20 魔草乱舞ですよ①
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暗闇の中、規則正しい音が微かに聞こえ時折葉の擦れる音も聞こえる。
土道を駆ける馬を必死に乗りこなす男がいる。
誰か言ってたかな。
馬は土の上で走ると微々たる音しか聞こえないと……本当にその通りだ。
速く、速く。もっと速く。
早く友の元へ行きたいんだ。
オーウェンは額の汗を拭い、はやる気持ちを抑え必死に愛馬の手綱を握りしめ土と砂利が混ざる道を猛進する。
暫くすると、暗闇の先に薄っすらと光が見えてきた。オーウェンには希望の光にすら見える。
あと少しだ。
距離が縮まるに連れ徐々に目の前の光景が形を成す。門の前にぽぅ……っと、ランタンを持つ人影が見えた。
いつから居ているのか……きっと早便の連絡が届いて直ぐに待ってくれていたのだろう。
愛馬を速く走らせ、砂利道から整えられた道へと進む。
ヒヒィィィン……
「どぅどう…」
ローウェンは手綱を引き愛馬の顔撫でながら速度を緩め停止させる。自身はひらりと馬から飛び降りる。
「今晩は、ローウェン様でしょうか?」
エレノーワ家の執事ネイズが静かに問い、ローウェンは頷くと執事の側に居ている従者に愛馬の手綱を渡す。
「ご主人様とスペンサー様が中でお待ちになっております。どうぞ。」
執事のネイズが、ドアを開き中へと促す。
すると待っていましたとばかりに、ガウスとスペンサーは玄関へと走ってきた。
「ローウェン!!!よく来た!!早速なのだが話しが聞きたい。こっちに来てくれ。」
「私がエレノーワ家当主のガウスだ。疲れただろう。何が起こっているのだ?」
ローウェンは矢継ぎ早に言葉をかけられ何も言えず、そのまま執務室に案内……いや、引きずられるように二人に連行されるのだった。
二人に連れられたローウェンは、久しぶりなどの挨拶は抜きにしてガウスとスペンサーに王都で起こっている問題を完結に話をした。
要約するとこうである。
日が落ちてから王都全域に、百合に似た紫と黒のグラデーションの花が不気味なオーラを放ちながら生え続けている。花の中の蕾は膨らみ開花はしていないが、燃やそうが切り落とそうが何度も何度も生え変わる。
騎士団長が国王陛下に報告へ行っても取り合って貰えず、国王の周りの臣下も動こうとせず何も打つ手がない状態で現在、騎士団のみで対策を行っている。スペンサーが魔草に詳しい事を思い出し何か打開策がないかとローウェンがここに来たのだ。
ガウスとスペンサーは、ローウェンの話を聞くにつれ顔が強ばっていく。
「1つ聞かせてくれ。切り取った後、その花はどうなった?」
「切り落とした花は直ぐに黒く炭のようになりましたが……それが何かあるのですか?」
ローウェンはガウスが何故そんな事を聞くのかわからなかった。
ガウスとスペンサーはたちまち顔が青くなり、執事に何か命令し、各方面へ早便を出し始めた。
「ス…スペンサー……一体どういう事なんだ??」
「ローウェンすまない。一刻を争う。まだ花の中の蕾は開花をしていないんだったな。恐らく、その魔草はモルテリリー、別名死を弄ぶ花と呼ばれている。一斉に開花をすれば、大量虐殺が起きる。モルテリリーの花粉を吸えば幻聴や幻覚が起き正常な判断が出来なくなる。根絶する為には、親花に直接魔力を流して根から枯らす必要がある。その親花が何処にあるのかが問題なんだ。親花は人を養分とする。そこまで王都に花が生えるのは大分前から親花があるという証拠。切った物が炭のようになるのもモルテリリーの特徴なんだ」
スペンサーの話を静かに聞いているが、規模が大き過ぎて頭が追いつかないローウェン。
「そういえば何故、魔法師達は動かない?数人は隣国に留学していると聞いてるが残りは…まさか!!」
「そうなのか!ローウェン殿!!魔法師も見かけていないのか?!国王もおかしい…となると王宮が何か鍵を握ってるのかもしれん。グラッサ家には連絡をしたのか?」
「はい!直ぐに連絡致しました。祖父と父の力も借りなければならない状況だと思われたので、早便の手紙で連絡しています。今、王都で指揮を取っているのは団長のデニスです」
「そうか。一刻も早く出発しよう。領民も数人連れて行った方が良い。モルテリリーを知ってる奴が何人かいたハズだ。ネイズ!ラネックに早便の手紙と鐘を頼む!!」
「旦那様、かしこまりました。奥様はいつも通り何かあった場合の切り札としてこちらで待機して頂くようお伝え致します」
執事のネイズは一礼をし部屋を出ると、素早く指示を出し出立の用意も全てものの10分で完了させ、主人達を待つのである。
その夜遅く、エレノーワ領では緊急用の鐘が鳴らされた。
街では直ぐに灯りがつき、皆外のある場所をみる。
そう。クリスティーヌが開発した、魔法掲示板だ。どの角度からも街全体から見れ、有事の際には重宝するのだ。
早便の手紙を読んだラネックは、自身とモルテリリーを知っている者、以前討伐した者を数名募り残りの者は何かあった時の為に街に残ってもらうようにした。
ジュリエッタとも連携が取れるようにしているのはいつもの事だ。
事は一刻を争う。ありったけの解毒薬、ヒール草も持ちクリスティーヌ考案の特殊なマスクも準備する。
エレノーワ家と領民組、ローウェンは馬に跨がり急いで王都に向かうのであった。
本日2回目の投稿です。




