アサルト・ウェイ(3)
早朝、連合軍第二物資集積所は突然の襲撃を受け大慌ての形相を呈していた。丁度砲撃を受けた時、彼らは三日後に控えた一大反抗作戦のため後方から大量に集めた物資を出してトラックなどに積み込み輸送部隊を送り出そうと企んでいたため、普段は安全な地下に埋蔵されていた物資の多くが地上に晒されてしまっていたのだ。無防備な姿を晒していた膨大な量の物資と輸送手段は、空から降り注ぐ砲撃をもろに浴びてしまいあっという間に吹き飛ばされていった。食糧や衣類は焼かれ、弾薬や燃料は引火誘爆を引き起こしその損害を広げていく。
あっという間に物資が次々と破壊されてしまった頃にようやく消火活動が始められたが時すでに遅し、その上泣きっ面に蜂とはまさにこのことか、なんと基地の南方四十mほど崖下からALが七機も迫っているというではないか。防御用の自動砲台が作動するも、展開中の隙をつかれてすぐに沈黙させられてしまった。基地を襲撃したAL部隊は、南西部の区画をあっという間に壊滅させた後東へと移動しているそうだ。
「急げーっ!!対AL狩猟部隊はHブロックに展開をーっ!」
そう叫ぶ現場指揮官の後方を、AWが五機北側の正面入り口に向かって走っていく。基地内部では決死の消火活動が行われている中、南部では目下に迫るALに対し迎撃を行っていた。対戦車用の短距離ロケットシステムが展開され、一人が装填、一人が砲手として、一人がカメラをもって外壁から外を覗き込み誘導、そしてもう一人が指揮を行う。観測手が外壁のふちから頭を半分出してカメラの先を覗かせる。カメラを通してロケット発射装置に備え付けのモニタには、前部で五機のALが映っていた。どれもシェーゲンツァート軍の所属章を肩に刻んでおりその紋章に憎しみを込めて狙いを定める。
「おい、ALは七機じゃあ」
事前に聞いていた情報と異なる数のALが映っていることに疑問を抱いた砲手が指揮官に尋ねるとモニタを覗き込んで彼も頭を捻る。混乱した状況での錯綜した情報によるものか、それとも実際に七機存在し、途中で二手に分かれたのか。いずれにせよこのことは上に伝えねばなるまい。すぐに無線機で指揮所にALの数が異なっていることを伝えると、混乱はしていたもののすぐに警戒用のドローンが追加で飛ばされた。
「目標は右から四機目の指揮官機、用意……撃てっ!」
指揮官の命令の後、発射された弾頭は白い尾を引きながら斜め上方に向かって飛行するとすぐに下降し始めまっすぐ誘導に従ってこちらに向かって全速力で接近しつつある敵ALに向かって飛んでいった。
〈上方ロケットォ!!〉
ボルトラロールが叫ぶ。ロケットは瞬きする間に数百mも飛んでいるため回避は難しい、そのため短く伝えてはいたのだが、それでも間に合うわけもなくロケットの警報が鳴った直後には一発目の弾頭がボルトラロール機の側頭部後方で爆発しモニタはノイズで覆いつくされる。
〈ウウウッ!〉
運よく外れてくれたものの、近接信管によって爆発したために爆発に巻き込まれて頭部に著しい損傷をこうむってしまった。一応サブカメラを利用すれば視界の確保はできるものの、自動照準システムに不具合を起こしてしまった。
「無事ですか隊長!」
すぐ後方で爆発に巻き込まれたボルトラロールが気になったリンドは思わず足を止めてしまう。
〈止まるなバカ!〉
スライの怒声が聞こえたのも束の間、立ち止まった重ヴァルの胸部にロケット弾が命中した。
「アアアアッ!!!」
倒れる寸前、思わず操縦桿を握りしめたために引き金が引かれ空に向かって無数の突撃銃の銃弾が放たれた。倒れた重ヴァルは胸部外殻に損傷を負ってはいたものの、多層構造になっていたために内部の通常装甲との間の空間によって通常装甲は守られていた。
〈スライ、リンドを頼むぞ!〉
〈ハイッ!〉
部隊はリンドを置いて停止することなく先へと進む。倒れたリンドはスライが護衛についたので大丈夫だろう。計三発のロケットが放たれた結果、ボルトラロール機の頭部とリンド機の胸部の損傷という被害を受けてしまった。
〈全機スラスター用意!〉
対戦車ロケットでは狙えない角度までくると、三機のALはその場に立ち止まったかと思うと腰を落として背部と脚部に配しているスラスターに点火、重たい機体を持ち上げてALは飛翔する。
「飛んでる!!」
真上を飛んでいく二機のALに目を剥いて見上げる狩猟部隊の兵士たち。彼らは見逃されたのかと思われたのだが、その直後に遅れて通過した第三小隊の重ヴァルがその重量のため外壁ギリギリを飛び越えていったために、彼らは至近距離でスラスターの噴射を浴びてしまい一瞬で焼き尽されていった。そんなこともつゆ知らず、重ヴァルは地面を大きくへこませながら着地すると先行するボルトラロール機とジュードル機に追従した。
〈おいリンド、無事かおい!〉
スライの声が聞こえる。それと同時に金属音が何度も大きく耳に入ることでようやく目を覚ましたリンドは、今自分に何が起きたのかを瞬間で理解した。
「ああっ!!」
〈生きてたかリンド、大丈夫か、怪我は〉
倒れた時に腕を痛めたらしく微妙に右の二の腕が痛むが任務には支障はないだろう。軽く腕を揉むとスライの手を借りて彼は機体を立ちあがらせた。
「すんません、隊長たちは」
〈もう先に行ってる、俺たちも行くぞ〉
「ハイ」
ようやくリンドとスライは進撃を再開してボルトラロールたちと同様壁を崖ごとスラスターを用い力技で飛び越えていった。彼らが進んでいくと、まるで荷馬車が果物を落としていったように奥の方まで装甲車やAWなどの残骸が伸びておりこれを辿る先に味方がいることを示していた。そうでなくとも別にレーダーを見ればすぐにわかるのだが。
警戒しつつ進んでいくと、すぐに戦闘が現在進行形で行われている地点が見え煙や建物の陰に隠れてはいるがアルグヴァルの頭部がちらほらと見え隠れしていた。
「すみません、追いつきました」
ボルトラロールもレーダーでリンドとスライが近づいているのは知っていたので、驚くこともなく返事を返しながらも手は物資破壊のために動かし続けており、対地機銃と右腕の火炎放射器を用いて次々と積み上げられた物資を塵に帰させていった。
〈二人はあっちを頼む〉
そうボルトラロールが更に北部を指さしたので、二人は指示に従ってそちらへえと向かった。あらかたここら辺の物資と敵戦力は制圧してしまったようなので、じき彼らも移動を始めるだろう。物資は完全に焼き払えとのことだったので、集積場の内部まで行く必要がある。内部の構造自体は色々な方法を用いて地図があるため迷う心配はないのだが、問題は行って帰ってくるまでの時間であった。やはり移動時間はどうしても出てきてしまうため、移動に手間取っている間に敵に増援を呼ばれたらことだ。さっさと手際よく片付ける必要があった。三機のALは、一人残らず敵を殲滅したのを確認すると、内部へと向かっていった。
北部ゲートでは、敵の攻撃に備えて防御陣地が形成されつつあった。基地内部では複数のALが暴れていることは確認されていたが、南部防壁から送られてきた報告とは数の異なる敵戦力が気になっていたため、こうして防衛の用意をしているのであった。戦車分の土嚢を積み上げる時間の余裕はないので歩兵用の分の土嚢だけ積み上げ装甲戦力はむき出しのままゲートの内側に並ぶ。
が、彼らの予想を裏切るようにその敵は現れた。突然、すぐ後方の地下エレベーターが激しい爆発と共に天板が吹き飛ばされ、二両の装甲車と二十五名の兵士を下敷きに地面に墜落した。
「まさか内部に!!」
すぐに後方に回頭するように指示するも、砲塔が旋回している途中で立て続けに二機のALが大型エレベーターシャフトから飛び出してきたのだった。




