塔の夜
更新すっごく遅くなってすみません
リーフが夜遅くに帰ってきたときに言った言葉は私とウッディを仰天させるには十分でしたよ。
月明かりしか頼りのない時間にあの青年が塔へ向かっていたという言葉はね。
もっとも、ウッディの関心は青年よりも、遅くまで外に居たリーフに向けられていましたけれど。
青年はおばあさんもこのマフィおばさんもいないときを狙って等に毎晩通っていたのね。
それからというもの私はひやひやしっぱなしでしたよ。
おばあさんがそのことに気づきやしないか。
私の不安はまもなく当たってしまったわ。
あの娘が口を滑らせたのよ。
彼女がなんといったかははっきりとはわからないわ。
私が塔にたどり着いたのは、おばあさんがはさみを右手に、私の大事なラプンツェルの、三つ編みを左手に掴んでいるときだったのだから。
そして、じょきじょきと彼女の立派な髪を切ってしまった!あの美しい芸術品を!
ラプンツェルを奪った青年への怒りは私もありましたし、あの可愛い娘をずっと閉じ込めておきたい気持ちもわかるけれど。
それでも!あの金色に輝く髪をあの娘から奪って、そのうえ私たちから可愛いラプンツェルを奪ってしまうなんて!
おばあさんはあの娘を、惨めに髪の短くなったあの娘を荒野に放り出してしまったわ。
私はショックのあまり塔の部屋の隅で気を失ってしまったようで――
次に目を覚ましたときには鳥である私の目には何も見えなくなっていました。
もう、私は大慌てで飛び出そうとしましたけれど、見えないのだから仕方がありません。
すると下から声が聞こえてきたのです。
それは禍いの声だったの。忘れるはずもない、あの青年の声。
「愛しいラプンツェル。髪をたらしておくれ」
猫なで声でそう言うけれど、
私はもう知っている。可愛いあの娘はもういない。
それなのに、青年は塔にのぼってこれたようだったの。
青年の気配があがってくるのを感じた私は本当に不思議に思ったものよ。
その不思議はすぐに晴らされたけれど。おばあさんの声によって。
「お前の愛しい娘はもういない。小鳥のように歌うこともしないだろうよ。猫が連れていってしまったのさ。そして猫は今、お前の両の目も狙っているよ」
しわがれ声が聞こえて、その少し後に人間が落ちる音がして、うめき声が遠くから届いた。
そうして残された私はおばあさんを慰めることにしたのよ。
「あの娘が外の世界に行くことは仕方のないこと。原因があったとしたら、あの賢い娘に絵本と詩集で外の世界を教えてしまったことかもしれないわね」
そう言ってから私は自分が原因のひとつであることにも気づいたわ。悲しいことにね。
「そう。私があの娘と奏でた歌が彼を招いてしまったのよ。あなたが運んできた詩を歌って」
私にもおばあさんにも原因はあったのだから、と。
まあ、おばあさんの耳にそれが届いたかどうかはわかりませんけれどね。
朝になるとすぐに私は家に帰ってことの顛末を家族に話したのよ。
リーフはラプンツェルをあんな目にあわせた人間にはふさわしいと言い、
セーラは青年を可哀想だと言いました。
ウッディはというと、何も言いませんでしたけど。