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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第一章 第21AL空挺連隊
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ジッタ要塞攻略戦(2)

 現在1355、攻撃開始まで残り五分というところである。皆攻撃の準備はできているようだ。リンドはマカンシーから突撃銃の弾薬を2つ新たに受け取ると、背中のラッチに引っ掛ける。こういった作業はボタンを押せば、ALのプログラムがあらかじめ組み込まれた動きをやってくれる。リロードや武器の出し入れも同様だ。

 ここははるか昔古代に大河が流れていたところで、枯れてしまった現在は10数ミラスもある底が完全に見えている。おかげでこうしてALすら身を潜められる。ただ敵も黙って攻撃をこまねいているわけではなく、先ほどから散発的に迫撃砲や機銃をこちらにプレゼントしてくれている。切り立った川岸に皆寄り添っているため殆ど被害はないものの、やはり迫撃砲なんかは防ぎきれず死者が出ている。

〈おい、怖くないか?〉

 マオールが尋ねてきた。

「怖いに決まってんでしょ」

 手の震えは収まらない。すでに死線を潜り抜けてきたが、一旦落ち着いて考えてみると怖さがよみがえってくるのだ。飛び出した瞬間に重砲の直撃を受けたらどうしようか、いくら重ヴァルでも耐えられないかもしれない。足をやられて集中砲火を受けるかもしれない。ALの撃破手順は足の関節からというのは、常識である。

「でも、仕方ねえって。俺は重ヴァル乗りで盾なんだ。お前は俺よりましさ。ただその分危険手当は増えるんだけどさ」

 お金を稼がなくてはならない。彼の目的の一つである。もちろん国のため、愛する者のために戦いたいというのはあるが、志願した一番の動機は金であった。特にこの空挺部隊の重装甲ALのパイロットになれば、特別な適性がなくともより多くの報酬が軍からもらえると知った時、彼は迷わず志願した。あの時もし、今の恐怖を知っていたなら、志願をやめていただろうか。いや、やめてはいなかったかもしれない。

物思いに耽っていた彼を現実に引き戻すように、リムス少尉の呼びかけが通信機から飛んできた。

〈オーセス伍長、俺たちが援護をする。お前は敵の攻撃の集約と映像の送信、ありったけの火力をぶつける。この三点だけ注意していればいい。いいな?〉

「……ハッ!!」

〈攻撃開始!〉

 ヴェケラ中隊長の号令とともに、リンドは操縦桿を動かすと同時にペダルを大きく踏み込んだ。

 リンド他さらに二機の重ヴァルが、一気に斜面を駆け上る。ガソリンエンジンと、噴射剤のパワーでその巨体を一気に地上へと押し上げる。ひときわ激しい駆動音が銃弾よりも鳴り響く。

 リンドの目に映ったのは、あまりに厳重な防御を施された防衛線であった。すぐに視界に入っただけでも十を超すトーチカ、そして大量の戦車やALが見える。

「トーチカ、十以上!車両二十前後!ALは約十機が確認されて!」

 言葉遣いがめちゃくちゃになっているが、それどころではない。飛び出した三機の重ヴァルに一斉に攻撃が浴びせられたのだ。機銃程度では全く傷などつかないが、ロケット砲や大砲、重機関砲の直撃を受ければそうもいかない。早速彼のALも胴体や脚部に数えきれない洗礼を受けた。アラートが煩わしい。だがリンドたちもただ攻撃を受け続けるわけではない。アドレナリンが半ば無意識に指を動かし、ロケットポッドからすべての弾頭を射出した。大量のミサイルが要塞表面に叩き込まれる。いくつかは火線を浴び途中で爆散してしまったものの、多くがベトンを抉り取り、爆風で要塞内側の人員を殺傷した。

 が、ここで最初の犠牲が出る。重ヴァルがミサイルの斉射をしたのは攻撃を浴びてる最中、ロケットポッドの蓋の展開から発射まではスピーディーであったものの、やはりどうしてもタイムラグが生じてしまう。それが仇となり左端にいた一機の重ヴァルの一機のポッドが展開したところで、敵の砲撃が飛び込んでしまったのだ。1ガトン以上の炸薬が一点で誘爆したことにより、重ヴァルは原型をとどめないまでに大爆発を起こした。いくら重ヴァルといえども、至近距離でのあの爆発にはさすがに一たまりもない。重ヴァルは周囲の味方を巻き込み吹き飛んでしまった。

 その衝撃はリンドのいる右端まで駆け抜けてきた。

「うわあああ!!!」

無我夢中でトリガーを引いた。左手に持った60㎜突撃銃が火を吹く。

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