表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第四章 空と陸の邂逅
85/382

暗夜隧道

 敵の構築された防衛線の懐に突如現れた二機のALは、あっという間に陣地を蹂躙していく。何門もの対地機銃が地面に土煙のヘビを何匹も這わせ、その後には数十人の兵士の死体が横たわるばかりであった。

〈マル―グルだ、北門は片付けた〉

 三小隊隊長のマルーグル中尉は、破壊された陣地から離れつつボルトラロールへと現在の状況を伝える。現在彼とジュードル、三小隊の重ヴァルのメニェ軍曹が三機並んで狭い通路をゆっくりと進んでいた。ALがギリギリ通れる高さと幅がありALが通ることを想定しているようではあったものの、これはあくまでも一応として造られたもので本来人の乗っていないALは車両の荷台に寝かせた状態で地上では運搬されることが常識であった。

 ボルトラロールのすぐ後ろではガンガンと絶えず重たい金属がぶつかる音がしていたが、これは重ヴァルの両肩のロケットポッドや背負っている対空速射砲なんかがぶつかり続けて鳴っている音であった。

「ふん」

 時折兵士が車両で近くまで乗りつけては物陰からこちらを狙って攻撃しようと試みてはいたものの、近づくエンジン音をマイクで先に拾っていたため、おおよそは車を止める前に撃破されてしまっているのがオチであった。彼らはやがて大きく分厚い扉の前にたどり着いた。恐らくメインゲートかなにかだろう、固く閉ざされた扉は簡易スキャンではあったものの調べた結果実に二メートル近い厚さを持っていることがわかった。

「まいったねこりゃ」

 彼は一旦後ろの二人に下がるように伝えると、方向転換ができないので慎重に後ろ向きに後退していった。十分な距離が取れたことを確認すると、ボルトラロールはコックピットの上の方にあるスイッチを跳ね上げた。すると彼の乗るアルグヴァルの脇腹あたりの丸いハッチがスライドして内部には弾頭のようなものが確認できた。

「撃つぞ」

 スイッチを入れた直後には瞬きすらする間もなく短距離ロケット弾が扉に着弾し、着弾地点には直径三m程の穴が空いていた。向こう側は煙と炎とでまだ見ることは出来ないが、恐らく中にはこちらに銃を向けた敵がわんさと待ち受けていることだろう。そこで彼はアルグヴァルの左腕を中に突っ込むとトリガーを引いた。

 前腕部に内蔵された火炎放射器のノズルから炎が噴き出すと、扉の内側に勢いよく燃え広がった。向こう側ではきっと阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていることだろう。そのまま十秒ほど噴射させて腕を引き抜くと、なんと右手首から先が吹き飛んでしまっていた。まさか火炎放射器で、と思ったのだがそんなわけがない。きっと突っ込むと同時に攻撃を受けて破壊されたのだろう。

「ジュードル、背中を支えていてくれ」

〈え、あっはい〉

 何をやるのだろうかと考えを巡らせつつ言われた通りに彼のアルグヴァルの背中に機体の体重をかけて背中から押すような姿勢を取ると、ボルトラロールは右足でその反対方向に機体を突っ張らせつつ反対側の足で何度も扉を蹴りつけ始めたのだ。

 支えもなしにただでさえ重心バランスの悪いALが片足という不安定な姿勢で固定された分厚い鋼鉄の扉を蹴れば転倒は必至であり、それを避けるためにはこのようにALを支えうるだけの支えの存在が必要となってくる。重心は、ALという兵器特有の決して克服しえぬ欠点でもあった。

 そうしてニ十回ほど蹴りつけたことでようやく扉はレールから千切れ始めたので今度はライフルを置くと両手を用い力技で扉を開け始めた。使えない左腕なら酷使し放題であるため彼は遠慮なく左のアームを扉に押し付けこじ開けていく。

「まずいっ」

 目に映ったのはこちらに砲を向ける装甲車であった。機関砲ではなく単装砲を載せた装甲車は狙いをボルトラロール機の頭部に定めると主砲を放つ。咄嗟にレバーを引いて機を仰け反らせるボルトラロールであったが、砲弾は上部正面装甲に当たると天井に向かって跳弾し一部天井を破壊した。一旦ライフルを拾うと向こう側に撃ち込んで沈黙させ再び扉を開ける作業に戻った。

(時間がかかりすぎてるな)

 彼は自分が戦闘で入ったことを後悔した。部下や他の部隊の隊員をできるだけ危険にさらしたくなかった故に先頭を切って突入したが、重ヴァルを先頭にしておけば何十発とロケットを積んでいるためあっという間にこんな扉バラバラに吹き飛ばせていたであろうに。

「よっ、ほっ……!」

 十五分ほどかかって漸く扉が開くころには、右のマニピュレータは小指が損傷し左腕は先ほどの被弾したときよりも損傷がかなり酷くなっており少し前まで見えていた手首の軸が完全につぶれて装甲と見分けがつかなくなってしまっていた。

「注意しろ」

 内部では赤色灯が点灯しており視界が悪かったためライトを点灯して内部に臨む。内部では焼き尽され炭のようになった敵兵たちのだったものが転がっており、その惨状は自分がしたことながらいつみても気持ちの悪いものであった。もうこういうものには慣れたつもりであったが……

〈あっ!〉

 そんな時、後ろのメニェ軍曹が声を上げた。

「どうした」

〈ああ?〉

 二人が振り返ると、重ヴァルが扉を通れずに引っかかってしまっていたのだ。どうやら扉の直前で一旦通路が狭まっていたようで、両肩の外側に備え付けられているロケットポッドと背中の速射砲が干渉してしまっているようだ。軍曹は機体を横に捻って入ろうと試みるも、現在地の廊下の幅と機体の幅がほぼほぼぎりぎりのところで一致してしまったらしく、上半身の旋回さえできないようだった。

〈一旦戻ってすぐにまた降りてきます〉

「わかった、俺たちは先に行ってるからな」

〈すみません〉

 重ヴァルはそろりそろりと後ろに後退していく、その一方で時間がおしているので彼を待つことなく二人は奥へと足を進めた。現在地はどうやら分かれ道の分岐点のようで、先は四つに分かれているのだが、残念ながら内二本はとてもALが通れるサイズではなかったので、選択肢は自然と二本に絞られる。こういう場合、よくあるのが二手に分かれ単独行動で任務を遂行するという展開だが、そんな危険なことをボルトラロールがとるはずもなかった。

 彼の今の気がかりは外で分かれたリンドとスライであった。二人もレーダーを確認する限りでは同様に別の入り口から内部に侵入したようだが、場合によってはメニェのようにリンド機が引っかかって二人がやむを得ず単独になっている可能性があるのだ。スライなら大丈夫かもしれないが、いまだ危なっかしいところのある若き青年を無駄に危険な目に合わせたくないのが彼の心情だった。

 電力の落ちた地下はとても暗く、そして抵抗もないために限りなく不気味な空気が辺りを漂い緊張を強いてくる。

〈メニェであります、お二人はどちらでしょうか〉

 どうやらメニェが戻ってきたようだ、彼は右だと伝えるとすぐにメニェは足早に右の通路へと走る。レーダーには後方から二人よりも早い速度で彼の機体が接近していることを示していた。

「速度を速めよう」

 そうボルトラロールが後ろを振り返りつつ述べたと同時に、前方で光る点が見えた。

〈あっ!〉

 それを見ていたジュードルが声を上げる、ボルトラロールも意識では彼の声が攻撃が来たことを示しているのは理解していたものの、実際にそれを行動に移すとなると難しかった。コックピット内で後ろを向いていたために反応の遅れたボルトラロールは、砲弾を胴体に思い切り食らってしまい仰向けに倒れるアルグヴァル、次はジュードルの番なのは明らかであった。彼は見えない敵に向かってありったけの銃弾を暗闇の向こうへと叩き込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ