105 邪真教
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通路にある蛇の模様は、幾つもあった。
見つける度に、囲うように結界をはり発動しないように対処していく。
「思ったより数が多いな」
「蛇の模様はいつからあったのだろう? 」
「少なくとも私達が産まれる前からでしょうね。魔力の記憶が薄っすらと残っていますが、かなり古いものだわ」
「クリスさんが大体あっているかと……まぁ、歴史の一部分ですが……」
スマイリが数百年前の出来事を歩きながら話す。
「数百年前、ニズカザン帝国では邪神教が急激に勢力を伸ばし始めました。邪真教というのは、詳しくはわかりませんが、世界を一つに、全てを排除し、真の創設者を召喚しする、といった事を行っている者達を指していたそうで現在の異教徒より更に質が悪い部類です」
「つまりは、世界をぶち壊して誰かを召喚してその人に全て支配してもらおうってことかしら? 」
「クリスさん、そうです。召喚が人ならまだマシなのですが、この世の者ではない者を召喚しようとして、ニズカザン帝国と戦争を起こしたそうです。その時に邪真教が掲げていた旗に蛇が使われていたそうです」
「でも、その邪真教はもうないのですよね? 」
ジュイナの質問にスマイリは静かに答える。
「戦争の時に全て抹消された、とありますが一部の者達が逃げ切って地下に潜り現在まで隠密に邪真教の機会を伺っている、とされています。本当かどうかは分かりませんが、邪真教創設者の子孫がいるという噂もあるそうです」
「なるほど。よくそこまでスマイリ嬢は知っているのだな」
「いえ、私の家系は代々、古代文明等を調べたりする者が多かっただけですから」
スマイリはデニスの言葉に恐縮したように、俯いた。
「フォデリック家は考古学や歴史学に強いですものね。王立研究所にもいらっしゃいますよね? 」
「ええ。よくご存知ですね」
「兄がフォデリック家のご子息とご学友だったので、お会いした事はございませんが、よくお話を聞いていましたので知っているだけです」
スマイリは、なるほど、と頷いた。
スマイリの話から聞くと、ハミルはきっと邪真教の幹部だろうと推測される。
だが、もしスマイリの言う創設者の子孫だとしたらどうなるだろうか。
クリスティーヌは考えるが、まだ結論に達するまでのピースが足りない。
「おーい。もうすぐしたら、もう一つの道との合流地点へとつくぞ? 」
エスイアがそう言うと、少し広めの場所へ出てきたのだ。
先程ラスダンテ遺跡から地下に降りてきたような場所だ。
直ぐ前に階段がある。
この階段は、孤児院へと繋がっているみたいだ。
「地下通路の調査も必要だが、上に繋がっている孤児院にも何かあるかもしれない。少し上へ上がって偵察してみるか」
デニスは先頭に立ち、その後ろにクリスティーヌ達がついていく。
階段の上には入り口がなく閉じている状態だ。
クリスティーヌは、人ひとり通れる幅の階段にも関わらず、デニスを押し退け魔法陣を展開させる。
だが、開かないのだ。
「なぜかしら?」
「埋められてしまっている? とか? 」
「ここから地上へと出るのは難しそうだな。地上から孤児院へと向かうのが得策かもしれん」
デニスがそう言うと、下へ降りろとジェスチャーをし、もと来た道を戻り、別の道へと進むのである。
蛇の模様を見つけては囲み結界をはるを繰り返していると、また開けた場所に出てきたのだ。
先程のような階段がある場所より広く、床に魔法陣が書かれていたのだ。
「皆さん、離れて‼ 」
クリスティーヌが叫び、皆を魔法陣に近付けないようにする。
「ど……どうしたんだ?! クリス嬢?? 」
デニスは驚きを隠せず、恐る恐るクリスティーヌの顔をみる。
「この魔法陣に触れると死へ一直線ですわ」
「クリスティーヌ……どういう事だ? 」
「この魔法陣は禁忌の魔法の一つ、黄泉返りの魔法陣です」
「よ……黄泉返りだと?! なんでこんな物がここに‼ 」
魔法を使うものなら誰でも知っており、一番始めに教えられるのが禁忌魔法の事だ。
禁忌魔法には幾つかあり、人の命を奪うもの、死んだ者を蘇らせる者などある。
黄泉返りの魔法とは、生きている者を生贄として捧げ、その魔力に応じて魔物を黄泉から召喚する魔法であり、禁忌魔法の中でも悪質な類の魔法なのだ。
「なるほど。だから黒い魔石が必要だった……と言う訳ですね」
クリスティーヌは納得したように頷くが、他の者は、わからない、と首を傾げる。
「黒い魔石とこの禁忌魔法とどう関係あるの? 」
「ええ、それはですね……」
ジュイナの質問に淡々と答えるクリスティーヌは、皆に説明する。
古代魔法は大量の魔力を消費し、その分魔法を使うと威力が桁違いに上がるのだ。
この禁忌魔法の黄泉返りも古代魔法であり、魔力を大量に消費する。その大量な魔力を補う為に黒い魔石が使われるのだろう。
「じゃあ、黒いフードの者たちの狙いは、邪真教の復活と魔物の召喚なのか?! 」
「その可能性大ね」
クリスティーヌ達は地下から地上と上がれない事もふまえ地上からも調べる必要があるとみて一旦地上へと戻るのであった。




