101 ラスダンテ遺跡
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スパルタ特訓を始め、デジュの樹が葉を落とし始めた頃、クリスティーヌと学園内から選出された生徒が応接室に集められた。
ニズカザン帝国の西に位置する遺跡で、不思議な文字が現れ始めたのだ。
不思議な文字は魔力を持ち、近付く者を全て追い払うという。
調査団を編成し向かわせた所、文字を調べようとすると魔法陣が現れ閉じ込める。何をしても結界が壊れないのだ。
結界内に閉じ込められた者は、魔力を徐々に吸われ衰弱しているというのだ。
緊急事態につき、アレクシスと共にクリスティーヌ達が現地調査と共に解決を試みて欲しいという。
クリスティーヌの他に、エスイアとジュイナ、上級生のスマイリ、ナストの二人が呼ばれたのだ。
上級生のスマイリは、クールビューティーと言われている五年生だ。考古学が得意で、豊富な知識を持っている。
ナストは古代文字や、他国の言語の知識に長けている男子生徒である。
クリスティーヌ達は自己紹介をし、お互いに顔と名前を一致させていく。
今回の調査には、アレクシスが同行するのだ。その護衛として、エスイアとジュイナが選ばれたのである。
通常であれば、側近のキースやフラン、騎士団長のデニスが赴くのだが、遺跡の文字という古代文字が絡んでいる。浄化魔法や少しでも古代魔法が使える者が選ばれたのだ。
各々が準備をし、西の遺跡ラスダンテへと向かう。
ラスダンテは森の中にある古代遺跡であり、ニズカザン帝国が出来る数千年前からあると言われている。
遺跡調査を幾度となく行っているが、未だ解明出来ていない事があるのだ。
遺跡の中には罠が幾つも仕掛けられており、その罠も特殊な物が多く遺跡調査が進まない原因なのである。
クリスティーヌ達一行は森を抜け、ラスダンテ遺跡へと着いたのだ。
「ここは良い魔獣と魔草が沢山ありますわね」
「クリスさん、採取は後回しですよ」
「クリス、先に文字だ。あとで採取をすれば良いだろ? 」
アレクシスとジュイナに注意され、渋々手を止めアレクシスの指示に従う。
「これが不思議な文字なのね。思ってたより大きいじゃない」
「変な魔力の感じがするわ」
「変な魔力?? どういう事だ? 」
「何だか変なのよ。自然に出来た魔力じゃなくて、造り物のような感じがするわ」
アレクシスもクリスティーヌと同じように、変だ、と言う。
普通の魔力、つまり自然な魔力はクリスティーヌやアレクシスのような魔力の強い者達は、色で見えるたり感じたりする事があるのだが、不思議な文字から発せられる魔力にはそれが見えたり感じたりとしないのだ。
「なぁ? 俺は嫌な予感しかしない…」
「私も、すごーーく嫌な予感がする」
エスイアとジュイナが呟き、目を合わせた。
すると、遺跡に浮かび上がった文字が発光し増えたのだ。
「増えたぞ‼ 」
「この文字は何の文字?! 」
「これは古代文字の一つです。旧古代文字なので意味が一緒なのかはわかりかねますが、数字ですね」
「数字?! 」
「数字が何故この場所に出るんだ?! 」
「この遺跡には魔法トラップが仕掛けられているとみて間違いなさそうですね」
上級生二人が話す事に、アレクシス達は上級生の話に耳を傾ける。
「この状況から考えると、何かが発動するカンウントで間違いなさそうですね」
「つまり、これがゼロになると何か起きるって事か……」
「今の数字は分かるのかい? 」
「あ、はい。二ですね。王子の居ている辺りは、大体罠が仕掛けられている場合があるので、そこから退かれた方が宜しいかと……」
アレクシスは慌ててエスイア達のいる場所へと飛び去る。
「先ずはこの不思議に浮かび上がる文字が何と関係あるのか調べなくては」
「調べたくても結界がはられていて近づけないわ。アレクシス王子、何か策はありますか? 」
「んー……浄化魔法も通じないとなると……」
アレクシスとジュイナが必死に考えている中、クリスティーヌは魔導具を遺跡の壁面へと設置をしているのである。
誰もクリスティーヌの行動に気付いていないのだ。
魔導具設置が終わると、クリスティーヌは魔導具に魔力を込め少し離れた場所へと移動する。
更に魔力を込めると、壁面が爆発したのである。
流石に、爆音に気づいたアレクシスやエスイアは何事かと辺りを見回し、砂埃が舞っているクリスティーヌを見つけたのだ。
「ク……クリス……一体何をしたんだ?! 」
「正面が無理なら側面からと思いまして。魔導具を使えば、壁を簡単に壊せましたよ? ほら! 」
満面の笑みのクリスティーヌにアレクシスは、空いた口が塞がらず、頭を抱えたままその場に座りこんでしまった。
ラスダンテ遺跡は、神々が宿る古代遺跡の一つで希少価値も高いのだ。それを、魔導具で簡単に木っ端微塵に壁を壊してしまったのだ。
クリスティーヌ以外、アレクシスの動向を察したがクリスティーヌは何故アレクシスの顔が青ざめているのかさっぱりわからない、という表情をするのである。
アレクシスに追い打ちをかけるように、遺跡の外壁が更に崩れていったのだ。
「あぁ……貴重な遺跡が……」
「これで中へ入れますわ」
クリスティーヌは生気が抜けかけているアレクシスに親指を立て、早く、と急かすのである。
エスイアはアレクシスの肩を抱き、王子……気を確かに、としか声をかけられなかったのだ。
ここにいる全員は、何があろうとクリスティーヌから目を離すまい、と決めたのだった。