序章
初心者なのでちぐはぐやわかりにくい所もございますが、生暖かく見守って頂ければ幸いです
こんにちは。
私はクリスティーヌ・ビス・エルノーワ。
エルノーワ公爵家の長女。18歳。
この国では珍しいグレージュの髪色、切れ長の海を思わせるような濃い青の瞳をした誰もが認める悪役令嬢ですわ。
先程、この吹く雪の中から馬車を下り足早に家に入ろうとしたら、大理石の床でツルっと……そう! ツルっと婦女にはあるまじきツルッと滑りをしてしまい、豪快に後ろに倒れてしまいましたの。
ウフフフ。
そうですわ。
お察しの通り、後頭部を大大大打撃‼
それは痛いのなんの!
言葉では言い表わせれないほどの痛みでしたわ!
悶絶と言うのはこういう事を言いますのね!
あぁ……
私、死んじゃう……
クリスティーヌは朦朧とした中で呟き、重たくなった目を瞑り、意識を手放したらいつの間にかベッドの上に横になっていた。
側には侍女のマリエルが、私の手を握りながら、スヤスヤと寝ていますし。
一体何がおきたのやら。
マリエルの頬には、乾いた涙の後があり、前掛けエプロンがクシャクシャと皺になっている。
いつもは、後ろに綺麗に束ねている栗色の髪はほだけているし、きっと心配でずっと側に付き添ってくれたのですわね。
ウフフフ。とマリエルの気持ちが嬉しく微笑みながら窓の外を見ると、デジュの樹の葉が赤に美しく染まり、雲1つないすっきりとした空に映えていた。
ん?
デジュの葉が赤??
デジュの葉が赤と言う事は……今は秋??
え……っ……と?
昨日は雪の降る季節でしたわよね。
吹雪いてたましたわよね?
わたくし……ツルッと滑りましたわ……よね……?
あれ?
頭の痛みもない!
身体がベタベタするし、何かおかしいですわ。
そっと、マリエルに握られた手を離しベッドから下り周りを一つ一つ、確認をする。
白を基調とした質の良い調度品が幾つも置かれており、カーテンは開けられ明るく気持ちの良い陽射しが部屋を照らす。
紛れもなくクリスティーヌ自身の部屋だ。
小さな素足と床が触れる音が静かな部屋に響いている。
ふと衣装部屋に続く部屋の前にある大きな鏡を見て足を止めるのだ。クリスティーヌは、目を見開き息をのんでしまった。
なんですの?!
私、若返ってますわ‼
有り得ないですわ!
クリスティーヌは自身の陶器のような白い手で頬や顔全体を何度も擦り、自分というものを軽くつねったり叩いたりして確認をする。
あぁ……
この触り心地……
ピチピチのツルツルのモチモチになってますわ! 流石、若いって素晴らしいですわ。
ニマニマと頬を紅潮させながら、鏡を覗き込みじっくりと自分を観察してみる。
クリスティーヌの名誉の為に言うが、決して自分に惚けているわけではない。ピチピチのツルツルのモチモチ肌に興味があるのだ。
えっと……この寝間着は6歳の頃かしら?
それに身体が汗でベタベタしているわ……
そうですわ。
確か、森で貴重な魔獣を追いかけて池にダイブしてしまって高熱を出したのですわ。
魔獣は池にダイブ中に逃げて居なくなってしまったのでしたわ。
あぁ……!
きっと、これは、頭を打ったせいで死ぬ直前に見ると言われる思い出の夢なのね!
ぶつけた頭は物凄く痛かったけれど、ダニエルと結婚しなくて良いのね!
大好きなお母様やお父様、そしてお兄様。
魔獣とは会えなくなるのは悲しいけれどもクソ男と結婚する位なら死んでしまうのも良いわ。
たまには、ツルッと滑らせてくれた神様に感謝しなくちゃ!
クリスティーヌは過去の幼い頃を色々と思い出し何だか嬉しくなり、得意のダンスステップを踏みながらくるくると鏡の前で回りだす。
そうね。
もし生まれ変われるなら、悪役令嬢や変人令嬢なんてレッテルを貼られた、くだらない社交界、妬み嫉みのある学園生活とは無縁の地味でハッピーな人生を送りたいわ。
そして大好きな魔獣と魔法の研究者になるのよ‼
もう、魔獣と魔法に没頭できるなんて
なんて良いのかしら……
ヨダレが出ちゃいそうですわ。
考えると眠くなってきたわ。
そろそろ一眠りでもしてあの世に旅立とうかしら。
クリスティーヌは浮き足立ちながらベッドに戻り、大きな欠伸をしながら、ふかふかの羽毛布団にくるまり、生まれ変われる事を信じて意識を手放したのだ。
慣れないですね。
ちょっと残念美人です。