35 精鋭達
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クリスティーヌは依然意識が戻らず、ぐったりしている状態である。メリッサや医療班のメンバー達はありったけの魔力を使い解毒に取り掛かっている。調合班のメンバー達も負けず劣らず必死に調合を急いでいる。ツユナの毒は猛毒故に解毒に時間がかかるのだ。
魔力が少なくなると、クリスティーヌから教えてもらったスペンサー特製ドリンクを飲んで体力と魔力を補う。始めは皆、吐き出したり飲むのを躊躇していたのだが、回復がとてつもなく早く効率が良いので今では愛飲しているのだ。慣れというのは恐ろしいのである。
クリスティーヌの代わりに、とばかりにフェンリルが攻撃に参加し善戦する。グラッサ家での特訓で数人の生徒と連携取りながら攻撃や防御の練習していたのでクラスの仲間達と馴染んでいる。
B組はC組によって防衛陣に攻撃を仕掛けられ、慌ただしく動いていた。そうである。B組は舐めきっていたC組に奇襲攻撃をされているのである。その中でアレクシスは違和感を感じた。
フェンリルがいるのに、クリスが居ない?
これはどういう事だ?
「フラン!クリスは何処かにいるか?」
「いいえ!見てる範囲ではいらっしゃいません!それより、C組の攻撃によって防御が耐えきれなくなってます!」
Bクラスの指揮は、騎士団への入隊は万年コネと言われている家系のイルノンだ。指揮官のイルノンに先ず違和感を伝えなければならない。
「イルノン!フェンリルだけいて、肝心の使役者が居ない!罠かもしれないぞ!」
「アレクシス様!何を仰るかと思えば!ハハハハ!!相手はC組ですよ。大丈夫です!すぐに蹴散らしますよ!」
「だから……」
「イルノン!駄目だわ!!こっちは破られた!強すぎる!早く援護を!」
アレクシスの言葉に被せるように、B組の女生徒が緊迫した声で叫び、アレクシスの言葉はかき消されてしまった。
「やばいぞ!守れ!旗を!守備隊!」
「うわぁ!フェンリルだ!こっちに攻撃を!」
B組の陣営はもはや混沌としており、状況が把握出来ていない状態だ。イルノンも何を叫んでるのかわからない。完全に指揮が麻痺してしまっている。
アレクシスは魔法陣を展開し、亜種赤龍を召喚し何とか防衛に回る。
だが、B組はアレクシスの召喚を読んでいたのか迷わず魔法陣を展開し赤龍と青龍を召喚し、尚且つ見た事もない道具を駆使しだした。ボーガンのようだが少し形状の違う物だ。その道具から何か放たれたが、ララズヴァームは翼で風を起こし回避しようとする。すると、連続で何かが地面に差刺さる音がし、ふと視線をやる。
「不味い!皆逃げろ」
アレクシスが叫ぶが一足遅かった。
刺さった物は発光し魔法陣を広範囲に広げ、その中にいる者は一部の者達を除いて全て動けなくなってしまった。
「ふぅ。良かったです。何とかできましたね」
「いや、危なかった!ジュイナ、早くしろ」
ジュイナと呼ばれる人物は颯爽と走り、B組の旗をいとも簡単に奪っていったのだ。首には特殊な紐のチョーカーを着けている。魔石が発動し赤色の狼煙が空高く舞い上がってある。旗が奪われると魔石の狼煙が上がる原理になっており、遠くに居てもどのような状況かわかるのだ。
「皆さん、ちょっと待って下さい。解除するので」
もう一人の男子生徒がポケットから何か小さい動く物を出し、結界へと這わせていく。ナメクジのような生き物だ。すると、結界が一気に消え皆自由に動けるようになった。
「くっそー!!C組には負けるとは!」
「なんだよ!もう終わりなのかよ」
「悔しい!悔しいですわ」
「なんなんですか!平民の分際で」
あちらこちらから、B組の悔しく残念な叫びや雄叫びが聞こえる。C組はそんな叫びは耳に入らず、もう用がないとばかりに背を向けていた。アレクシスは咄嗟にジュイナと呼ばれた女生徒に声をかける。
「君!すまない、フェンリルが居てるのになぜクリスティーヌが居ない?何か知ってるか?それとも作戦なのか?」
矢継ぎ早にアレクシスはジュイナに質問をする。ジュイナは困ったように眉を下げ口を閉ざし、もう一人の男子生徒に目配せをする。
「はぁ…ったくこの国の王子様は目ざといですねぇ。何で気付いちゃうのかなぁ。取り敢えず、早便の手紙を仲間に出すんで待っていて下さい」
くるくるとした黒髪の天然パーマの男子生徒がもの凄く面倒くさそうに、早便の手紙を出す。王子に対して不躾な対応だとは何も思っていない。
「ここに居てて下さい。王子の元に俺達のリーダーから返事がきますので動かないでくださいよ」
男子生徒はそう言い残し、ジュイナと他の仲間と共にB組の陣地から出て行った。
すぐにアレクシスの手元にルーダからの早便の手紙が届く。アレクシスは手をかざし開封する。アレクシスしか開封できないように鍵が掛かっているようだ。アレクシスは眉間に皺を寄せ、ルーダからの手紙を読む。
そして、アレクシスはフランを呼び静かに手紙を渡し目配せをして読むように促す。フランは黙ったまま静かに内容を確認し、アレクシスの顔を見てる。2人は周辺を見渡し行動に移す。周りは旗を取られた事に気を取られ、2人の動きに全く気が付かない。
フランは静かに魔法陣を展開し、精霊小人を数匹召喚する。エベラムに囁く声で何か命令をするとほのかな小さな光の球となり、散り散りにB組の生徒達への群れに向かって飛んで行った。
「取り敢えずはここで待ちましょうか」
「そうだな。下手に動くとわからなくなるからな」
アレクシスはポツリと呟くように応え、指をくるくると回し、素早くルーダへと早便の手紙を出したのである。
徐々に仄暗い雲が空を覆ってきていた。




