているが魔力が少ないと不発に終わり失敗するのである。
ふぅ。
なんとか魔力の注入はできたわ。
この6歳児の身体は魔力の流れがまだ発達しきれていないからやりにくいですわ。
早く学園入学が来ないかしら?
そしたら学園の森に入ってですね…
うふふふ…
感情とヨダレがダダ漏れのクリスティーヌの姿を見る侍女のマリエルとスモーグは、同時にため息をつき呆れはてていたのだ。
どんだけ可愛らしくても、魔獣と魔草が絡むと残念な姿になるご令嬢、それがクリスティーヌ・エルノーワである。
「スモーグ、いつものあれをやってちょうだい」
「キャウン!」
スモーグは元気に返事をし、地面に鼻をつけると、土が一直線線にゴボゴボと盛り上がり数メートル先に数体のゴーレムを出現させたのだ。
「このゴーレムを見ると、スモーグ捕獲の時を思い出しますね。泥まみれになり、旦那様と奥様にこっぴどく叱られましたものね」
マリエルが遠い目をしながら、ブルっと震える。余程、お父様とお母様の説教が恐ろしかったのだろう。
「懐かしいわね。そもそも、スモーグはただの癒やし犬ではありませんのよ?
土属性の魔獣。土に関する魔法が得意でおまけに探索もできる優れ魔獣なのですわ。エフェクトをかけてやれば奇襲攻撃にも使えますし、メヌンと並ぶポピュラーな魔獣ですわよ」
「ですが、お嬢様。この領土では、一般的な使い方以外にもスモーグは使われていますよね?」
「ここはエルノーワ家の領土よ?魔獣の生態を熟知しているだけでなく、応用に活用できるようにも考えられているのよ」
マリエルは、なるほど…と呟き、少し考えながら確かにアレはコレで…と、ブツブツと呟き始めた。彼女も変わり者と言われるエルノーワ家で過ごす時間が長い為に少し感化されているのだろう。
クリスティーヌはマリエルの姿をチラリと見ながら、また始まったか、と眉を下げそのまま放置し、スモーグの作ってくれたゴーレムに向き合い攻撃をしかける準備をする。
「はあぁぁぁぁぁ」
気合と同時に魔力を両手に込め、掌をゴーレムに向け自分の前に魔法陣を展開させる。
土属性には水属性が効きますが、今の私の魔力がどれ程あるのか知りたいわ。
で・す・か・ら、ここは火属性で行きましょう。
火力魔法が一番魔力を測るのに良い訳は、単純に魔力が強いと炎が強い、弱いと炎も弱い、ひと目見てもわかりやすいのである。
クリスティーヌは展開した魔法陣にエフェクトがかかると同時にゴーレムに攻撃を開始する。
「いっけぇぇぇぇ」
無数の火炎球が一斉にゴーレムに向かって飛び、数体のゴーレムに当たる。
轟音と共に地響きが鳴り、辺り一面に土埃が舞い目の前は何も見えなくなってしまったのだ。だが、クリスティーヌは攻撃をやめない。片方の掌で左から右にすっと魔法陣を撫でると、空に魔法陣が現れた。
空に魔法陣を展開できるかどうかは、今の私には全くわかりませんでしたわ。
一か八かでやってみましたが、なんとか成功ですわね。18歳の時の魔力のままなんて何て幸運なのかしら。
もうチートというやつですわね。うふふふ
コレで魔獣の研究がしやすくなって、あんな事やこんな事が……
ダメダメ。今は、魔法に集中ですわ!
クリスティーヌの悪い癖は、どんな時にでも発症する。慣れれば可愛らしいとでも言えるが、なれなければ出来るだけお近づきにはなりたくない人物と認定されるのだ。
クリスティーヌは空に展開した魔法陣に力を注ぎ、魔力を徐々に注ぎ込みとてつもなく大きな火の玉を造りだす。
クリスティーヌはニヤリ、と口角をあげ効果を最大限にする為に詠唱する。
「フィフラム!」
特大火球が数体のゴーレムの位置に落とされたのだ。
火球の威力により、とてつもない轟音と風圧が辺り一面に広がる。辺りは焦げ臭く何が焼けたにおいなのか、もはやわからない。
きのこ雲が空に向かって立ち上がり、マヌマヌ森の野鳥が羽音を立て一斉に空に飛び去る。
マリエルは、顎が外れたとばかりに口をあんぐり開け、何が起きたかを判断するのに数秒止まってしてしまっていたのだ。
はっ、と我に返り仕える主人であるクリスティーヌに駆け寄ったのである。
「お…お嬢様!何ですか!その魔力量は一体どうなさったのですか?!」
クリスティーヌは、驚くマリエルを尻目に土埃で茶色くなった髪や服を音を立てながら丁寧にはたき、汚れを落としたのだ。
「わからないですわ!!何か出来たみたい!」
テヘぺろ。
と舌を出し、何故か分からないが出来た風を装う。誰が見てもクリスティーヌが胡散臭い芝居をしているのはバレバレなのであった。言うまでもないく突っ込む事はしないのである。
マリエルに、この状況を説明をしろと言われましても今までの事をどう説明すればよろしいのかわかりませんし、何より面倒ですわ。
そうだわ!高熱のせいで魔力が更に強くなった事にしましょう。それなら、マリエルも納得してくれるに違いないわ♪
先ほどから、チクリチクリと胡散臭いとばかりの疑いの目を向けるマリエルにクリスティーヌは言ったのだ。
「きっと高熱で魔力が開花したのですわ!」
クリスティーヌは満面の笑みをマリエルに向けなんとか、誤魔化せれる事を必死に心で祈る。マリエルは、500のダメージを受けた。
「お嬢様……その笑顔100%は私には眩しいです!そうですね……3日も高熱でうなされていたんですものね。頭のネジがちょっとやそっとズレてしまうのは仕方ないですものね」
マリエルは大きく頷き、腕を組みながら色々と違った方向へと納得する。
「ちょっと…主人を軽くディスるのはお辞めなさいよ。そこはもうちょっと言い方があるでしょう!!なに?この侍女……10個上だからって言いたい放題じゃないの」
クリスティーヌは頬を膨らませながらプンスカと文句を言い、家路に向かうのだ。
勿論、屋敷に着いた後、マリエルとクリスティーヌの姿を見た両親から雷を落とされた事は言うまでもない。
後にマリエルはこの事について思い出す時は必ず震え上がるようになるのである。




