108 邪心
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クリスティーヌは容赦なく、黒いフードの者達と異質同体を次々と抹殺していく。
「な……!! 何だ!! 貴様!! 」
「煩い。お前達は許さない」
クリスティーヌは容赦なく魔法陣を展開し、圧倒的な力で黒いフードの者と異種同体をねじ伏せ、簡単に殲滅していく。
クリスティーヌの憎悪が激しくなるにつれ、クリスティーヌの身体には黒いもやが纏わり付いてくるのだ。
クリスティーヌの頭の中にくぐもった声が木霊す。
《憎いだろ? 殺せ。もっと殺せ。
それで良い。お前は間違っていない》
そう……
私は間違っていない。
この者達が憎い。
全て死ねば良い。
全てなくなれば良い。
怒りにのまれたクリスティーヌは、もはや通常の判断、思考が出来ずにいた。
黒いもやの言いなりになりつつあったのだ。
"クリス!! クリス!! "
聞いた事がある声が、クリスティーヌの頭に響き渡る。
"クリス!! 聞こえるか? アレクだ!! "
ア……レク……?
"聞こえるか? 今、君の元へと向かっている"
アレク?
アレクがなぜ?
《声を聞くな。小奴もまた、
お前の邪魔をする奴の一人だぞ? 》
私……の邪魔……する?
《そうだ。お前は何も悪くない。
早く、こちら側へ来い》
"クリス!! 返事をしてくれ!! "
いや……
嫌……頭が痛い……
クリスティーヌは頭を抱え込み、その場でしゃがみこむ。
フェンリルはクリスティーヌを守るように、魔力を解き放ち、結界をはる。
そして、アレクシスに念話を送る。
"小僧。こちらだ。早く来るが良い"
"フェンリルか?! ありがとう! 直ぐにつく‼ "
クリスティーヌは、頭を抱えながら目を瞑る。目の前は真っ暗で、くぐもった声が木霊する。
《憎しみは力となる》
《憎くめ》
《殺せ》
《殺せ》
"クリス! クリス!
大丈夫か?! "
アレクシスの声も聞こえる。
どうなっているの……
クリスティーヌは、目を開くとそこにはアレクシスがいた。
何度も何度も肩を揺すられ、クリス、と呼ばれていたのだ。
「アレク? なぜここに……? 」
「クリス。気をしっかり持て。闇に引きずられては駄目だ。俺がついている。君にはかけがえのない仲間もいるだろう? 」
「あの者達が憎い。何も罪の無い子供達や大人を……人を無残に殺したあいつ等が憎い‼ 」
クリスティーヌはアレクシスに怒りをぶつける。
「クリスがそう思うのも無理はない。僕だってそう思う。ただ……憎しみに支配されている君は、今何を考える? 」
憎い。
殺してしまえ。
……それかしかない……
《それで良いんだ。
何も間違えていない。
殺して殺して殺しまくれば良い!! 》
煩い!!
私は今考えているんだ!!
クリスティーヌは頭に木霊する、くぐもった声に対し怒鳴りつけ、アレクシスの言葉に気付かされる。
あ……私は……
怒りに任せて動いていたんだわ……
アレクシスは、クリスティーヌの魔力の乱れを微かに感じ取り、再び話を続ける。
「僕も君と出会った頃は、大切な人からの裏切り、そして大切な人の死を迎えていたんだ……。憎しみは憎しみを生む。その憎しみに付け込んで邪心が寄ってくる。邪に負けるな。僕は君の強さを見て立ち直れた。次は僕が君を助ける番だ。大丈夫。クリスなら出来る」
《綺麗事など妄想に過ぎない。
お前が見たモノはなんだった?
憎しみが力を増加させるのだ。
さぁ、我の元へと来い》
煩い‼ 煩い‼
頭の中に入り込むな‼
私は私で決める‼
指図される覚えはないーー‼
クリスティーヌの身体が光り、膨大な魔力が放たれる。辺りは地鳴りと共に風が巻き起こり、一瞬にして黒いもやは消えさった。
アレク……ありがとう……
クリスティーヌは一筋の涙を零し、そのままアレクシスの腕の中で気を失ってしまったのだ。
アレクシスは、頑張った。それでこそクリスだ、と小さく呟き、フェンリルにクリスティーヌを乗せ、エスイアとジュイナと合流する。
クリスティーヌが気を失っている間、クリスティーヌが殲滅させた教会に立ち寄った。
そこには無残な教会の姿があり、クリスティーヌの怒りが伝わってくる。
奴等の狙いは、もしかするとクリスティーヌを闇に引き入れる事かもしれない……
ハミルも魔法師だった頃は、正義感が強くとても優秀だった。
駄目だ……
まだ確信を持てるピースが埋まらない。
裏に何かが糸を引いているに違いない。
アレクシスは少し思う事があり、キースとフランに早便を出す。
エスイアとジュイナは、クリスティーヌが気を失っている事に驚いたが、先程の魔力放出を空から見ていたらしく、大体の予想はついていたのだ。
アレクシスから話を聞き、油断は出来ないと感じ取った二人は、クリスティーヌを一人で行動させないと約束したのである。
クリスティーヌの胸には一通の手紙が届いていた。
差出人は……
時の魔女からだった。