45 初めての経験
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仮面舞踏会に戻った二人は、ダンスを踊ったり食事を共にしながら打ち解けていくのである。
クリスティーヌとの壁が消えていくのに時間はそうかからなかったのだ。勿論、情報収集もきちんとしているのである。
よくよく話を聞けば、ソルティオは魔獣と魔草が好きでニズカザン帝国からスペンサー著書の本を取り寄せる程好きで詳しいらしい。
今度、トワライ王国の貴重な魔草を栽培しているので見せてくれると言うのだ。
ソルティオの魔獣や魔草好きのきっかけは、自分が毒殺されかけた事だったという。幼い頃、危険な植物と知らず言われるままに摘もうとした時に花に噛まれ、毒に侵されて生死の境を彷徨ったのだ。魔草にも毒を持っているものが沢山あり、意思を持つ物など多様なのだ。
その一件があり、自分の身は自分で守るという精神が宿り今に至ったというのだ。魔獣についても同様の事らしい。知識があれば危険な目に遭わないと。
そして現在は女性に媚薬をもられそうになったりとしているらしいが未然に防げているそうだ。
クリスティーヌは自分の兄の本の威力にも驚いたが、今度サインを本に書いて貰おうと斜め上の事を考えていたりしたのだ。
ソルティオというと、トワライ王国の魔獣や魔草について詳しく話を聞きたくて、前のめりで食いつくクリスティーヌに若干驚いたのである。
一般の令嬢は、やれ宝石だ、やれドレスだ、やれ自分ファーストだ、と物や自分を優先し何を話してもそうですねとしか返ってこない。
話に花が咲くどころか、萎れてしまう。合わないと思い断りの返事を入れるとありもしない噂や、ヒステリックな態度で押しかけてきたりする。
あっと言う間に舞踏会の時間は終わり、ソルティオは残念そうな顔をする。
「実はリヴの海で会う前に、君の事を街で見かけたんだ。その時に、美しく凛々しい君に惹かれてしまったみたいなんだ。だけど、君への僕の印象は最悪だね」
にっこりと優しく笑う姿は金髪美男子の王子様そのものなのである。きっとこの笑顔を見た令嬢は倒れるか、勘違いしてソルティオを襲うであろう。
流石のクリスティーヌも頬を赤らめ俯いた。
「そんな事初めて言われましたわ」
そうなのだ。クリスティーヌは恋愛事には少々……いや大分疎いのだ。
前回の件があろうと、脳内ダニエル菌に侵されていたのである。それに身近な男性ですら、そんな事を言われた事がないのだ。
クラスの男子達はクリスティーヌを美人だ、可愛らしいとは言うが全く恋愛対象としては見ていない。何かのマスコット的な物だと言っていたが意味はわかっていない。
そしてアレクシスは、いい感じになった時もあるのだが何だか兄弟のような感じがするのだ。そもそも、好きだとも何とも言われずアレクシスに好意を寄せる令嬢達から嫌がらせをされるものだから寧ろ迷惑をしていると思っている。
ソルティオからの言葉はクリスティーヌにとってはじめての経験なのだ。
「本当にそうなのかい?言われ慣れているのかと思ったよ。なら、私は第一号だね。悪い印象から挽回できたかな?トワライ王国にはまだ滞在するんだろう?」
「まだ暫くは居るつもりですわ」
「じゃあ、明後日、水の精霊の場所に案内してあげるよ」
「本当に?!嬉しいですわ」
「あとで早便を送るよ。デート楽しみにしてるよ。今日は手伝ってくれてありがとう。お陰で色んな情報が手に入ったからね」
ソルティオはそう言うと、クリスティーヌの手を取り手の甲に軽くキスをし、おやすみ、と耳元で囁くと会場へと戻っていったのだ。
クリスティーヌはその場で硬直し、顔は真っ赤になり後ろに倒れそうになったのである。すぐさまマリエルが動き、クリスティーヌを支えていなければまた頭を打つところだったのだ。
お嬢様の弱点は恋愛耐性がない事、とマリエルの脳内に書き加えられたのは秘密である。
そして、クリスティーヌはマリエルに抱えられ、宿に付いても未だにぼーっとしているのである。
湯浴みの支度をし、クリスティーヌの髪を丁寧に洗い櫛で解きながらマリエルは話をした。
「お嬢様は、デートに行かれるのですか?」
「で、で、デートだなんてそんな!」
顔を真っ赤にしながら、しどろもどろになりながら慌てふためくクリスティーヌをマリエルは落ち着かせて聞いた。
「まぁ、ソルティオ様は良い殿方ですよね。
ただ、お嬢様のお気持ちはどうなんでしょうか?」
「わたくしの……気持ち?」
クリスティーヌは少し冷静になって考える。
わたくしは、滑って過去に戻ってきたのよね。それまでダニエルと結婚する事しかわからなかったし、他の令嬢に意地悪をしたのだってダニエルを取られたくなかったから。かといって、ダニエルからは義務のお誘いしかなかったわよね……。好きかと言われればどうなのかしら?始めは好きだったのよね、きっと。
ソルティオ様から言われた事はドキドキしたし、嬉しかったりもした。色んな話をして驚いたし、楽しかったわ。
「ねぇ、マリエル。恋って一体何なのかしら?」
クリスティーヌは難しい顔をしながら呟く。
「恋……ですか?そうですね、その方の事を考えるだけで胸がドキドキしたり、苦しくなったりしますね。他には、一緒に居て嬉しかったり、楽しかったり、胸が暖かくなったりと幸せな気持ちになりますね」
「それだったら、クラスメイトの皆と過ごしてる時もそうよ?新しい魔導具が成功するかドキドキしたり、失敗したらどうしよう……と苦しくなったり」
「いいえ、お嬢様。それと恋とはまた別なんですよ」
「ん〜……わからないわ。けど、ソルティオ様から言われた言葉は悪い気がしないのはわかる」
「それで良いんですよ。少しづつ恋とは何かを知っていけたらいいんですよ。ふふふ」
マリエルはクリスティーヌと恋の話が出来る日が来るとは思わなかったので、終始ニマニマとした顔をしている。
「マリエルは好きな方がいらっしゃるの?」
「ぶはっ、お、お、お嬢様…不意打ちはいけません」
「いらっしゃるのね。ふふふ。どんな方なのかしら?」
「そうですね、逞しく真っ直ぐな方、でしょうか」
唐突なクリスティーヌの質問に驚いたマリエルは、観念したように想い人の事を話す。
「だから、マリエルは縁談を断っているのね?私の知ってる方?」
「そうです。貴族なので断れるのももう限界まで来ていますし、わたくしも20歳になります。もう行き遅れと言われる歳なのでそのまま独身でいようと思っています。お嬢様も知ってらっしゃいますよ」
マリエルは頬を染めながら、照れくさそうに優しくクリスティーヌの質問に答えた。
クリスティーヌはうねりながら、1人で悩んでいる。途中でマリエルに、余り考えると知恵熱がでますので、と言われて中断させられたのだ。
結局マリエルの想い人はわからなかったが、マリエルのきらきらした顔を見ると恋をしているという事が少しわかった気がしたクリスティーヌであった。




