44 仮面舞踏会
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重厚な扉を開くと、そこは別世界だった。
天井には豪奢なシャンデリアがいくつもあり、大理石の床は美しく磨かれている。壁には有名な絵画が飾っていて貴重であろう古美術品などが壁際に置かれていた。
会場の中央では眩い光りを放つ宝石を身に着け、美しいドレスを身に纏った女性達と上等な燕尾服やタキシードを着こなす男性達が踊っている。ダンスをしない者は中央を囲むようにグラスを片手に談笑をしており、皆様々な仮面をつけている。
普通ならば最初に主催者に挨拶をするのが礼儀だが、他国の仮面舞踏会であり尚且つ面識のない主催者なので何処にいるのかもわからない。
クリスティーヌは悩み、誰かに声をかけ聞いこうとした時、仮面をつけた明るい艶のある金色の髪をした背の高い男性が声をかけてきた。
「失礼。謎のお嬢さんですか?」
「と、いうと……貴方がソルティオ・ロンズデール様でございますか?」
「そうです。この度は不躾な手紙を送ってしまい申し訳ありません。そして急にも関わらずこのような形でパーティーに参加して頂きありがとう御座います」
「いえいえ。申し遅れました。わたくし謎のお嬢様で御座います。この度はこのようなパーティーにお招き頂きありがとう御座います。それにこのようなプレゼント、ご丁寧に監視の魔法まで至れり尽くせりで嬉しい限りですわ」
ニッコリとよそ行き極上スマイルを顔に貼り付け、監視もして舞踏会に強制参加をさぜるをえない手紙は送ってきたのは何方かしら?と嫌味をたっぷり込め、クリスティーヌは美しいカテーシーをとる。
ニズカザンでは、学園前までは婦女の礼で済まされていたが学園入学と共にカテーシーをする事が一般的なのだ。他国では大きなパーティーや公の催し等でカテーシーをする事が一般的である。
「お名前を教えてくださらないのですか?」
「名乗る程の者ではございません故に。目的は何でございますか?」
「これは手厳しい。では、こちらへどうぞ」
手を差し出され、クリスティーヌはそっと手を添え、客間へ通される。クリスティーヌは怪訝そうな顔したが、室内では既にマリエルがいたのでほっとしたのだ。ソファーに促され静かに腰を下ろすと、ソルティオが口を開いた。
「さて、本題ですが貴方はどちらから来られたのですか?答えによっては我々は貴方を捕らえなければなりません」
「どういう事ですの?」
「お答えして頂ければ、お話を致します」
クリスティーヌはマリエルの顔を見ると、マリエルは目を伏せ頷く。つまり、この状況は宜しくない、お忍びではなくなるという合図である。クリスティーヌは仕方ないと諦め、仮面を外し話す事に決めたのだ。
「では、私からもお伺いしたい事が御座いますのでお答え下さいませ。わたくしは、ニズカザン帝国より来ました、エルノーワ公爵家長女のクリスティーヌ・エルノーワでございます。そちらにいるのは、私の侍女のマリエルです。以後お見おしりおきを。さて、私からの質問ですが、ソルティオ様は何をなさっておられるお方なんですの?」
ソルティオや周りの騎士達は皆目を見開き、驚いた顔をしたのだ。
「貴方が噂のニズカザンのエルノーワ家のご息女ですか。そうですか……。私はトワライ王国の騎士団に所属しております。では、今回はお忍びで何をされに来られたのですか?」
「魔獣を使役する為に来ましたの。貴方の答えはそれだけですの?ロンズデールと言う名の事は聞けないのかしら?」
「そこまでお見通しなのですか。それは内情が内情なだけに今は言えませんが、それで許していただけませんか?」
「納得いきませんが、きっと公にできない事なのでしょうね。わかりました」
クリスティーヌは納得していない顔をしたのだが、粗方の内政の予想がついていたのでソルティオに対して聞き返す事もしないのだ。
「それで?何故わたくし達が名乗らなければ捕らえられるのです?」
ソルティオはトワライ国の内情なだけに必ず口外しない事を約束に話を始めた。その間、クリスティーヌは驚いた顔をしたり、何か考えるように眉間に皺を刻んだりしていたのだ。
トワライ王国は2年前のニズカザン帝国の魔草モルテリリー騒動後から、トワライ王国の街で黒いフードの者達の目撃情報が増えたのだ。
数カ月は何もなかったのだが、半年経った辺りから不穏な噂と共に公共施設の爆発事件や離れた子爵領での魔獣騒ぎなど、大なり小なりと頻繁に事件が起き出したのである。
主犯格は未だ捕まっておらず、使いっぱしりの者ばかりが捕まるが皆捕まるとその場で命を経つので何も情報が無い状態なのだ。
黒いフードの者達と関係がある事は明白なのだがこれといった証拠もなく、煙のように消える存在なのでお手上げ状態だという。
国の平和を守る為に何か防衛策を取らなければならないのだが、中々上手くいかないのが現状らしい。
「そうですの。そんな事があったのですか……」
「リヴの海で木々の姿を見ると調査せざるを得ませんので」
「ですわよね。そのような事があれば」
クリスティーヌは笑い、自分がやってしまった事を有耶無耶にしようとしているのだ。
「そんなに焦らずともこの国で暫く滞在されるのでしょう?ならば、舞踏会に一緒に出て情報収集を手伝ってはくれないだろうか?」
「リヴの海の件での取り引き……ですか?」
「ん〜それも良いかもしれないな。ただ私は貴方に興味があるんだ。どうする?手伝ってくれる?」
クリスティーヌは難しい顔をしている。
「でしたら、魔獣や魔草の持ち帰りを許可して頂けませんか?許可して頂けるのであれば、お手伝いいたしましょう」
「わかった。許可しよう。交渉成立だな」
ソルティオは右手を差し出し、クリスティーヌは手を差し出す。リヴの海での失態を無かった事にしてもらうのに成功したのだ。
「さて、騎士としての役目は終わった。舞踏会へ行こうか」
笑顔でクリスティーヌをエスコートをするつもりらしい。クリスティーヌは仮面舞踏会という戦場に向かう為、笑顔の仮面も張り付けたのだ。
客間から出て、近くに人が居なくなるとソルティオはクリスティーヌの耳元で囁く。
「さっきはすまない。皆の手前、威圧的にならざるをえないんだ」
申し訳なさそうな顔をするソルティオの言葉と表情から、クリスティーヌは余りかわりませんわ、と笑った。
クリスティーヌはソルティオの話を静かに聞く。
ソルティオは訳あって今は騎士団に所属しているが、所属当時は家柄のお陰でコネだ、実力がない、甘い等散々な嫌味を言われ、嫌がらせをされ続けていたそうだ。実力がわかってくると嫌がらせは少なくなったのだが、威圧的な態度が周りへの牽制になり自分にも色々と都合が良いみたいだ。例えば女性陣を冷たくあしらったり、下心で近づく同僚や貴族達への牽制もしやすくなるそうだ。そのせいで公の部分では威圧的にいているのだと言う。
「何処の世界にも稚拙な方々はいらっしゃるのね」
クリスティーヌはクスクスと笑い自身がされる嫌がらせ等と少し重なるな、と色々と思い出したのだ。そして、自分が思っているよりソルティオは優しい青年なのかもしれない、と思い始めていたのだ。
その様子を見てソルティオは少しほっとし、クリスティーヌが笑う姿を見て嬉しくなったのだった。




