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塔の上にやってきたのは

グリム童話「ラプンツェル」を元とした物語です。

ディズニー映画のラプンツェルと原作を同じくしていますが、そちらとの関連はありません。

 To my dear Rapunze.(・・・・・・・)(親愛なるラプンツェ(、、、、、)に捧ぐ)



 私の大好きな女の子の話をしましょうか。その女の子の名前はラプンツェル。きっとあなたも聞いたことがあるでしょう?


 でもね、私がこれから話す彼女の話は皆さん知っているものとはちょっと違うかも知れない。


 ***


 高い高い塔の上に髪のとても長い女の子が住むようになったのはいつのことでしたっけ。

 どうやっても人の力では誰ものぼることのできない高い塔に彼女をのっけたおばあさんはさぞすごい方だったんでしょうけど、あいにく私はあの可愛い()がやってくるところに立ち会うことができなかったから、よく知らないの。


 私にはっきり分かることは、あのおばあさんのおかげで私たちの――彼女のところに訪問してたのは私だけじゃないのよ――ところにあの()がやってきたということ!


 そうやって塔の上に住むようになった小さな娘はすくすくと育って回らない口でたくさんおしゃべりをしてくれたものよ。

 そうしたら彼女、たちまち私たちの人気者になってしまったわ。


 そうそう、自己紹介を忘れていたわね。私は小鳥のマフィと申します。


 私の名前なんてどうでもいい?

 そんなこと仰らないで。この名前はその可愛いラプンツェルが考えてくれたのだから。

 彼女は私の夫にも子どもたちにも名前をつけてくれたわ。でも、それは追い追い話すことにしましょうね。


 その女の子は塔の中からの眺めが大好きでね、大きくなるにつれて眺めるだけじゃ足らなくなると、


 私たちに外のことを教えてとせがむのよ。「マフィ教えて」ってね。

 もちろん教えてあげましたとも!

 木の実が真っ赤に売れて木からこぼれ落ちそうだったこと、

 麦が畑一面に広がって金色の絨毯のようだったこと。


 少し人間の女の子には退屈な話だったかもしれないわね。

 それでも彼女は綺麗な目を一層輝かせて聞いてくれましたよ。


 農夫のとこのフィニ坊やが畑の溝に落っこちた話を

 セーラとリーフが――私の娘と息子なのだけれど――が話したときには、あの娘はぽかんとしていたのよね。

 そう、彼女はおばあさんと私たちにしか会ったことがないから男の子というものを何も知らなかったの。

 そのときばかりは私もラプンツェルが可哀想と思ったわ。外の世界のことをなんにも知らないなんて!


 おばあさんもきっとラプンツェルの退屈に気づいたのでしょうね。

 絵本や詩集をたくさん持ってきてくれて、塔の部屋は本で埋まるほどだったのよ。

 もっとも、おばあさんはあの娘の髪をのぼってやってくるものだから、一度に持ってこれるのはせいぜい二冊程度でしたけど。

 それでもあの娘には十分だったわ。私が彼女のところを訪れられないときにはその本が話し相手になってくれるようになったのだから。


 賢いラプンツェルはすぐに本をそらで言えるようになって、私にきかせてくれることもしばしばだったわ。

 ときには詩にメロディをつけて歌ってくれましたよ。あぁ、あの声の美しいことといったら!

 透き通った歌声は小鳥の私でさえ舌を巻くほどのもので、毎日歌をねだったものです。

 それが禍いを招くとも知らずに。

 私と夫のウッディが伴奏としてさえずり、彼女が歌う。それが毎日の楽しみだったわ。


 私と私の家族は世界で一番恵まれた小鳥だったはずよ。

 だってそうでしょう?

 あんなに可愛らしい女の子のすぐそばで、お話をしたり歌を歌ったりできるなんて。


 そうそう、彼女は私たちに食べ物を分けてくれたりもしたのよ。

 それは、彼女の嫌いな人参であることがおおかったのだけど。


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