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看板娘の外面VS鎧の余所行き猫被り  作者: 丸晴eM
新米冒険者
9/13

始まりは黒

 冒険者ギルドへと一歩足を踏み出すと、人が忙しく行きかい中々に騒がしかった。3つあるカウンターは全て対応中で、依頼表を引っぱり出したり依頼品を鑑定したり金額交渉したりと慌ただしい。


「ずいぶん賑やかね、前に来た時はそうでもなかったのに。何か話題になるような事あったっけ」

「姉ちゃんが来るのって朝だろ、まだ皆寝てる時間さ。この辺りにギルドはここだけだから、いつも混んでるよ」


 倉庫への移動だろうか、箱を抱えた従業員を捕まえるとディーンは申請書を貰って来た。


「この太枠のとこ、全部書いて。登録料は250オルクで、最初の依頼達成で200オルク帰ってくるよ」

「ふんふん、助かるわぁ」


 待合所として機能している休憩スペースの一画を借りて、必要書類を記入していく。


「このギルドだと最初のクエストは光水苔の採取なんだけど、姉ちゃん1人で分かる?一応ソロクエストなんだけど」

「楽勝よ。他のギルドだと違う課題なの?」

「地形とか魔物の形態性とかで難易度が変わるから。それぞれの土地で普通の人には厳しいけど、冒険者にしては簡単なレベルになってるよ」


 初回クエストの前情報を聞きながら、名前・年齢・出身を書き込む。あまり細かな情報は求められていないようで、後は持っている資格や称号があれば、という感じだった。


「書くことほとんどないわね」

「実力の程は実績でってことさ。ほら、ちょうど右のカウンターが空いたから持っていこう」


 タイミングよく空いたカウンターへ向かう2人を、受付の女性が笑顔で迎える。


「ディーンくんこんにちは、依頼達成の報告かな」

「こんにちは、今日はこの人の案内なんです。冒険者の登録手続きお願いします」


 きちんとした対応力を見せるディーンに感心しつつ、こいつ私には敬語使ったことないなと気付くミアだった。


「よろしくお願いします」

「はい、これから頑張って…ってミアさんじゃないですか。え、依頼じゃなくて?なっちゃうんですか冒険者に」

「なっちゃいます。まぁしんどいのは若い子に任せて私はほどほどに、ですけど」


 ミアは受付の女性と何度か顔を合わせたことがあった。在庫補充の発注や、村での魔物被害の対策依頼やアイテム納品依頼等でお世話になっている。

 ギルド支援の店なので行くならついでにと村の人はミアに依頼を持ってくるのだが、冒険者になれば今後は()()()()()が増えそうだ。


「あんまり無茶しないで下さいね…あら」


 ミアが書いた書類を見た彼女は、ミアと書類を目で往復する。


「ミアさんの事ずっと年下だと思ってました」

「そりゃどうも」


 実はこれ、村の若い子によく言われる言葉である。所帯を持った年下の女の子達の方が何故かずっと大人びており、子持ちの子達は時々年上にすら感じる物言いをする。

 ()()()()()とはそういう事だと割り切って、ミアは独り身だから若々しいのよといつも自虐を返していた。本人はあまり気にしていないが。


「では登録料に250オルクかかりますがよろしいですか?こちらで用意した最初の依頼を達成して頂ければ報告時に200オルクの報奨金があります」

「はいお願いします」

「ギルドカードをお作りしますので少々お待ちくださいな。これ依頼書です、目を通しておいてください」


 説明の途中でお役御免と思ったのか、ディーンは自分の仕事を探しに依頼書の掲示板へ行ってしまった。

 受付嬢が後方へさがっている間に、ミアは依頼書を読む。



『初級依頼:光水苔の採取』

 内容/光水苔の採取…光水苔×1

 期限/3日

 報酬/200オルク


 

 期限が3日とあるが、光水苔ならここから徒歩30分ほど山に入った滝の裏の洞窟に沢山あるはずだ。ディーンは忘れているようだが彼がこの依頼を受けた時に光水苔の情報を教えたのはミアだった。

 小説で得た知識だが、これが中々役に立つ。筆マメな先輩冒険者様々だ。この情報を知らずとも()を求めて水辺に向かうだろうし、情報収集の為に周辺の店を利用する手もある。確かに初心者にはちょうどいい塩梅だ。


 ものの数分でミアの冒険者カードは出来上がり、晴れて冒険者の仲間入りを果たした。


「見て見て、ピッカピカの黒カード」


 早速掲示板へ駆け寄り、ディーンにカードを見せびらかす。


「よかったな、姉ちゃん」

「ディーンって今何色なの」

「赤だよ。多分次の更新で橙になる」


 ミアは、ディーンが冒険者になったばかりの頃から知っている。もう3年の付き合いになるだろうか。

 しかし冒険者としては()()()()と言ってもいい。中々早いランクアップペースだった。


「知らない間に、やるじゃない」

「まぁね!へへ…」


 照れ笑いするディーンの姿はまだまだ可愛く、幼さが残る。


「そうだ、もう今日のうちに依頼達成しとくだろ?姉ちゃんが採取に行ってる間に俺が買い出しとかしとくよ」

「それなんだけど、もう光水苔用意してきてるのよね。うちの村だと牧場横の川の橋の下にね、生えてるの」

「ずるいな!」

「失礼ね、賢いのよ。買い出しして戻ってきたら、さっきの人じゃないカウンターに提出。完璧ね」


 ミアの完璧な計画と手回しにより、さくっと最初の依頼もクリア。

 その日は家族の再会祝いとレオの卒業祝い、さらにはミアが冒険者になったお祝いで盛大に盛り上がることとなった。

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