表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/151

143 五年ぶりの再開

いつもありがとうございますm(_ _)m

ブックマーク、評価等励みになっております。

「ふむふむ。いつものこの女は嫌いだが、他の二人はまともな人間のようだな」


 ケイローンは、温かいお茶を飲みながら、静かに頷いている。


 キメラ殲滅の為に、森へと来たエスイアとジュイナは、ケイローンとクリスティーヌの口論に巻き込まれ、現在、共に和やかなお茶の席についている。


 ここは森の精霊達が住むと言われている大木の中だ。森の神殿と呼ばれており、通常人間は入れない。

 時間の流れが止まっており、のんびりと話をするにはもってこいの場所だ。


「感動的な再開は期待していなかったが……」


「こんな形で再開するとは……」


 エスイアとジュイナは何か言いたげそうな表情でクリスティーヌの顔……いや白い仮面をみつめる。


「エスイア、あまりこのケイローンと話をしたらだめよ。狙われるわ」


「狙われる? 」


 クリスティーヌはひそひそとエスイアに耳打ちをしながら、ケイローンの顔を盗み見る。


「この小娘め。ある事無い事吹き込むな。俺は心の綺麗な男も女も好きなんだ‼ ただ、美しい心が好きなんだ‼ 」


「ね? 変でしょ? 気持ち悪いでしょ? 」


「この女は性根が腐っている。そんなに加護を与えられなかった事が悔しいか‼ 」


「いいえ。貴方の様なおかしなケイローンに加護を与えて貰うと、私までおかしくなるわ。素直過ぎて、本音しか言えずにごめんなさいね。オホホホホホ」


 クリスティーヌは勝ち誇ったように高ら笑いをし、また様になっているせいで、口元に扇子がある幻覚まで見えてしまう。


「ク……クリスさん……一体何があってこんな壊れた状態になっているのかしら? 」


 ジュイナは言葉をオブラートに包もう頑張ったが、お前頭大丈夫か?と遠回しに聞いているのと同じだったのだ。


「特に? 裏切りとそのせいで、死にかけた位かしら? 」


 一瞬クリスティーヌは気が立つ素振りを見せたが、仮面のせいで表情が見えない。


 ()()()と言う言葉に引っかかったエスイアとジュイナは、詳しく聞きたいが、クリスティーヌの怒りの雰囲気で今は聞くべきではないと判断したのだ。


 その代わり、仮面と白い服装について聞いてみる。


「クリスティーヌは何故その格好をしているんだ? 」


「そうね……」


 クリスティーヌが口を開こうとすると、何処からともなく、一匹の蝶がひらひらと飛んできたのだ。

 静かにクリスティーヌの指に止まり、羽を休めているかのように見える。

 羽には変わった模様が入っており、よく見ると目が紅い。


「珍しい蝶だな」


 エスイアがそう言うと、クリスティーヌはいきなりその蝶に魔力を流し、一気に破裂させたのだ。


「な……クリスさん?! 」


「ここにも追手がくるのね……ゆっくり話せないわ。二人共、この変わった模様の紅い目の蝶には()()()気をつけて。それと……」


 ジュイナは驚くが、クリスティーヌは怒りを表すかのような声でエスイアとジュイナに忠告をする。


「え……何故? 」


「良いから必ずそれは守って。また近いうちに会う事になるわ」


 エスイアとジュイナは驚きつつも頷き、出来るだけ連絡をくれるように、と伝えたのだ。


 クリスティーヌはケイローンに、また来る。この怪しい蝶は全て殲滅をお願いするわ、と伝えると、颯爽と地上へと戻ってしまったのだ。


 残されたエスイアとジュイナは、何が起きているかわからず、クリスティーヌの後を直ぐ追ったのだ。

 勿論、ケイローンも後を追ったのである。


 森の神殿から、出るとそこにはもうクリスティーヌの姿はなく、代わりに先程クリスティーヌが破裂させた蝶が、何千匹と待っていた。


 鱗粉があちらこちらに舞っており、エスイアとジュイナは咄嗟に口と鼻を抑える。


「これは……もしや……」


 ケイローンは、目の前の光景を見るや眉間に皺を寄せ、蝶を全て焼き払うように火炎魔法を使う。


 エスイアとジュイナも森の精霊がそうしているならば、と同じように蝶を焼き払っていく。


「精霊様、後でこの蝶の意味を教えて下さい」


 ジュイナはケイローンに向かって真剣に言葉を発すると、ケイローンは静かに頷いたのだ。


 森の神殿がある大木の周りには、木々が生えておらず、草原が広がっている。


「こんなに何処からやってくるの?! 」


「鱗粉でむせそうになる」


 エスイアとジュイナは二人で必死に蝶を焼き払うが、ケイローンは傍観をしているのだ。



 "ちょっと!! エスイア、あのケイローンに手伝うように言ってよ"


 "ジュイナが言えば良いだろ"



 二人は念話を通し、どちらが森の精霊と言われるケイローンに手伝って欲しいと伝えるかを押し付け合っていたのだ。


 木々がざわめき、馬の駆ける音が次第に近づいてくる。


 二人は、蝶を焼き払いながらも馬の音に耳を澄ませる。


 森から出てきたのは、ケイローンと似た様な魔獣ケンタウロスだったのだ。


「遅いぞ。森の番人よ。さっさとこの蝶を殲滅させろ」


「かしこまりました」


 ケンタウロスは、背から弓と矢を取り出し、蝶の大群に向かい弦を引き矢を放つ。

 矢は炎を纏い蝶の大群の中心へと勢いよく向かい、一匹の蝶を木に仕留めると他の蝶は一斉に炭となったのだ。


「す……すげぇ……」

「すごいわ……」


 二人はケンタウロスの弓さばきに驚き、はるか向こうにある木々を見つめるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ