46 お喋りな妖精達
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やってしまいましたわぁぁぁぁぁぁぁ
クリスティーヌの絶叫が森に木霊する。
木々に止まっていた鳥が一斉に飛び立ち、小さい動物達が何事かとひょっこり顔を出しこちらの様子を伺っている。
こ、ここは一体何処なのでしょうか…
周りは見渡せば木・草・木・草……木と草しかない場所に1人佇んでいる。
そうである。クリスティーヌは迷子になってしまったのだ。クリスティーヌがこうなった訳は、ほんの数時間前に遡る。
クリスティーヌはソルティオに誘われ、トワライ王国の水の精霊を見に来たのだ。
トワライ王国は幾多の精霊や妖精が水や木々に宿っており、魔力の強い者には人型に見え、弱い者には光りとして見られる。
その昔フェイディーネという水の大精霊がトワライ王国に加護を与えた為に、この国は栄え争いのない清らかな水資源を持つ国となったというのだ。
フェイディーネが宿ると言われる聖なる樹木へ行き、樹木の前にある泉に住む精霊達に会いに行くつもりだったのだ。そんな矢先、クリスティーヌはいつもの好奇心旺盛な悪い癖が出てしまいトワライ王国の小さな魔獣や魔草に見惚れ森へと彷徨ってしまったのだ。
自国のマヌマヌの森ならわかるのだが、初めて来た森だから道なんてわかるわけがない。
それに、むやみやたらに使役している魔獣を出してしまうと精霊達が驚いたり、怒る可能性もあるので迂闊にフェンリルも出せない状況なのである。
マリエルとソルティオのお付きの者達が来ていたのだが全く近くに居ている気配もない。
完全なるアウェイでの迷子なのだ。
ここまで完璧なる迷子はきっと、クリスティーヌにしか出来ないであろう。
クリスティーヌは何も考え無しに歩いては余計に迷うと確信し、一か八か周りに飛んでいる妖精にフェイディーネの聖なる樹木に案内してもらおうと考えた。
ただ、妖精は悪戯好きと聞くので、騙されるかもしれない、と腹をくくっているのだ。
「綺麗な妖精さん、フェイディーネの聖なる樹木というのは何処なのか教えて頂けないかしら?」
クリスティーヌの周りには数個の光が付いて来ている。よく見ると背中に羽が4枚ついており、赤い髪や緑の髪をしている妖精達がクリスティーヌに興味を持っているのだ。
皆、耳が尖っており綺麗な顔付きをし飛ぶ度にきらきらと粉が舞っている。
クリスティーヌの声に反応した妖精達は口々に話し出した。
「貴方はだれ?」
「この国の人じゃない」
「何処からきたの?」
「一人なの?」
「そうね、まだ名前を言ってなかったわ。ごめんなさい。わたくしはニズカザンから来たの。クリスティーヌよ。今は一人なのだけれど、ソルティオと一緒に来たのよ。ソルティオって知ってる?」
クリスティーヌは小さな妖精達の質問に丁寧に答えた。ソルティオの事はわからないかもしれないが、妖精は記憶力もよく一度見かけた人物を忘れないと言われているので聞いてみたのだ。
「知ってるよ!」
「いつも綺麗なお花をくれるんだよ」
「フェイディーネ様のお気に入りだもん」
「クリスから緑の匂いがする。獣の匂いもする」
妖精達がクリスティーヌの周りを飛び周り、一生懸命に話す者、嬉しそうにする者、匂いをかく者とそれぞれだ。
「ソルティオを知っているのね。獣…?んー、使役してる魔獣の臭いかもしれないわ」
「魔獣を使役してるの?」
「私達を食べさすの?」
「この人悪いやつかもしれない」
「クリス悪いやつ!」
「ちょっと、ちょっと待って!悪い人でないわ!ソルティオのお友達よ。ソルティオがここに連れて来る人は皆良い人ばかりでしょ?」
魔獣を使役しているだけで、妖精達の敵になりそうな事は避けたいクリスティーヌ。必死に弁解と、ソルティオを使わせて頂くことにする。
妖精はクリスティーヌの質問に難しい顔をした。
「悪いやつも一緒に来たことある!」
「黒い影がついてるの」
「今日も見えた」
「今日は黒い影が大きかった!」
「黒い影??黒い影が何かするの?」
「うん!黒くて大きな影!」
「真ん中が赤く光ってるんだよ!」
「わからないけど怖い!」
「フェイディーネ様が近づいちゃダメって言ってた!」
クリスティーヌは妖精達の話を聞き、自分の中で仮設を立ててみる。
マリエルは除外したとしても、護衛2人と側近1人の3人のうちの誰かが何かに侵されていると言う事かしら?黒い影?不穏な事なのかしら?
何の理由にせよ、状況的に宜しくない事は確かだわ。急いで合流しないと。
「ねぇ。樹木の場所教えてもらえない?もしかしたら、その黒い影の悪い奴がソルティオやフェイディーネ様に何かするかもしれないわ」
「大変!フェイディーネ様に言わなくちゃ」
「クリスは信じれるの?」
「悪い奴じゃない?」
「駄目だよ!クリスは知らない人!」
妖精達が口々に言いだし、反対する者、賛成する者と何も決まらない状況になってしまったのだ。クリスティーヌは胸がざわざわと騒ぎとても嫌な予感がしている。
クリスティーヌは少し考え、ポーチから革で出来た少し年季の入っている小さな巾着を取り出した。
「ねぇ。貴方達、この木の実なにかわかる?」
「んー?見た事ない」
「わからないけど、暖かい感じがする」
「緑の匂いがするわ」
「私はこれ好き」
「これはね、私の国では真実の実と言われているの。嘘をつくと絶対に芽を出さないのだけれど、正直でいてると直ぐに芽をだすのよ?試してみる?」
「試す!」
「なににする?なににする?」
「えーっとねぇ、んーわかんない」
「じゃあ、この国は好き?」
「えぇ。緑も多いし水もとても綺麗で大好きよ」
クリスティーヌが妖精の質問に答えると、手に乗せた木の実が割れて芽が出てきた。
妖精達は凄い、凄いと目を輝かせて興奮している。
「次は、嘘をついてみるわね。何か質問してみてくれるかしら?」
「んー、何がいい?」
「私、私がしたい!」
「駄目だよ。次の人の番」
「あ!フェイディーネ様と会った事ある?」
「あるわよ」
すると、先程の芽を出した種は芽を引っ込め殻を閉じてしまったのだ。
「本当だ!」
「凄い!」
「でしょ?なら、質問してくれるかしら?悪い人?って」
「うん!する!」
「貴方は悪い人なの?」
「黒い影と関係ある?」
「悪い人ではないわ。黒い影と関係があるかはわからない。もしかしたら、何かわかるかもしれない」
皆真実の実に注目する。殻が割れ、生き物みたいにひょっこりと芽を出した。
「わぁぁ。大丈夫なんだね」
「大丈夫!」
「フェイディーネ様の樹木に案内する」
「うん。クリスは大丈夫な人」
クリスティーヌはほっとして妖精達に、ありがとう、とお礼を言う。他の妖精達も集まり、クリスティーヌの周りには光りの球が無数に飛び交っている。
「クリス、大変」
「ソルティオ危ない」
「急ぐ!早く」
「えっ?!どういう事なの?」
クリスティーヌは妖精達に聞くが、皆、急いで、としか答えず、状況がイマイチわからないまま、妖精達の指示に従い目的地まで急ぐのであった。




