頭の隅に置いておいて欲しい
初のホラーなので自信はないですが、楽しんで貰えると幸いです。
みんなにも注意してほしいことがあるから、この人目に多くつくであろう有名なサイトに小説として投稿しようと思う。
高校の頃の話だ。
俺の住んでいた地元は割と田舎の方で、市と名乗るのもおこがましい程、人もあまり住んでいなかった。 地元の高校に進学したものの代わり映えのしないメンツに飽き飽きしながら、早く大学に行きたいなと思っていた。
そんな時、俺の地元では猫を殺して首をゴミ捨て場に捨てる気持ちの悪い事件が多発していた。
頭のおかしいとしか思えない事件に警察も必死に犯人を捜していたが、手を焼いているみたいだった。
地元でそんな変な事件が起きれば、日頃大した話題のない俺たち学生の間で、その話ばかりになるのも仕方なかった。
「絶対、片岡さんの家の息子が怪しいって」
俺がいつもつるんでいる三人と一緒に学校から帰っていた時、その中の一人のリョータがそう切り出した。
「怪しいって、ネコ事件の犯人?」
「今、怪しいって言ったらそれしかないだろ」
ムラタがリョータに尋ねると、リョータは興奮した様子で返した。
片岡さんの家の息子は今二十代後半ぐらいで大学を中退してからこっちに戻ってきていて、ずっとニートをやっている小太りの人だ。
俺は確かに怪しいとは思ったが、フォローに回った。
「いくら、やることないからって、ネコ殺して回るかなー」
ムラタが「言えてる」と言って笑ったが、リョータは反論する。
「いや、この間見つかった猫の頭、俺の家の前だったんだよ。俺、夜中さ、喉が渇いて一回起きたわけ、そん時みたんだよ、ネコが入るぐらいのサイズのリュック肩に背負ったあの人をさ」
うろ覚えだが、片岡さんの家とリョータの家はそんなに近くなかった気がする。
確かに夜中にそんなとこを歩いているなんて怪しいかもしれない。
にわかに信憑性の増したリョータの話に俺たちはああでもないこうでもないと盛り上がり始めた。
少しヤンキーが入ってるムラタなんて俺がしめてやろうかなんて言い始めた。そんな感じでワイワイ言って歩いていたら、俺たちの中で一番大人しいミノルが突然「シッ」って言って会話を止めたんだよ。
で、何事かと思ったら、前からアラシマさんが犬の散歩をしてたんだ。
アラシマさんって言うのはここらじゃ有名な犬猫好きで有名な人で、いつも外で見かけるときは犬の散歩をしているんだ。
年中はしてないと思うけど、そう思うぐらい白のタンクトップと短パンをいつも着ている。
確か、五十代ぐらいだったけど、親が早くに亡くなって、その生命保険とか遺産で暮らしているから今は働いてない。
でも、沢山犬を飼ってるから、かわるがわる散歩させていて、一日中町のいたるところで見かける。
ミノルは犬猫が好きなアラシマさんの前でこの話題は可哀想だと判断して止めさせたんだと俺は少し感心してた。
「こっ、こんにちは」
ミノルは声を上ずらせながら、アラシマさんに挨拶をした。
俺たちはそれに続いて挨拶をした。
「はい、こんにちは」
アラシマさんはニコっと笑って挨拶を返し、四、五匹の犬を連れだって見えなくなった。
俺はミノルに「気が利いてたな」と言う意味を込めて、肘で軽く小突いたが当のミノルは青ざめていた。
「……どうしよう、今の聞かれたかな」
俺はどうしてそこまで神経質になっているんだと思いながら適当に返した。
「?」「大丈夫じゃないか? 結構前でお前が止めたんだし」
俺たち3人は何でここまでミノルが怯えているのか分からなかった。
次の日、片岡さんの家の息子が死んだ。
その死に方が最近のネコ事件同様に、だが今度はネコではなく人間の生首がゴミ捨て場に捨てられていた。警察はついに犯人がネコでは満足出来ず人に手を出したかと県外からも応援がきて大捜査になっていた。
朝から町中がその話題で持ちきりで、俺も教室までの階段をいつもより早足で駆け上がると、ミノルの席に集まっていたリョータを見つけ二人の元に駆け寄った。
「おい! ついにネコ殺しの犯人が人を殺したぞ! ってか犯人片岡さんとこの息子じゃなかったんだな」
俺の興奮気味の言葉とは裏腹に二人はリアクションが薄かった。
そして、リョータが恐る恐るといった調子で口を開く。
「なぁ、ちょっと教室出て話さないか?」
朝のホームルームまで時間がなかったが、俺たちは朝はあまり利用者が少ないため人通りのない理科室の側の階段の踊り場で話すことにした。
そこに着いた途端、ミノルが呻きながら泣き出した。
「うっ、俺が、もっと早く気が付いていれば」
俺は訳がわからずミノルに詰め寄った。
「おい、どういう事だよ!」
「……アラシマさんだ」
「あ?」
「あれをやったのはアラシマさんだよ」
俺はミノルのあまりにも突拍子もない発言を否定する。
「何言ってるんだよ、あんな普通のオジサンに人なんて殺せるはずないだろ」
ミノルは両手で震える自分の身体を抱きしめ、俺の言葉なんて耳にも入らないように話を続けた。
「あの人、犬猫を虐める人間を絶対に許さないんだ。多分、俺たちが片岡さんの家の息子が怪しいって話してたのを聞いたんだよ」
「だからって、殺すかよ。頭おかしいだろ」
「そうだよ! 頭おかしいんだよ!」
ミノルが珍しく声を張り上げ、その場に蹲ってしまった。
そして、その姿勢のままポツリと俺に質問をした。
「中学の時、行方不明になったケイタ覚えてるか?」
「あぁ、忘れるわけねーだろ。町中をみんなで探したじゃねーか」
俺は中学の同級生の名前を出されて動揺した。
警察も町の大人も大騒ぎになって探したが見つからなかった友人の名だ。
この流れで、名前が出るってことはつまり、
「あいつ、エアガン好きだっただろ? 実はさ、あいつこっそりネコを的にして試し撃ちしてたんだよ。俺がそれをある日見つけてさ、やめろって言ったんだけど『ネコぐらいいいだろ』って聞かなくってさ。
俺が説得に失敗して落ち込んでたら、帰り道でアラシマさんに会ってさ『どうしたの?』って聞かれたんだよ。それで俺ついケイタのこと話しちゃったんだ」
そこまで話すとミノルの身体の震えは一層激しくなる。
「俺、あの時のアラシマさんの顔が忘れられないんだ。いつもの気の抜けた顔がみるみる赤くなっていってさ、犬のリードを持つ手も震えてた。だから、あの人の前で絶対にそんな話をしちゃ駄目なんだ」
俺とリョータはその言葉にアラシマさんの顔を想像して息を呑む。
「ケイタがいなくなったのはその次の日だよ」
まだ、偶然の可能性は否めない。
でも、ミノルがアラシマさんを恐れる気持ちも分かるし、信憑性も少し出てきた。
リョータは恐る恐るといった感じでミノルに聞いた。
「おい、それを警察には?」
「ごめん、今まで怖くて言えなかったんだ」
俺たちはミノルを責められなかった。
しかし、誰よりもミノルを今まで責めてきたのはミノル自身だったのだろう。
話し終わると、蹲ってた体を起こし、震える拳を無理やり握り締め、立ち上がった。
その目には力がこもっていた。
「でも、このままじゃ駄目だよね。俺、今日帰りに警察に行って話してくるよ。でも、このことが誰かの耳に入ってアラシマさんにばれたらまずいから、二人とも黙ってくれる?」
俺たちは静かに頷いた。
いつも、弱々しいミノルがここまで覚悟のこもった表情をしたのは見たことがない。
そんなこともあって、帰りは珍しくリョータと二人で帰ることになった。
ムラタは今日は休みだった。
二人で特に会話もなく歩いていると、後方から独特のエンジン音を鳴らし、こちらに近付いてくる人がいた。
「どしたの、お二人さーん、元気ないじゃん」
俺たちが後ろを振り返ると、そこには原付に乗ったムラタとその彼女のエリカがいた。
「どうよこれ、実はこっそり免許取りに通ってたんだよ。カッコいいだろ?」
いつもならノリノリで根掘り葉掘り聞くところだが、先ほどのミノルの話があって俺たちは適当に「あぁ」とか「おぉ」と相槌を打つことしか出来なかった。
「なんか、二人とも元気なくなーい?」
俺たちの様子に気が付いたこの町では珍しいギャルっぽいエリカが疑問顔をした。
「おいおい、学校でなんかあったのか? あっ、生活指導の山田にエロ本見つかったとか? とにかく元気出せよ」
ムラタもエリカの言葉に便乗して元気付けようと、原付に乗ったまま俺の肩を叩く。
本当に元気のない俺は、そのまま顔を俯かせてしまったが、その拍子にあることに気が付いてしまった。
「おっ、おい! ムラタ、これって血だろ?」
俺が指差したのは、原付のフロント部分の塗装の禿げた個所だった。
そこには赤く血のような色が滲んでいた。
しかし、そんな指摘をされてもムラタは焦った様子はない。
エリカも堪えるようにクスクスと含み笑いをしている。
「あっ、ビビった? バーカ、それはネコの血だよ」
「……ネコ?」
「あぁ、急に飛び出してきやがってよー、危うくコケるとこだったぜ」
「……そのネコ、埋葬とかは?」
「は? 内臓まで飛び出てたんだぞ? んな面倒なことするかよ。信号も守れないクソネコは道路に放置よ」
俺とリョータは顔を見合わせた、互いの血の気が引いていくのがわかる。
俺は必死の形相でムラタに詰め寄った。
「おい! 今の話俺たち以外には絶対にするなよ! あと、帰ったらすぐにその血落としとけ! すぐだぞ!」
ムラタは俺のあまりもの形相に驚いたのか、珍しく「おっ、おう」と素直に返事をした。
そこで俺たちは別れた。
翌日、ムラタはひき逃げに遭い、ミノルは行方不明になった。
ムラタは夜中に何度も何度もしつこく轢かれたみたいで、朝見つかった時にはとてもじゃないが見れたものではなかったらしい。
俺とリョータは頭の中が真っ白になった。
朝のホームルームまで二人で呆然としていると、俺はあることが頭をよぎった。
「まだ、ミノルは生きてるんじゃないか?」
「は?」
「だって、まだ死体は見つかってないし、アラシマさんだって、昨日の夜中はムラタを轢き殺してたんだ。時間的にそんなに同時に殺せるか?」
「確かに可能性はあるな」
「アラシマさんの家の場所は知ってる。今ならまだ間に合うかもしれない」
「は? のり込む気かよ? 相手は人殺しだろ。警察に行こうぜ」
「でも、今こうしている間にもミノルがやばいかもしれないんだ。時間がない」
「俺はごめんだ、自分の命が惜しい」
俺はその言葉にカッとなって、教室を飛び出した。
くそ、友達の命が大事じゃねーのかよ。
「待って!」
無我夢中で廊下を走っていると、後ろから俺を呼び止める声がした。
リョータが追いかけてきてくれたのかと、振り返ると、そこにはムラタの彼女のエリカがいた。
「あんた、何か知ってるんでしょ。だから、昨日あんなに必死だったんだね。話してよ」
「エリカちゃん、悪い、今は時間がないんだ」
「……タカヒロを殺した奴の事に行くの?」
タカヒロとはムラタの名前だ。
俺は黙って頷いた。
「私も行く」
そのとんでもない言葉に俺の口調は荒くなる。
本当に時間がない時になんなんだよ。
「は? 馬鹿か、相手は殺人犯だぞ、あぶねーよ」
「自分だって行こうとしてるじゃん、一人より二人でしょ」
「女が戦力になるかよ」
「私、護身用に催涙スプレー持ってるよ」
「じゃあ、それ貸せよ」
「いや! タカヒロは私の家に遊びに来た帰りに殺されたの、半分は私のせい。絶対仇取りたいもん」
俺は咄嗟にカッターナイフをポケットに入れていたが、これだけでは戦力が心もとないのは事実だった。
「……わかったよ、ただし絶対に俺の指示を聞けよ。あと、危なくなったら俺を置いて逃げろよ」
「うん」
相手は五十のオッサンだ。流石にエリカを逃がすことぐらい出来るはずだ。
大丈夫、今までのみんなは油断した所を襲われたからやられただけだ。
普通に住宅街の真ん中にその家はあった。
隣の家とも大した違いはない赤い屋根の家。
表札も間違いはない。
中からは微かに犬の鳴き声がする。
俺はインターホンのボタンに指を付ける。
「いいか、最初は友好的にいくんだぞ。ミノルの居場所がわかれば、ミノルを連れ出すことが最優先だ。向こうが仕掛けてきたら、全力で倒すぞ。もし、家に誰も居ないようならこっそり庭からは言ってミノルを探す。いいな?」
エリカは黙って頷いた。
―ピーンポーン
その音は家の中以上にまるで悪魔の鐘のように俺たちの中に重く響いた。
その音に反応したのか、家の中の犬の鳴き声がいっそう激しくなる。
そして、一つの足音が玄関まで近づいてきて、ドアの鍵をガチャリと開ける。
「はーい、おや? 君たちどうしたの?」
大量の犬猫に囲まれ、アラシマさんが玄関から出てきた。
格好はいつもの白のタンクトップで、表情は外で会う時と変わらず明るい。
「あの、僕たち犬が好きで、良ければワンちゃんがいっぱいいるアラシマさんの家を見てみたいなぁ、なんて」
「おぉ、いいよいいよ。ぜひぜひ」
あっさりと、家の中に招かれる俺たち。
平日の朝に制服で、そんなよくわからない理由。
互いの探り合いは始まっていた。
いや、もう終わっているのかもしれない。
あと、互いに実力行使か。
玄関を一歩入れば、どれだけ誤魔化しても誤魔化しきれない獣臭がする。
リビングに通されると、その匂いに糞尿の匂いも混ざる。
俺たちは鼻を抑えるのを必死に我慢しながら、部屋の中央になるテーブルに座る。
来客に興奮しているのか、犬猫がせわしない。
二階や隣の部屋からもドンドンと犬猫の暴れる音がする。
俺とエリカはちらりと二箇所ある部屋の窓をみた。
そこには絶望的なことにシャッターがしまっていた。
つまり、逃げるなら今入って来た扉を通るしかない。
「ははっ、恥ずかしいところを見られたね。その窓はうちの犬が悪戯で割っちゃってね。応急処置でシャッターを下したんだよ」
俺たちの視線に気が付いたのか、アラシマさんが窓についての説明をしてくれる。
確かに、窓は歪にひび割れている。
「で、どんな犬が好きなんだい?」
「えっと、小さくて可愛いの」
エリカが場を繋ぐためにラリーを返した。
「そう、ネコは好きじゃないの?」
「えっ、別に好きだよ」
「……じゃあ、なんであんなことしたの?」
俺たちの背筋は凍り付いた。
しかし、エリカは鋭い目付きをし、まだ口を開いた。
「やっぱ、あんたじゃん! ミノルはどこ?」
俺は口論をエリカに任せて、ポケットのカッターの刃を音を立てないようにゆっくりと押し出した。
――ドンドン
二階から、また犬猫の足音が下まで響く。
「こらこら、そんなに大声出さないで、うちの子たちが興奮するだろ」
アラシマさんは困ったような顔をする。
そして、顔色が徐々に曇り始める。
「でも、君たちが悪いんだろ。あんな酷い事をするから、おまけに反省もなし。死んで当然だ。ミノルくんも正しい行いを告げ口しようとしたんだ。もううちの子の餌になったよ」
その言葉にエリカが激昂して、隠していた催涙スプレーをアラシマさん目掛けて吹きかけた。
それをもろに喰らうアラシマさん。
エリカが俺の手を引く。
「逃げよ! 今の録音してたから、今から警察に行こう!」
もがくアラシマさんを背に俺たち部屋から出る扉を開けた。
そこには様々な動物のマスクを頭から被った人たちが不気味に立っていた。
俺たちは勘違いしていた。
――ドンドン
二階から足音がする。
――ドンドン
一階の他の部屋からも足音がする。
――ドンドン
これ人間の足音だ。
二階からは何者かが降りてくる音がする。
一階の他の部屋の扉の開く音がする。
そして、背中からはアラシマさんの声がする。
「男の子は何もしてないから逃がしてあげなさい。まぁ、ミノルくんのように告げ口しようとしたらどうなるか分からないけどね」
エリカが悲鳴をあげる暇すら与えられず口を押さえられ、拘束される。
「これで今月も餌代が浮くね」
そこからの記憶がない。
ただ、エリカが行方不明になったと次の日担任が告げた事だけは覚えている。
俺はそれから逃げるように隣の県の大学に合格し、一人暮らしを始めた。
アパートを大学の近くに借りたせいで若干溜まり場になってる感は否めないが、あの日の事は夢だったんだと言い聞かせるように暮らしていた。
ある日、いつものように俺のアパートで友達数人と飲んでた時の話だ。
俺はいつものメンツが欠けていると思い、他の友達に聞いてみた。
「おい、最近ハヤシ見てないな、どうしてんの?」
空気が重くなるのを感じた。
で、その中の一人が仕方なくと言った調子で口を開いた。
「お前はあいつと学部違うもんな。あいつ、少し前に死んだよ。何でも複数人に囲まれてリンチにあったらしい。多分、ホームレスの反撃にあったんだろうな」
「は?」
「口止めされてたから今まで言わなかったけど、あいつガラの悪い奴らとつるんで、ホームレス狩りとか言ってストレス発散してたんだよ。こないだとかホームレスの飼ってた犬蹴り殺したとか笑って自慢してた。正直、死んでせいせいしたよ」
俺は何の確証もないが、あの日の事件がフラッシュバックした。
「なんか犬の散歩してたおじさんが朝発見したみたい。その時には顔が原型がないほどだったって」
「なっ、なぁ、そのおじさん、白のタンクトップじゃなかったか?」
「さぁ、俺はそこまでは知らないけど……あっ、でもそんなこと誰か言ってたっけなぁ?」
嘘だろ。ここ隣の県だぞ。
あの人の筈がない。
――プルルプルル
そこまで話してくれた友人の携帯が鳴った。
友人は画面に表示された名前を見てギョッとする。
「噂をすればなんとやらかな。そのハヤシのガラの悪い友達だよ。俺もそろそろこいつらと距離おきたいんだけどなぁ」
友人が電話に出ると、向こうの声がこちらにも聞こえるぐらいの大声で電話の相手は叫ぶ。
『や、ーい! 犬ー覆面、ー殺ーれる!』
「おい、どうした? 落ち着いて話せ」
――ブーブー
「なんだ? 電話が切れた? めちゃくちゃ焦ってたな」
俺は途切れ途切れの言葉から何となく推測がついてしまった。
アラシマさんだ。
あの人の手がここまで伸びてるんだ。
みんな聞いてくれ。
アラシマさんの手は少しずつ広がっている。
もう俺の想像もつかない範囲まで広がってるかもしれない。
これを忠告したかったんだ。
普通にしてれば大丈夫だ。普通にしてればな。