表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リ ン ゴ ! !

作者: 月灯銀雪




 謹んで新年のお慶びを申し上げますm(__)m


 【冬童話2018】3作品目。

 2作目もですが、真面目(シリアス)さを かなぐり捨てました(* ̄▽ ̄)






 緑深き針葉樹の森の中。

 春先には 花粉症の人を地獄に叩き落としそうな木々が風にざわめき、声だけは綺麗な地味目の小鳥が歌う冬の晴れた日。


 森の奥深くにひっそりと佇む可愛らしいお家には、7人の小人 と 継母の嫉妬から逃れて身を寄せることとなった 美しい娘が住んでいました。


 娘の名前は白雪姫。

 名前の如くに まるで 夜のうちに静かに降り積もり、朝日に淡く輝く白雪のように 白くて艶々でモチモチの美肌と。肌を際立たせ、あまつさえ 美肌に並び立つ程に艶めく 磨き上げたヘマタイトのような黒髪を持ち。そんな 無機質(モノトーン)な色合いの中で、血の通う人間だと証明するかのように温かく彩りを添える 薄紅色の頬とふっくらとした紅い唇。完璧です。ぱーふぇくと です。


 白雪姫が このお家にやって来た時。小人たちは そのおおらかな気質からか、森を歩き通しの疲れと空腹で 家の食べ物を食べてしまったり、勝手にベッドで寝てしまった白雪姫を許し、快く受け入れてくれました。決して、白雪姫の美しさに デレデレしていたからではありません。


 家に住まわせてくれる お礼に、白雪姫は たどたどしくも家事のお手伝いをすることになりました。……生粋のお姫さまに家事能力を期待してはいけません。まずは お手伝いから家事に慣れてもらったのです。



 そんな白雪姫が、仕事に出掛けた小人たちの代わりに お洗濯ものを干すべく外へと続く扉を押し開け……



「あら?」



 開けようと扉を押しますが、扉は少しの隙間ができただけで そこから先には動きません。


 小さな衣類を詰め込んだ お洗濯ものの籠を一旦 足元に置いて、両手で扉を押してもみますが、扉はびくともしませんでした。


 そこで 白雪姫は、まだ成長の余地がある薄い身体を生かして 扉の隙間から外へと出ることにしました。ペチャなんとか などと言ってはいけません。夢と希望 溢れるティーンズなのです。


 意外と するりと隙間を通り抜けた白雪姫が、なんとなく釈然としないまま 扉の前にある物を確認すれば。そこにあったのは。



「まぁ!! 嫌だわ!!!」






 真っ赤な リンゴ でした。






 朝日を照り返す表面は 丹念に磨いたルビーのように艶々で、まぁるく膨らんだ姿は甘みと果汁が ぎゅぎゅっと詰まっていそうな理想的な曲線を描いています。きっと歯を立てれば シャリシャリジュワッと至福の一口が約束されることでしょう。




 そんな リンゴが一抱え。




 一抱えの籠に たくさん ではなく。




 一抱えの リンゴ が 1 個。




 扉の前に どーん!!! と置いてありました。下に 土に触れないよう布が敷かれていましたが、気の遣いどころが違う気がします。扉が少ししか開かなかったのは、この リンゴ のせいだったようです。白雪姫の細腕には重すぎました。



「嘘よ……何かの間違いだわ……はぅ」



 扉の前に鎮座する とびきり巨大なリンゴ を見た白雪姫は、何故か真っ青になって倒れてしまいました。



 実はこの白雪姫、リンゴ が一等きらいだったのです。



 白雪姫の 極端なリンゴ嫌い を知る継母の嫌がらせによって運ばれた 巨大リンゴ は、どんなに毛嫌いされても ただ無言のまま。倒れ伏す白雪姫の横で 甘く爽やかな香りを放っているのでした。





*○*●*○*





 白雪姫が玄関先で倒れてしばらくした頃。

 朝のひと仕事を終えて戻ってきた小人たちは、お家の前に倒れ伏す白雪姫を見つけて大慌てです。



『白雪姫!!』



「わぁ~、おおきな リンゴ だぁ~」



 ……ちょっとマイペースな小人も居たようですが、だいたい 大慌てです。



「たいへんだ!」



「白雪姫が しんでしまった!」



「なに?! 死んだのか?!」



「いやだ! そんなのかなしい!」



「本当に死んだのか?」



「ぴくりともうごかないぞ」



「リンゴ、おいしそうだねぇ~」



『とりあえず、リンゴ は ほっとけ!!』



 真っ青な顔で ぴくりとも動かない白雪姫に、小人たちは 彼女が死んでしまった と嘆き悲しみます。医者と(白雪姫の生死についての)ツッコミ役は不在なようです。


 当然ですが、死して(?)なお 眠っているかのように美しい白雪姫。そんな白雪姫を 小人たちは近くの丘の上にある台座に横たえ、たくさんの花と宝石のような木の実で飾りました。こんなにも美しい白雪姫を、小人たちは埋めてしまうことなんてできません。埋めなくてよかったです。



 しかし、このままでは 白雪姫 が雨風にさらされてしまいます。



 小人たちが 額を突き合わせてガラスの棺でも製作しようかと議論していた頃。その丘に白馬に騎乗した 分かりやすい優おと……王子が通り掛かりました。キラキラです。



 小人たちから事情を聞いた王子は、白雪姫に興味を持ち 台座に近づきます。花と木の実に囲まれて眠るのは、継母に嫉妬され 命を狙われるほどの美しさを持つ 白雪姫です。心奪われぬ筈がありません。小人たちとの生活で、ほどよく家事能力も上がっています。



「なんと美しい姫か……。惜しむらくは、生ある内に 貴女と出会うことができなかったということか。どうか 私から別れの口づけを贈らせてくれ」



 王子は そっと近づいて、白雪姫の唇に 思いの外しっかりと口づけを落とします。



「?」



 すると どうでしょう。

 白雪姫の長い睫毛が ふるりと震えて、白い瞼がゆっくりと持ち上がります。



 至近距離で見つめ合う 王子と白雪姫。



 普通なら。女性の寝込みに口づけをすれば平手をお見舞いされても文句は言えませんが、幸い 白雪姫は寝起きで即座に状況を判断できるほど寝覚めの良い方ではなく、至近距離にあった顔が麗しかったため、悲劇は起こりませんでした。



「おはよう、白雪姫」



「おはよう? ……ございます」



 白雪姫の目覚めに驚きはしたものの、触れた唇の温かさから 彼女が生きていることを確信していた王子は、取り乱すことも無く白雪姫に微笑みます。見かけによらず図太い性格をしているようです。


 驚いたのは 一部始終を見ていた、7人の小人たち。まるで 奇跡のような光景に、狂喜乱舞しています。



「今の状況が 理解できるか?」



「いえ。えっと……」



 小人たちの様子を、訳がわからない と言いたげに ぼんやりと見守る白雪姫に、王子が落ち着いた声音で問いかければ。白雪姫は不思議そうに思案して。



「……あ、リンゴ!!」



 悲鳴のような声を上げてしまいます。



『リンゴ???』



 その場にいた誰もが、虚を衝かれて 目を丸くしました。



 よくよく 話を聞いてみれば。白雪姫は リンゴ が大きらいで、家の前に置かれた 巨大リンゴ のせいで意識を失ってしまったというではありませんか。



「ならば、私がその忌々しき リンゴ を この剣で切り刻んでしまおうではないか」



『俺たちは リンゴ を食ってしまおう!』



「まぁ。みなさん、ありがとうございます。とても 頼もしいです!」



 王子が腰に帯びた煌びやかな細剣は、格好をつけるための飾り物では無かったようです。皆でお家の前にゆくと、早速 王子は リンゴ を切り刻んで……8羽の ウサギリンゴ ができました。


 小人たちは、意外と芸達者な王子による ウサギリンゴ に喜び、白雪姫のため という当初の意気込みも忘れて齧り付きます。


 リンゴを等分に切る上での 不幸な端数 に、ちょっぴり 諍いは起こりましたが。白雪姫の リンゴ嫌い を知る継母は、特に食べることを想定せずに 毒等を仕込むことが無かったので、犠牲者は出ませんでした。いわゆる ご都合です。



「これで リンゴ は無くなった。白雪姫、私はこれからも 貴女に近づく リンゴ は切り刻んでしまおう。私と一緒に、城へ来ないか?」



「……はい」






 こうして。白雪姫は王子と共に城へゆき、時々 送られてくる リンゴ から庇われながらも、末永く幸せに暮らしましたとさ。





【おしまい】









 クスッ とでも笑っていただけたら、大成功(*´∀`)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ