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31 ラブレターですよ

いつもありがとうございます。

励みになります!

 デジュの樹に葉が沢山生え、汗ばむ季節が近付いてきた。

 入学式から数日が経ったある日、クリスティーヌは手紙を握りしめ、瓶底メガネをクイッとあげながら、活動の森の訓練場に来ている。

 正確に言えば、結界に閉じ込められているのだ。大方、アレクシス絡みの嫌がらせだと思っている。


 アレクシスはよくクリスティーヌのクラスに訪れ、何やら男子生徒と会話をしクリスティーヌに話かけてくるのだ。それを気に食わない御令嬢達がよく嫌がらせをしてきていたのだ。


 始めは、突き飛ばしたりすれ違い様に暴言を吐いたり、物を隠したりとまぁ意地悪令嬢がしそうなありきたりなものだった。だが、クリスティーヌに全く効かないとわかると、次は机の中や上に動物の死骸を入れたり水をかけたり教科書を破ったりと更に酷い嫌がらせをしてきたのだ。それも効かないとわかると次は呼び出し状(ラブレター)だ。

 最近、なにもないと思ってクラスメイトと実験に夢中になり油断していたのだ。


 クリスティーヌは、さて。どうしたものか、と考える。3秒後には昼寝をする事に決めたらしく、草原のど真ん中の結界の中でスヤスヤと寝だした。柔らかい風が吹き、緑の匂いがしとても気持ちが良い。最高のお昼時間だ。


 クリスティーヌからすれば、こんな子供騙しのような結界を破壊する事など造作でもない。

 ただ、犯人がわからないのでここで待つ代わりに寝ているだけなのだ。


 普通のご令嬢であれば、泣き叫んだり何とかして結界を壊そうと必死になっていただろう。だが、相手はこのクリスティーヌ・エレノーワである。歳を重ねるにつれ、少し斜め上の方に性格が捻れている事については目を瞑って頂こう。


 なにやら人の気配と声がする。

 クリスティーヌは目を薄っすらと開け、身体を起こしその場に胡座をかいて座る。


「そこの広場にいますわ!何をしても宜しいですから、痛めつけちゃってくださいませ」


 女の金切り声が聞こえる。その後は、男の声がするが声が小さくて何を話しているかわからない。


 暫くすると、草木が擦れる音がし、枝を踏む音と土を踏む音が聞こえる。

 森からニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた数人の男子生徒が現れたのだ。


「コイツじゃねーか?何してもいいんだよな」

「眼鏡女だぞ。脱がせれば一緒か」

「さて、いただきますか」


 森に隠れた女の顔などはわからないが、男達は王立学園の生徒だとわかる。



 この生徒らの会話を推測すると、私は襲われるみたいですわね。貞操の危険ってやつですわ。それにしても学園で呼び出して制服を着て襲おうとするなんて身元がわかってしまいますのに……爪が甘いと言うか……この手の方たちは本当に頭が残念なのですわね。それより、頼まれていた物を使えるチャンスですわ。



 クリスティーヌは目を輝かせながら立った。

 魔法陣が消えると生徒達がこちらに走ってくる。早い者勝ちってことらしい。


 でしたら、手加減は無用ってことですわね。


 クリスティーヌはにやりと口角をあげ笑みを浮かべた。物語であれば、ここらで格好良いヒーローが登場となるのだが、現実はそんなに甘くない。自分の身は自分で守らねばならないのだ。グラッサ家の婦人ジュリエッタの教えを守っているのだ。


 クリスティーヌは早速、腕を掴まれ抑え込められた。だが、その生徒の手首を反対の手で捻り、相手の足を払いそのまま倒し一気に溝落ちに拳を叩き込む。鈍い音が響き口から血を吐く。

 後ろから来た2人によって羽交い締めにされるが、慌てない。思いっきり頭を前から後ろにふり落とし、相手の顔面にぶつけ怯んだ隙に肘で顎を狙い突き飛ばす。すかさずもう一人は回し蹴りを首にお見舞いし倒れる直前に腹にもう一発蹴りを叩き込む。もはや勝負にもやらない、赤子と大人の喧嘩だ。

 血を垂らしなが、呻き声を上げ何か呟く男子生徒達。


 だが、クリスティーヌはこれで終わらせる訳がない。やられたら100倍返しだ。生徒達はまだクリスティーヌの恐ろしさをわかっていないのだ。

 ポケットから小さな木の実を数個取り出し、呻く生徒の口へ放り込む。男子生徒1人がごめんなさい、と言うが聞こえない。


 男子生徒達の身体がみるみると女性へと変わる。勿論、顔は元の男のままだ。


 ニヤニヤとするクリスティーヌ。

 生徒に飲ませた木の実は、一時的に性別が反転する実である。勿論、そんな実は実際に生えていない。クリスティーヌのクラスの生徒が面白半分で作って、試しに使っている。いわば人体実験のようなものだ。


 男子生徒は身体に何か起きてると察し、怒鳴り散らす。


「貴様!元に戻せ!こんなことしてただで済むと思うな!俺を誰だと思っている!この眼鏡ブスが!」


「貴方が誰だろうと私は知りませんし、どうでも良いです。貴方達がやろうとしてた事もただで済むと思っておいでで?」


 クリスティーヌは満面の笑みを浮かべるが、後ろには魔力の黒いオーラを纏っている。更にポケットから何かを取り出し魔法陣を展開させる。


 活動の森で男子達の絶叫が何度も何度も木霊する。森の影で見ていた令嬢は早々に倒れていたらしい。その令嬢とクリスティーヌを襲った男子生徒3人は2週間程学校に来なかった。彼らの両親は何が起きたのか聞くが、4人は青ざめ、中には泡を吹いて気絶したりガタガタと震えるばかりで何も聞けず終いだったという。学校側も安全対策として、活動の森の確認をしたが特段におかしな所はなかったという。


 その頃クリスティーヌはというと、ホクホクと木の実やほかの物の実験データをクラスメイトに渡し、改良点を相談していたのである。


 このC組の下らない遊びから始まった実験は、後にニズカザン帝国の魔導具発展へと繋がる大発見をし、生徒数名とクリスティーヌは学園に名を残す事となる。


 そして、新たにクリスティーヌの悪い噂も加わる。いたいけな生徒数名に自ら作った危険な薬を飲ませ地獄を見せた挙句、廃人にしたという一部事実である噂が瞬く間に学園いや国中に広まるのである。

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