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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第三章 移りゆく戦局
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傷ついた巨人(4)

 大型のロケット弾頭が、発射筒からシールを突き破って飛び出し白煙をまっすぐ引きながらリンドたちに迫りつつあるAWの集団に向かって高速で突き進んでいく。目にも止まらぬ速度で射出された弾頭は、リンド機の右十m程を通り過ぎた後、重力に惹かれながら敵集団の右翼に着弾した。

 ど真ん中とはいかなかったためその効力を最大限に発揮することは叶わなかったものの、それでも十機以上のAWを大破させ尚周囲の敵兵を焼き払うには十分な威力を見せつけた。何せ対艦での使用も考慮されている代物であるため、AWくらいいとも容易く破壊できるのだ。

 リンドの後方で猛烈な爆発音と巨大な炎の花が咲き、夜のビスクスムを照らした。

「なんちゅう威力だ……」 

 モニタに鮮やかに咲いた花に開いた口が塞がらない。試しにモニタをサーモセンサー表示に変えてみたが、ロケット弾頭の着弾した周囲はサーモセンサーが用をなさないくらいには灼熱であった。

「隊長、早く!今のうちに!」

 ヴィレルラルのレーダーが更なる敵集団を捉えたためスライは二人を急かすが、負傷しているリンドはそうもいかずなかなか速度を上げることができない。そんな情況でリンドを更なる悲劇が襲った。敵の放った対戦車ライフルが重ヴァルの腰部に直撃、内部にある重要な駆動系を破壊してしまったのだ。途端に制御が効かなくなり、膝から崩れ落ちる重ヴァルにリンドはパニックに陥りペダルをやたらめったらに踏みつけるが、内部がやられているため操作が効くわけもなかった。

〈おいどうした!やられたのか!〉

「わ、わかりません!ヘルスモニタが故障してて何がどうなっているのか!攻撃を喰らったらしいんですが!ああクソ!動け動け!!」

 敵が背後から迫っているという恐怖が彼から理性を奪ってしまう。このままでは重ヴァルは動かすことができないため、放棄するしかないかもしれない。いや、もうそうするしかないだろう。そのためキリルムは重ヴァルを捨てることを指示した。

〈もうそいつはダメだ、リンド脱出しろ!回収してやる!〉

キリルムがリンドを回収するためにより機体を接近させようやくアームが届く距離にまで近づいた。

「ぐっ、了解です!」

 リンドは機体の放棄に際し、既定の作業を行うべく左手を動かす。通常両手で行う作業のため片手しか使えないため作業の速度は著しく損なわれるが、やむを得ない。生きているスイッチやボタン、レバーを操作し、簡単な自爆を行わせる。これは周囲を巻き込むほどの自爆ではなく機体の重要な部分やコンピュータを破壊して敵による機体の再利用や情報の流出を防ぐためにある。

 次々と機体や近辺に攻撃が着弾する恐怖におびえながらも震える手でどうにか手順を進めていく。そうして手順の四分の三が終わったところであった。重ヴァルのモニタには映っていなかったが、彼の真横でキリルム機の脚部に重砲の直撃が起きたのだ。流石のALも重砲の直撃を受ければひとたまりもない。

〈うっ〉

 小さな呻きとともに爆発音とノイズが通信機を通して小隊に伝わる。爆風が重ヴァルを揺らしカンカンと何かがぶつかる音が聞こえた。他のモニタに爆発の端が映っていたため、自分の真横で何か激しい爆発が起きていたことはわかっていたが、リンドはそれがキリルムへの直撃弾とは気づいていなかった。

 キリルム機は両脚を破壊され、一瞬中に浮いたかと思うと、まっすぐ地面に落下した。脚部は膝から下が両方ともねじ切られており、リンドを回収して逃げることは不可能となった。それどころか、スライたちがしきりに安否を尋ねるが、何一つとして返っては来なかった。

「何が、何が起きたんですか!!」

 事態がつかめずスライたちに尋ねるが、彼らも慌てており次々とマシンガンのように飛ばされる言葉からは要領を得られない。

「何起きてるんだあ!」

 彼が叫んだ直後、重砲の弾が重ヴァルの背部に直撃した。その衝撃でリンドは一瞬にして気づくことも無く気を失ってしまった。

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