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43 招待状ですよ

いつもありがとう御座いますm(_ _)m


ブックマークにPV、評価と励みになります。

 クリスティーヌ達が街に戻った頃には既に日は落ち辺りは暗くなっていた。急いで服を替え、女将さんに森での出来事を話をしたのだ。

 女将さんは変化の魔法のままでいた方が良いと言うので変わったままの姿でいる事にした。


「昼間に街の中で人だかりが出来てたのだけれど、その方はどんな方なのです?貴族か何かでいらっしやるようだけど…」


「あ〜……。あの方はこの国の近衛騎士団の騎士様よ。あの顔でしょ?だから女性陣の人気は抜群なのよ。確かもうすぐ15か16になると聞いたけどねぇ」


 女将はモギュのタンシチューを温め直しながら、クリスティーヌの質問に答えている。

 厨房からシチューの良い香りがしてお腹の虫が鳴き出してきた。


「花嫁を探してるとか噂があってね、何処かに行く度に女性に囲まれているからすぐに居場所がわかってしまうみたいよ」


「へぇ。そんな方に婚約者(フィアンセ)が居ないなんて珍しいですわね。何か事情がお有りなのかしら?」


「ふふふ。ここだけの話なんだけどね、実は騎士様は男色家じゃないか、って言われてるの。全く浮いた話もないし、女性を冷たくあしらっているからね」


「あら!そうなんですの?!そこまで容姿淡麗なのであれば殿方達もほっておきませんわよね。ふふふ」


 クリスティーヌとマリエルはシチューを頬張りながら、女将からトワライ王国ついて話を色々と聞かせてもらっていた。

 女将の作るモギュのタンシチューは、とても濃厚で肉が口の中で溶けるように無くなり、手が止まらなくなるという絶品料理なのだ。

 是非とも家で食べたいと思いレシピを聞いたのだが企業秘密だそうだ。

 その代わり、クリスティーヌが来るときは前もって知らせてくれると必ず用意してくれる事を約束してくれたのだ。


 お腹いっぱいになり、宿部屋に戻るとマリエルは湯浴みの準備をする為にまた女将の元へと階段を降りて行った。


 クリスティーヌはブーツを脱ぎ、ベッドの上で寝っ転がりながら今日の振り返りをしていた。段々と瞼が重くなってきた頃、目の前がきらきらと光り、小さな黄色い妖精が手紙を持ってきたのだ。

 クリスティーヌはあまり働かなくなった頭のまま開封する。


 《    謎のお嬢様


 突然のお手紙申し訳ございません。

 少々リヴ海でのお話しを聞かせて頂きたいと思います。


 是非とも明日の仮面パーティーにお越し下さいませ。

 明日、お時間になりましたら迎えの者を遣わします故に、どうぞ宜しくお願い致します。


    ソルティオ・ロンズデール  》



 クリスティーヌは一気に眠気が吹き飛び、驚きすぎてベッドから転げ落ちた。


「いたた……」


 腰を擦り、ドアが開く音がするとマリエルが不審者を見る様な目でこちらを見て立っていた。

 何か言いたそうなマリエルより先に、クリスティーヌは手紙をマリエルの目の前に飛ばしたのだ。


 マリエルは湯浴み用の桶を床に置き、目の前にある手紙をまじまじと読み出す。


「お……お嬢様!これは!なんですか?!」


「招待状じゃないかしら?」


「いえ。そういう事ではなくてですね、()()()()()とありますね……これは先程の森で会った殿方ですね」


「確実にそうよね」


「どうしますか?ドレスも何もございませんし」


「逃げたいところだけどバレてるし、無理みたいだわ。変化の魔法も意味がないわね」


 クリスティーヌが窓の外を指差すと探知の魔法がかけられている。きっと手紙を開いた時に発動したのだろう。


 マリエルが頭をかかえ、旦那様と奥様にお叱りうけます〜、と情けない声でしゃがみこんだのだ。


「仮面舞踏会だし、何とかなるんじゃないかしら?もう腹を括るしかないわ」


 クリスティーヌはマリエルを宥め、湯浴みの桶を風呂場へと運び1人で湯浴みの準備をする。未だに扉の前にしゃがみ込みブツブツと呟くマリエルをほっておき、変化の魔法を解いて湯浴みをし早々とベッドに潜り目を瞑るのであった。



 翌朝、クリスティーヌ宛にプレゼントの箱がいくつか届けられた。送り主はソルティオ・ロンズデールからだった。


 マリエルは直ぐに隠密の護衛の者にソルティオ・ロンズデールを調べて報告するように命じていたのだ。勿論、エレノーワ家にも事の顛末をしたためた早便も既に出している。だが、まだソルティオ・ロンズデールの報告は受けていない。


「お嬢様、ソルティオ様にお礼の手紙を出さなくてはなりませんよ」


 クリスティーヌは欠伸をしながら頷き、早便のお礼状を出したのだ。


 ソルティオから頂いた箱を開けると、ダークブルーの品の良いドレスとドレスに合う装飾品と舞踏会につける目元を隠せる妖美な仮面だった。生地も滑らかなのできっと高価なものであろう。


「まぁ!とても趣味が良い殿方なんですね」


 マリエルが目を輝かせ、クリスティーヌをとびきり美しくします、と張り切っている。


 ふとクリスティーヌは、前回の自分を思い出す。

 ツルッと滑る前の自分は中々の世間知らずであり、我儘をちょっと越した傲慢さがあったのだ。きっと、このようなプレゼントを貰ったとしても、こんなダサいドレスなんて要らないわ、婆臭いですわ、などと言っていただろう。


 何より、ダニエルと自分の事しか考えておらず周りが見えていなかった。だから、ダニエルに対して、ちょっとこれは可怪しいのかも?、と思うような事があっても誰にも相談できなかったのだ。


 マリエルに対してもそうだった。幼い頃はマリエルはクリスティーヌに対し凄く大切に仕えてくれていた。なのに、クリスティーヌときたらその行為を無下にする事ばかりしマリエルに迷惑をかけるどころか奴隷以下の扱いをし、いつの間にかマリエルはクリスティーヌに何もしなくなった。


 友人に対してもそうであった。学園の低学年時にダニエルに好意を寄せる令嬢に片っ端から嫌がらせをしたのだ。すぐにおさまったのだが、その行為を知るや周りの友人は1人また1人と居なくなり友達がいなくなったのだ。忠告してくれる友人でさえ呆れ離れていったのだ。


 寂しさを紛らわす為に魔獣に没頭するが、ダニエルに魔獣好きの令嬢なんて聞こえが悪いと言われ、魔獣の事は全て蓋をしたのである。

 そのうち、ダニエルの言動が更に可怪しいと思うがクリスティーヌには友達がおらず、心の中で悪態をつく日々が続くのだ。


「本当わたくし、腐ってましたわね」


 ポツリと呟いた言葉はマリエルの耳には届いていない。クリスティーヌはサイドボードにあった瓶底眼鏡を触りながら話す。


「マリエル……この瓶底メガネを掛けてもいいかしら?」


「お嬢様……きっと仮面舞踏会ですので意味がないかと思われます」


 マリエルは自分の主人はたまに……いや、いつも変わった事を口に出すから困ったものだ、と呆れた顔をした。


 着々とクリスティーヌの舞踏会への準備がされていくのである。

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