表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第四章 空と陸の邂逅
82/384

アサルト・ウェイ

 レーダーに映っていたのは、四機のオースノーツ軍AL小隊であった。彼らはこの方面に設置していたレーダーに反応が確認されたため派遣されてきたのだが、レーダーを敷設してからというもののしょっちゅう誤作動を起こしていたため、始めはいくつものAL小隊や航空機が派遣されていたのだがやがてこうしてその時その時で暇を持て余している部隊が派遣されてくるようになっていた。今回も彼らは空振りだろうと踏んで適当にぶらついて帰るつもりであったのだが、今回ばかりは本当になってしまった。

 そうとは知らぬ四機のALは、街の中へと足を踏み入れる。

「あっちのほうだな」

 最後に反応があったのは南の方にある大型ショッピングモールの廃墟付近である。大方住人共が廃車でも動かしたのだろうと考えていたのだが、まさか十機もの敵ALが潜んでいるとは夢にも思うまい。何も知らない彼らは、サーモカメラに切り替えることもせず迂闊にモール内部に侵入してしまった。地響きが辺りを揺らす。

「何もありませんよ、隊長」

〈だろうな〉

 先行している一機が、そう報告したあとに不自然な瓦礫を目にとめた。ただの瓦礫にしては細かく粉砕されており、そういった不自然に破壊された瓦礫は奥の方へと続いていた。こんなふうに硬い鉄筋コンクリートの塊を規則的に粉砕できるものなど、たかが知れている。

 それでも彼はそのまま不用心にもその跡を追ってしまった。せめてここで他の者に報告をしておけば或いは変わったのかもしれなかったが、もう遅かった。彼はそのまま駐車場の方へと進んでいきやがて二十mはありそうな、ALが悠々と通れるほどの高さのある横穴を見つけた。中は薄暗くライトをつけなばモニター越しでも見ることは出来なさそうであったため、彼は足を進めながら胸部ライトを点灯させた。

 直後、彼の眼に映ったのは格闘用武器をこちらに向けた敵のALであった。一瞬の雑音の後、彼との通信が途絶えたが、仲間は気づく気配が見られない。何故なら、彼のALは完全に破壊されたわけではなくコックピットのとりわけパイロットのいる部分一点のみを潰されたためであったので、機体の信号はまだ生きていたのである。

 このALを仕留めたのはボルトラロールであった。



「来たか……」

 機体の電源を落としていたボルトラロールは、非常用電源を使って外の様子を観察していた。ノイズの走るモニタには、駐車場の外壁の隙間から差し込む光を遮る大きな影が確認でき、それが敵のALであることはまず間違いなかった。駐車場の中には六機のALが潜んでおり、彼らが侵入した横穴に一番近くに待機していたのが彼であった。彼はエンジンの出力を最低限に落として可能な限り検知されぬように隠ぺいしていたことと、駐車場がまだ殆ど形を残していたために建材やまだ残る廃車のおかげで外に電磁波や熱が漏れにくくなっていたこととが重なったため起動の瞬間までばれることは無かったのだ。

 既に彼は格闘用の兵装を左腕に構えている。今彼のアルグヴァルが握っている鉈状のものは、シェーゲンツァート軍共通のAL用格闘兵装ヘビーハチェットであった。刃渡り三mにも及ぶ鉄の板は、実にシンプルなつくりをしており熱化や高振動用の装置など備えていない、まさに鈍器であった。そう、これは鈍器であって刃物ではない。本物の剣のように鋭く薄く刃を作っても、切る対象が鉄の塊とあっては切ることもできないどころかすぐに刃こぼれしたり折れてしまう。それを防ぐために分厚く刃という刃もないような刃で相手の装甲を叩き割るのだ。それでもやはり、数回の使用が限度ですぐに使えなくなってしまう。

それでも問題なかったのは、AL同士の格闘戦が滅多に発生しないということと、格闘用プログラムが搭載されている機体でもデッドウェイトとなることを嫌うパイロットたちが携行しなかったことがほとんどであったためであろう。

 敵のALが横穴の正面に立ち、そのシルエットがぼんやりと雨天の暗がりに映し出される。五人が息を飲む、そして遂に敵ALがライトを点灯した。その時既にボルトラロールのアルグヴァルは急速起動しており、ライトが付けられる頃には鉈が振られていた。敵のパイロットがライトを点灯して最期に見たものは、迫りくる鉄の刃であった。

 


 金属が破られる音が響く。鉈の刃は見事にALのコックピットが収まる腹部装甲を抉り取っており、ALはライトに光を灯したまま倒れそうになったが、あらかじめ手を出していたボルトラロールが受け止め斃れることによる騒音を出すことを防いだ。見事な彼の腕前に、一同は感嘆の声を上げる。流石に今のを見ると、スライたちも彼には一目置くようになったようで、これ以降前ほど反抗的な態度を見せることは無くなっていった。

「セルジェンダ(※1)か……」

 彼は自分が仕留めたALの名を呟きながら、未だ起動したままのセルジェンダを引き摺って外を進む。現在も識別信号が稼働している状態のため仕留めたことはごまかせてはいたが、その代わりにこのALが生きているように見せかけねばならぬ必要性が出てきてしまったのだ。そのため一か所に留まらせておくわけにもいかず、彼は重そうにセルジェンダを引き摺ったまま向こうへと遠ざかっていった。

 そんな彼を誰も追うことはできない。ここで機体を起動すれば敵に見つかる危険性が増えてしまうのだ。今ボルトラロールが自分の機体の反応を検知されていないのは、仕留めたセルジェンダの信号と重なっているためでそれにより同時に熱も検知されにくくなっていた。

「さてと」

 第三小隊隊長マルーグル中尉が傷のある頬を指で掻いた。このまま待機していてもいずれすぐに一機仕留められたことは敵に気づかれるはずだ。そうならないためには残りの三機のALを速攻で仕留める必要があった。それも敵にこちらの発見を後方に報告されることなく、迅速かつ同時に。そのためには敵が全機でこちらに向かってきてくれなければならないが、そうもうまくいくわけがなかった。彼はコックピットハッチを開けると、各機の元へと走り作戦を伝える。即興の作戦ではあるが、闇雲に飛び出すよりはいくらかマシのはずだ。

 作戦を了解した四機の中ヴァルは、いつでも飛び出せるように銃を構えている。スライも滑降砲を真正面に構えて引き金を引く用意はできていた。

〈ナグム、どうした……故障か?〉

 ようやく異変に気付いた敵は、反応こそあれども通信には答えない僚機に訝しんで、僚機の後を追いかける。動きはあることから撃破されたわけではなく、パイロットであるナグムも気づかぬうちに通信装置が故障したのだろうと踏んでいたのだ。残りの三機のセルジェンダは、一機と二機に分かれてモールの敷地内を進んでいく。不気味なほどの静けさが、彼らの不安を掻き立てる。遂に、その不安は現実のものとなった。

 駐車場を横切る途中で、隊長機の横っ面に無数の銃弾が浴びせられる。それらは皆駐車場内から飛来しており、それらは鉄筋コンクリートの壁を粉砕してなおセルジェンダの左腕と横っ腹を貫いて引き裂いた。目の前で隊長が斃れるのと同時に敵襲だと理解したのと同時に、脆くなった壁を破壊しながら一機の中ヴァルが飛び出してくる。中ヴァルは勢いを落とさずにスラスターを吹かすと高速で体当たり、正面にタックルを食らったセルジェンダは反対側のビルに激突すると動かなくなった。パイロットが気を失ったのだ。そこに、タックルをかました機が至近距離で突撃銃をぶち込んで沈黙させる。これで残り一機だが、それらはモールに隠れた重装型と砲撃型の仕事であった。機体のアラートをチェックしながらジュードルはリンドとヴィレルラルがうまくやることを祈った。

「頼むぜ」

※1 セルジェンダ:GAL/ON04-3 クォーツァイト 全高:14.01m 重量:105.9t 動力炉:バグモアナ小型動力炉

 オースノーツ軍採用のAL、陸海空軍で採用されており陸戦を務める主戦力AL。突き出した胸部の傾斜装甲によって大口径の弾でも弾き飛ばす防御力を持つが、コックピットが若干前の方に位置する欠点を持っていたため改良が為されるものの、3型までは改良されていない。主武装は六十mmアサルトオートキャノン、120mm携行型野砲等。セルジェンダとはキラロル語で「山犬」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ