107 怒り
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黒いフードの者が絶命した後も、そのまま立っているクリスティーヌは怒りを鎮める事なく、扉に向かい踵を返した。
「クリスティーヌ、俺の声が聞こえるか? 」
エスイアは、異様なクリスティーヌの雰囲気を感じ取り、声をかける。
冷たい表情のまま、目だけエスイアへ向けるクリスティーヌは立ち止まり、無言のままエスイアの声を聞く。
「お前が怒る気持ちもわかる。だが、ここで怒りを爆発させてしまったら、あいつらの思うツボだ。少し冷静になれ」
エスイアはクリスティーヌに対し、最もな言葉を投げかけた。
そして、孤児院の先生達が必死でかけた結界を解除し、そっと遺体を横に置くと地下へ繋がる戸を開けたのだ。
先程、通っていた地下の秘密通路へ繋がる階段が続いていた。
「この地下通路を開けて、子供達を逃がそうとしたんだな……」
エスイアは悲痛な表情のままそっと戸を締め、側にあった板で戸を隠したのだ。
この孤児院の先生達は少なからず、地下通路の存在を知っていた。
きっと火事など何か有事の際に使うものだと思っていたに違いない。
でなければ、子供達がこの部屋に集められる筈もないのだ。
クリスティーヌは無言で部屋をあとにし、孤児院の外へ出る。
外へ出ると空中に紋様を描き、地面へと魔法陣を展開させ、服にしまっていた地図を取り出し魔法陣の上へと地図を置いたのだ。
魔法陣が青白く発行し、地図には赤い点が幾つも浮かび上がる。
クリスティーヌは地図上にある赤い点を全て確認すると、魔法陣を展開しフェンリルを召喚する。フェンリルに、飛び乗ると直ぐに森の中へと走り去ったのだ。
クリスティーヌを追って孤児院の外へと出てきたエスイアとジュイナは、土の上に放置された地図を手に取る。見ると赤い点が消えかけていた。
「これって……」
「多分、そうだ……」
クリスティーヌが置いていた地図には、おそらく黒いフードの者かキメラの居場所だと予想がつく。
エスイアとジュイナは頷き合い、ジュイナが魔法陣を展開させ不死鳥を召喚する。
二人はフェニックスに乗り、クリスティーヌが向かったであろう場所へと向かったのだ。
エスイアはアレクシスに早便を出し、クリスティーヌの現状を報告するのである。
エスイア自身、クリスティーヌの怒りを抑えれるとは全く思っていない。
勿論、エレノーワ家へ早便を出したとしてもきっとクリスティーヌの事だ。言う事を聞かないだろう。
もしかしたら、アレクシスなら……と、希望を持ち早便をだしたのだ。
孤児院へ取り残されたデニス達は、呆然と立ち尽くしながらエスイアとジュイナの背中を見つめるだけだったのだ。
♢♢♢♢♢
"クリスティーヌ‼ 聞こえるか?! "
"クリスさん‼ 返事をして"
"クリスティーヌ‼ 早まるな‼ "
"クリスさん、待って頂戴‼ "
エスイアとジュイナは、空から念話を通してクリスティーヌに必死に話かけるが、全く反応はない。
二人は、孤児院から一番近い赤い点があった場所へと着いたのだ。
そこは、街から少し離れた小さな農村だった。
「遅かったか……」
エスイアが落胆の声を落とす。
小さな農村にある教会から黒い煙が上がっており、建物全体を覆うようにして展開されたであろう魔法陣の跡が、至る所に残されていた。
クリスティーヌが来てから時間はそう経っていないのか、まだ教会内は火が残っている。
農村の人々は、近くの街に避難していたのか大半の村民は助かっていたようだ。
エスイア達が教会へ入ると、そこは先程見た、孤児院と同じ様な惨劇が目に入ってきたのだ。
エスイアとジュイナは手を握り締め、怒りを必死に抑えようとしている。
農村の教会の壁には、ポッカリと大きな穴が開いており、黒いフードの者と異質同体が見せしめのように、血塗れで天井吊るされていたのだ。
外から嫌でもよく見えた。
この光景を見る限り、クリスティーヌの怒りは凄まじいものだとよくわかる。
これはクリスティーヌによる、黒いフードの者とキメラに関わった者達への先制布告だ。
「クリスさん……殲滅する気なのね……」
「多分な……今動けば奴らの思うツボだ。何が目的なのか未だわからないのにだ。俺達がわかっているのは、ただの仮説に過ぎないんだ」
エスイアは静かに怒りを露わにする。
「私も許せない。クリスさんと共に行きたいとも思う。だけど、エスイアの言ってる事も正しい。怒りに任せて動く事は、自滅を意味するわ」
「クリスティーヌを探し出してなんとしてでも止めるぞ‼ 」
エスイアとジュイナは農村にある教会をあとにし、次の赤い点があった場所へとむかうのだった。




