3.水面の姉妹
水面から顔を出した少女は未だに私たちを捉えている。
「あの子に流されてたら話も聞けない。戦闘だけはされたいんだけど…」
どうやら戦う気は無いらしい真琴は小さな女の子を見つめながら私に説得するように促してくる。
目の前の少女はどうやら遊びたいだけらしい。
よく見ると水面から出ているはずなのに服が全く濡れていない。彼女は何者なのだろうか。
「私たち頼まれごとをされてここまで来たの。この湖が原因かは分からないけど病気にかかってしまった子のためにしらべてきてくれっておねがいされちゃってね。何か知らない?」
駄目だろうなと思いつつ、少女に聞いてみると少し考えたような表情をしてからさっきの笑顔に戻って私達に言った。
「ここの湖はね、私とお姉ちゃんで守ってるものなの。昔から代々受け継がれてきたもので人々から恵みの湖と呼ばれたほどの歴史を持つ。そんな湖で病気なんて発症するわけがないの。そうね…強いていえば、水ではなくて、別の原因があるのかも。」
そんなことよりというように少女は私達に遊ぶように訴えかけてくる。遊んであげたいのは山々だけれどメルちゃんの為にも早く解決しないといけない。
「ほかの原因…でも、心当たりここくらいしかないよね?」
真琴の言う通り、湖しか言われていないからほとんど原因が思い浮かばない。
「邪神というものはご存知ですか?」
突如、ふんわりと優しい声がして顔を上げると、少女の隣に同い年ほどの女の子が私達に話しかけていた。
「私は瑞希この子は妹の茜よ。よろしくね。」
話を聞くと瑞希と茜は湖を守ってきた水原家の家系で幼少期から邪神についての勉強や、対処法を学んできたらしい。
昔から水の邪神が80年ごとに現れると言い伝えられてきた瑞希と茜は、今までの邪神をどのように怒りを沈め平和を守ってきたのか調べた。
すると80年ごとに条件を満たした"イケニエ"を捧げていた事が判明した。
誰かを犠牲にしたくはないという思いが強くなった2人は毎日特訓をして互いを高め合い、湖には誰も近づかないように見張るようになった。
「病気が邪神に関係するって言いたいの?」
「ちょっと真琴、落ち着いて。」
茜が家屋の方へ走っていったかと思えば大急ぎで絵巻物を持って真琴に渡した。
「これ…っ。1度"イケニエ"を捧げなかった時の絵なの!それで…みんな…」
絵巻を見ると湖は変色し、周りには息がもうないと思われる人が大量に倒れていて湖からは禍々しい生き物が人々を襲っているように描かれていた。
恐らく、この症状が起き始めていると言いたいのだろう。
「私たちの目的は邪神を倒して、安心出来る湖を作っていくこと。それにはあなた達の助けが必要なの。見る限り、巫女さんのようだし。」
「邪神は呪文で呼び出すことが出来る。でも禁句と言われているから軽々しく出来ないけれど、使ってみる価値はあるよ。街のみんなの為にも、3日後に儀式をするよ。病気の子の為にも。」
急かさずにゆっくりやるのが私のポリシーなんだけど、人のために動くのが巫女の役目だから頑張らないと。
真琴も2人の事情をしってやる気が出てきてるみたいだし。
「街のみんなを避難させなきゃ!くれは、神社戻るよ!」
元はと言えば私の神社なんだけどな…
本人が嬉しそうならそれでいいか。
水原姉妹に手を振って真琴の背中を急いで追いかけた。
2ヶ月以上も遅れてしまい、申し訳ありません。
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