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111 修業

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 クリスティーヌ達は毎日規則正しい生活を送っていた。


 朝は五時に起床し、交代で料理、洗濯、掃除をこなす。


 食事が終われば、畑に行き誰か一人が必ず畑の魔草によって暫く行動不能となり、他の二人はせっせと魔草を回収する。


 行動不能となる魔草はその日によって全く違うのだ。


 ある日には打ち大根。別名ボクサー大根と呼ばれ、抜いた瞬間に打撃攻撃を仕掛けてくるのだ。

 どちらかが倒れるまで、つまりKOするまで殴り続けられるのだ。


 またある日には、ひげ根草。別名縄張り草と呼ばれ、もやしのような長い根が縄のように固く、気性が荒い為に近付くだけで土から音を出し全身縛られるのだ。


 ペクト老師には、毎日毎日説教をされている。


 ペクト老師曰く、気を集中させ、精神統一を行い無心で畑に入れば、今日の当たりがすぐわかる。

 そして、迷いや不純な気持ちがある場合は、直ぐに魔草が気付いてしまう。


 これは戦の時にも必要になり、基礎中の基礎だと言うのだった。


 小屋へ来て一ヶ月近く経った頃、ふとエスイアは呟く。


「流石に一ヶ月も不在だと学校の連中に怪しまれるんじゃ無いか? 」


「言っておらんかったか? 」


「え? 」


 この小屋内とその周辺の時間軸は違っており、体感だと一ヶ月だが、まだ3日程しか経っていないというのだ。


 これはベリアが昔少し時間軸を悪戯し、そのお陰で悲惨な目に合ったらしいのだ。


 詳しく話を聞きたかったのだが、ペクト老師の形相が余りにも凄かったので、三人は言葉を飲み込んだのである。


 小屋へ来て一ヶ月程経った頃、ふとエスイアは呟いた。


「流石に一ヶ月も不在だと学園の生徒達に、怪しまれるんじゃ無いか? 」


「ん? 言っておらんかったか? 」


「え……? 」


 ペクト老師によると、この小屋内とその周辺の時間軸は違っており、体感だと一ヶ月だが、まだ3日程しか経っていないのだ。


「さて。そろそろ、次の段階へと行くかの……」


 ここに来た当初は、必ず誰か一人が魔草によって行動制限されていたのだ。

 だが、2週間程経つと気配が分かってきたのか捕まる回数が減り、今となっては全く捕まる事なく作業に取り掛かるようになっていたのだ。


 捕まってしまった時は、その日の皿洗い係として一日過ごさなくてはいけなかったのだ。

 現在は交代でやっているのである。


 ペクト老師は小屋の一角の壁に魔法陣を展開させる。

 魔法陣の形態と文字からして古代魔法だろう。


 ペクト老師が魔力を注ぐと、重厚な扉が出現したのだった。


「さぁ、入るぞ」


 ペクト老師に続き、クリスティーヌ達は扉の中へと足を踏み入れたのだ。


 そこは灰味がかかった黒い空間が広がっていたのだ。地面も黒く、自身が浮いているような錯覚までしてしまう。


「ここは一体何処なのでしょうか……」


「ここは魔法で創り出した亜空間だ。ここで各々の精神力を鍛える。取り敢えず、やってみないとわからんだろう。そこの魔法陣に一人づつ立ちなされ」


 ペクト老師はクリスティーヌ達に指示をし、三人はそれぞれ離れた位置にある魔法陣へと入ったのだ。


 魔法陣に入ると急に魔法陣が光りだし、エスイアは青白く、ジュイナは赤白く、そしてクリスティーヌは虹色に光っている。


「よく聞け、今の魔法陣の色が己の魔力の色であり、適性のある属性の色をしておる。青は水や風、赤は火や土だ。虹色は全属性だな。まぁ、あまりないが嬢ちゃんは魔力が高いみたいだな。さて、説明するぞ」


 ペクト老師は次々に説明を始める。


 これから始まる訓練は、精神統一の訓練である。

 幻影とはいえ、死霊使い(リィーパー)が出てくる。

 魔力の乱れがあるとすぐさま、リィーパーの鎌が振り落とされ、ダメージが蓄積される。

 幻影だから、実際には身体的ダメージは無いが、精神ダメージが蓄積される。

 精神ダメージとは恐怖や怒り、焦り等、気持ちの部分だ。


 精神ダメージが貯まって行く度に精神的負担つまり、気持ちの部分での負担が大きくなる。

 ダメージが蓄積され続けると、精神崩壊にもなりかねないので魔法陣でストッパーが働き、そこで終了となるのだ。


 クリスティーヌ達三人は、険しい顔付きで真剣に話を聞き、言われた手順で魔法陣を発動させる。


「では、幸運を祈る」


 ペクト老師の声を最後に、クリスティーヌ達はそれぞれ暗闇の中に一人となってしまったのだ。


 クリスティーヌは目を閉じ心を無にしようとする。


 だが、前にいるリィーパーに気を取られ、何度も心を乱され魔力を乱し、鎌を振り落とされる。


 痛みは無いが振り落とされる度に恐怖が植付けられ、冷静では居られなくなる。


 怖い。

 駄目だ。

 怖い。

 落ち着け。

 怖い。


 心が恐怖や不安、焦りに蝕まれていく。



 駄目だ。

 怖い。

 駄目だ。

 怖い。


 希望の後の恐怖程、怖いものはないのだ。


 クリスティーヌは、リィーパーから数回鎌を振り落とされた時点でストッパーがかかったのだ。


 ペクト老師は、初日はこんなものだな、と言い、早々と三人を連れ、亜空間から小屋へと戻るのであった。


 三人は暫く放心状態のまま椅子に座り、ペクト老師からの精神回復ドリンク、蜂蜜水(ハニーム)を出され飲むと次第に落ち着き、頭を働かせる事が出来たのだ。

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