139 困惑
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ここは王宮にある一室、アレクシスの部屋。
立派な扉の前の両側には、騎士団員が立っている。第二王子の護衛だ。
部屋は、立派な調度品が幾つも並べらてある。だが、よくみるとデザインはシンプルでアンティーク調で使い込まれているような物ばかりばかりだ。華美を好まず、昔からある物を使うという、アレクシスらしい部屋なのである。
デニスは、エスイア達と合流するつもりだったが、調査報告やキースの雑用を押し付けられ、どうしても手が離せないというのだ。
デニスが何時合流できるかわからないと聞き、それならば先にエスイアとルーダ、フランの三人で謎の手紙と紋様を確認し、対策案を出し合おう、となったのである。
エスイア達は、アレクシスの寝台側のソファーへゆっくりと腰を下ろす。
側では、この部屋の主が未だに目覚めることも無く、死んだかのように眠っている。
フランは手紙を確認する前に、アレクシスの現状を二人に伝える。
呪縛魔法は、かけた者が死亡すれば消える筈なのだが、この呪縛魔法は普通の呪縛魔法と違うらしく、全く解けず、日に日に紋様は、アレクシスの身体に広がり続けているのである。
王宮医師や治癒師に聞いた所、呪縛魔法が強くあの手この手を尽くしているが、無駄骨に終わっている状態だという。
「マーガレットはジュイナによって確実に消されたのは確かだが、もし呪縛魔法をかけた者が別に居たとすれば解けないのも頷けるな」
「そうですね。アレク王子はたまにうなされたりしますが、それ以外の健康状態は良好だと言うから不思議です。何かがアレク王子を護っているのでしょうか……」
三人は推測するが、呪縛魔法が何の為にかけられたのかがわからない為に解決策を見出だせずにいたのだ。
エスイアがそっと手紙と紋様を置くと、ルーダが口を開く。
「俺にはこの用紙の文字が見えないが……」
「私もです……」
「と……言うことは、これは俺に当てた手紙と言う事なのか……一体誰が……」
エスイアは手紙に魔力を込め、現れた文字を読み始めた。
「【紋様に魔力を込め、魔法陣を展開し、王子を助けよ】」
「他には?」
「いや、この言葉だけだ」
ルーダは拍子抜けしたように溜め息を付いたのだった。
「で? 今からやるのか?」
「そうだな。アレク王子が助かる術が今の俺達には無いからな」
エスイアがそう言うと、テーブルに置かれた紋様に手をかざし、魔法陣を展開させる。
魔法陣は部屋全体に広がり、眩く光ったのだ。
三人は恐る恐る、瞑っていた目を開き、辺りを確認する。
窓の前に、仮面の者が数人居たのだ。
三人は寝ているアレクシスに駆け寄り、アレクシスを背に仮面の者達の間へと入る。
「そこの王子の呪縛を解きたくないのか? 」
若い男の言葉に、三人は驚きを隠せないのだ。
「何故それをしっている‼ 」
フランは噛み付くように怒鳴るが、若い男は何事もなかったかのように少ない言葉だけを発するのだ。
「助けるのか、助けないのか。どちらだ? 」
ルーダは冷静に状況を確認し、二人に念話を送る。
"どういう事だ?! こいつ等は味方なのか? "
"いや、どちらかわからない。もしかしてアレク王子暗殺に加わっているかもしれない"
三人は念話をしつつ、白い仮面の者達の様子を観察する。
ふとエスイアが一人の者の首に目が止まったのだ。
"後ろの白い仮面の首を見てみろ。アレク王子と同じ黒い紋様じゃないか? "
ルーダとフランは、エスイアの言う、後方の白い仮面の者の首に注目をしたのだ。
すると、そのようすに気付いたのか、若い男は口を開く。
「そうだ。きっと同じ物だ。解除は出来ないが、進みを遅らせ意識を取り戻す事はできる。このままほっておけば、必ず死ぬがどうする? 」
三人は顔を見合わせ、苦渋の決断だ、とばかりに同時に頷きあった。
「本当に目が覚めるのか? 」
「覚める」
「覚めなかったり、何か不審な事をすれば直ちに切るぞ」
「勝手にしろ」
フランは腰につけている剣を押さえながら、若い男に言い放ったのだった。
若い男は他の仮面の者に指示を出し、アレクシスの呪縛魔法の施術に取り掛かろうとする。
「ねぇ。何か忘れてない? 」
女の声がし、側に居た仮面の一人が頷く。
「ああ。あの事か……見ればわかるだろう」
若い男がそう言うと同時に辺りはまた眩く光り、目の前に白い仮面の者と黒いフードの者が現れたのだ。
エスイア達三人は、直ぐに魔法陣を展開させ攻撃を開始する。
だが、後から来た白い仮面の男によって一瞬にして魔法を消されたのである。
「これは歓迎の挨拶か? 」
「違うわ。何時もの事よ」
「そうか……お前達は先に施術をしろ。ハミル、お前もやれ。俺は取り引きをする」
後から来た男は、先に来た者達のまとめ役なのか、仮面の者達は指示に従うのだった。
「取り引きだと? 」
フランは眉間に皺を寄せ、怒りの形相でハミルを睨みつける。
エスイアがフランを抑え、ルーダは声からして年配であろう男に尋ねるのだった。
「取り引きとは一体どういう事だ? 」
「そのままの通りだ。王子を施術する。その見返りとして、王子の護衛としてハミルを置く。それだけだ」
淡々と話をする年配の男の提案という名の命令に、更に怒りを滲ませるフランは叫ぶ。
だが、エスイアによって全て阻止され、ルーダが口を開く。
「一つ聞きたいのだが、ハミルは何故そちら側にいるんだ? 」
「洗脳の呪縛魔法をかけられていたから解除した」
「待て。洗脳? 呪縛魔法はかけた本人が解除するか死亡するまで出来ないだろ。何故できるんだ? 」
「今は詳しく言う事が出来ない。だが、ハミルがかけられた呪いとそっちの王子がかけられた呪いは違う。質が違うと言えばいいのか。」
「それは答えになっていないだろう? 」
「そうだな……ハミルの件は順に説明をするが、呪縛魔法の解除については答える事が出来ない」
三人は納得しないまま、話を聞く事になったのだった。