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41 隣国トワライ王国

いつもご覧下さりありがとう御座います。

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誤字脱字報告ありがとう御座いますm(__)m


週末は台風により更新が出来なくなるかもしれませんが、ご了承下さい。

 夏休暇に入るまでクリスティーヌは毎日楽しく学園で過ごしていた。


 以前、侯爵家のジェシカ・フィズリがクリスティーヌに不躾な態度をしフィズリ侯爵が慌ててエレノーワ家に謝罪の手紙と訪問に来ていたのだ。


 暫くは大人しかったジェシカだが、どうしてもアレクシスがクリスティーヌに構う事が気に食わないらしく小さな嫌がらせを再開したのだ。

 知らない振りをしているからか、バレていないと思っているジェシカとその取り巻き達。


 数日はわざとぶつかられたり、突き飛ばされ水を掛けられたりとしたが、ある日から靴入れに動物や奇妙な生き物、そして危険とされている魔草が次々と放り込まれるようになったのだ。


 きっかけは、動物を入れた後にクリスティーヌの様子を隠れて見ていた令嬢達の報告から始まるのだ。その日は袋に()()()()()が入っており、クリスティーヌは袋を開けた途端、驚いた顔をした後袋を閉め涙をポロポロ流したのだった。


 その報告を聞いたジェシカやその取り巻き達は喜び、早速従者やメイドに命じ、ありとあらゆる()()()()()の死骸をクリスティーヌの靴入れに置くように命じたのだ。


 だが、この時のジェシカと取り巻きの令嬢達はとてつもない誤解をしていたのである。クリスティーヌは悲しくて泣いている訳ではなく、嬉し過ぎて涙をこぼしていたのだ。


 袋に入っていた鼠のミイラは、ベスラという貴重な魔獣なのである。普通の魔獣の鼠とは違い、魔力が高く背中に白い一本のラインが入っている。ミイラにする事によって魔力を閉じ込め調合素材にとても重宝するのだが、貴重な品でありミイラにする時間がかかるだけに入手が困難なのである。


 クリスティーヌが毎朝ホクホクとした顔でC組の生徒達に()()()()を渡し、研究の材料にしていた事は誰も知らないのである。クリスティーヌ自身は奇特な方が好意でくれた物と思っていたのだ。


 そんな日々を過ごし、夏休暇へ入ったクリスティーヌは現在、マリエルと隣国のトワライ王国にお忍びで来ている。

 トワライ王国はニズカザン帝国の東の位置にあり、比較的友好な国であり水の王国と言われるだけあって、至る所に水に関わる建造物が沢山あるのだ。マリエルも短期間だが交換留学生として訪れた事がある。


 クリスティーヌが学園の寮に入っている間、マリエルはたまに学園のOGとして来ていた。縁談の話しが舞い込むがマリエルは断り続けている。その理由は後程わかるのである。二人が一緒に過ごすのは久しぶりなのだ。


 エレノーワ領民とメリッサの商業のツテで宿屋を紹介してもらっており、わからない事は宿屋の主人や女将に聞くと良い、となんとも有り難い事に所々の手続きや準備までしてくれたのだ。


 2人は宿に着くと早速地図を広げ、目的の場所を確認する。マリエルは学園であった事も踏まえて、2人で大丈夫なのかと不安だったがクリスティーヌに言った所で一蹴されるであろう事は予想がついていた。念の為、隠密行動できる共を2人を連れてきているのである。勿論、クリスティーヌには秘密だ。


「ここのセイレーンの泉まで行って、ここを下ってリヴの海まで行くのが最短かしら?」


「また険しい山道を選びましたね」


「だって早く行きたいんですもの」


「でしょうね。お嬢様、学園の生徒達からの預かり物もお持ちするのですか?」


「勿論!使った感想や威力を知りたいし、改良点もあれば是非教えて欲しい、と言われたの。こんな魔導具作れるなんて天才の集まりよね?凄いわ」


 クリスティーヌが魔導具を手に取りながら、C組の皆に感謝しながらブツブツと使う手順を頭に入れている。


 マリエルは溜息をつきながら、お嬢様も充分天才だと思います、と心で呟き口に出さずにしておいた。口に出してしまうと、今のクリスティーヌに余計な自信をつけてしまい危険な行為を助長させかねないのである。


 クリスティーヌ達が宿で今後の打ち合わせをしていると、外が騒がしくなってきた。


 マリエルが部屋の窓から宿の外を覗くと、ドレスを着た令嬢達が黄色い声を上げ人だかりができている。誰か来たのだろうか、と不思議に思いクリスティーヌを見る。


「お嬢様、外が騒がしくなっております。どなたかいらっしゃったのでしょうか?」


「本当ね、煩いわ。特に気にする事もないでしょう」


 クリスティーヌは興味がないとばかりに魔導具の準備をし、マリエルに出発するわよ、と言うと下の階にある宿の受付けに降りて行ったのだ。


「ルアさん、ちょっと出掛けてくるわ。夜の食事は要らないから。もしかして遅くなるかもしれないの」


「あらあら。そうなの?今日はモギュのタンシチューなのに。ここらの名物よ?」


「やっぱりいるわ!遅くなっても食べたいから置いててもらってもいいかしら?」


「勿論よ!気を付けていってらっしゃいね」


 笑顔が素敵なちょっとふくよかな女将のルアは、クリスティーヌとマリエルに携帯用の食事を渡し、水の精霊の加護があるように、とまじないをかけてくれた。この国の旅への祈願らしい。


 クリスティーヌとマリエルは外に出て先程の人だかりを一瞬見てから、邪魔ですわ、と悪態をつき何事もなかったかのように颯爽と横切り郊外へと向かったのだ。


 人だかりの中心に居てる人物は、無表情で自分の周りに近付いてくる女性達に対し軽蔑の目で見ていた。


 この女達は俺の顔と地位が欲しいだけだろう。

 香水の臭い匂いがきつく、甲高い声、目が痛くなりそうなドレスの装飾に、何とも幼稚な話題しかしない。とても疲れる。

 やはり公の視察にして失敗だった。

 お忍びで来れば良かった。


 その人物が後悔しながら、うんざりとした顔で前を見ると2人の少女と女性が歩いていた。ふとクリスティーヌの横顔が見え、こちらを振り向いた瞬間、脳天から雷が走り一気に周りの声が聞こえなくなった。彼女に釘付けになってしまったのだ。

 アッシュグレーの艶のある髪を一纏めにし、シャツにパンツ姿の軽装とはいえ凛々しく美しい表情の少女に目を奪われてしまったのだ。


 側にいる者に、あの女達は誰か調べるように、と迅速に手配したのは言うまでもない。

 これが後に面倒な事になるとは、その時のクリスティーヌにはわからなかったのだ。

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