138 ハミル帰還
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遅くなりました。
今回は少し短めです。
虹色の蝶がハミルに集まり、優しく包み込む。
ハミルは、ゆっくりと穏やかな気持ちになっていったのだ。
「今だ」
年配の男の声と共に、ハミルの身体に激痛が走った。
引き千切られそうな、身体の中からえぐられているような痛みが続き、あまりの苦痛に悲鳴を上げる。
仮面の者達は魔力を弱める事なく、機械のように魔力を放つ。
ハミルの口から、ゆらゆらと黒いモヤが出始めたのだ。
徐々に黒いモヤが塊として出てくる。
最初に出てきた黒いモヤと違い、手のような物がついていた。
黒い塊はハミルから出てくると、みるみるうちに大きく膨らんでいく。
仮面の者達は一斉に詠唱を行い、四方八方から紋様が黒い塊を囲い込む。
黒い塊は触手で紋様を消し去ろうとするが、弾かれ触手は吹っ飛び、煙を上げながら溶けている。
触手を吹き飛ばされた事に腹を立て、更に触手を出すが、その度に紋様によって触手を吹き飛ばされる。
黒い塊は、魔力を込め出し徐々に大きく膨らんでいく。
黒い塊も魔力を込め終わったのか、仮面の者達の詠唱が終わると同時に魔力を放出したのだ。
紋様が壁となり黒い塊を閉じ込めているが、紋様内では黒い塊の魔力と仮面の者達の魔力がぶつかり合い、閃光が走った。
紋様によって全て消滅された黒い塊は跡形もない。
静かにハミルがつけていた腕輪に亀裂が入り、砂のように地面へと、落ちていったのだった。
「第一任務は完了」
「次に行くぞ」
一人の仮面の者がそう言うと、他の仮面の者達は魔法陣を足元へと展開させ、次々と消えていく。
年配の男と一人の仮面の者が残っている。
「ファリア。いいのか?」
ファリアと呼ばれた仮面の者は静かに頷き、ハミルの側へと歩く。
自身がつけていたネックレスを外し、ハミルの腕に絡ませ手の平にのせ、ゆっくりとハミルの手を握る。
ファリアはハミルの側から離れると、足元に魔法陣を展開させ、一瞬にして消え去った。
暫くしてから、ハミルは酷い頭痛を伴いながら目を覚ます。
先程の年配の男がいたのだ。
「呪いは全て消し去ったが、暫くは身体が痛むだろう」
男の言うとおり、ハミルが起き上がろうとすると、全身が軋む様に痛み出した。
「くっ……」
「回復するまでゆっくりとしておけ」
「これまで、一体何があったのか教えてくれないか?」
ハミルはどう足掻いても、痛みには逆らえない事を悟り、今までに起きた事を聞いた。
年配の男は静かに話をする。
「暗闇で見た、目の前の映像は自身の過去であり、途中で記憶がないのは、森の奥で呪縛魔法をかけられたせいだな」
ハミル本来の核つまり、ハミル自身の人格など全てを魔法によって閉じ込められていた状態だったのだ。
呪縛魔法後のハミルは人形のようなものなのである。
「呪縛魔法にかけられたまま何年も、邪真教と共にある者の復活に使われていたのだ」
「ある者というのは?」
「そのうちわかる。というより、お前は会っているだろう」
年配の男の言葉を聞き、ハミルは考えを巡らせる。
"会った事がある……? 禁忌魔法を使う奴など、知り合いにそんなに怪しいやつは居たのか? まてよ、まて。まて……。
「呪縛魔法をかけてきた者なのか?!」
年配の男は静かに頷き、話を続ける。
「奴等はある者の復活の為ならば手段を選ばない。今、ある者を完全体ではないのだ。復活の儀式として黒いフードの者達が魔力を必死に集め、ある者に捧げている状態だ。奴等を止めなければこの国、いや世界が地獄と化する。」
「な……」
「お前を城に一度、戻す」
「どう考えてもそれは無理だ!! 私は操られていたとは言え、この国に反逆行為を行った者だぞ?! 」
「そこは手を打ってある。しかし、ただでは戻さん。お前には仕事をしてもらう」
「一体、何をさせるつもりだ? 」
ハミルは半ば諦めの表情を表し、年配の男の指示に従う事にした。
そして、もう一つ気になっていた事を聞く。
「あなた達は一体何者なんだ? 」
「そのうちわかる」
年配の男はそう言うと、ハミルが横になっている寝台を中心に、結界をはりだした。
「さっさと治療して、次に行くぞ」
男は結界に触れると、緑の魔法陣が展開され、緑の光がハミルへと流れていく。
ハミルはその時、手に巻きつけられたペンダントに気付くのであった。