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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第三章 移りゆく戦局
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決死の防衛戦線

「弾が!!ない!!誰か!!」

 リロードしようにも弾がない、モニターが残弾無しの表示をいやというほど主張してきている。突撃銃の予備弾倉は既にラックから姿を消してしばらくだ。残りは片方しか生きていない108㎜対空砲と、機銃位で、その機銃も半分が死んでおりもう半分も残弾数は心もとない。ロケットポッドなどとうに使い切ってしまっている。

「ああ!」

 五十mほど右にいるヴィレルラルのALの正面に敵の野砲の直撃、装甲をひしゃげさせてヴィレルラルは後方に倒れた。

「今度こそ死んじまう!!」

 何故、彼はこのような状況に陥っているのだろうか。それは遡ること三十日前であった……



 海上輸送によってビスクスム民主主義共和国に到着した第四小隊他自由同盟軍の面々は、迫る戦火を抑え込むために南進、国境沿いのテルミルという田舎町にて防御陣地を構築していた。既にビスクスム軍主導によって防衛線は構築されつつあったため、彼らは部隊の配備が主で済んでいた。隣接するのは古くよりビスクスムと対立し戦火を交えてきたコリューション共和国、この国はそもそもオースノーツ連合に加わっていたわけではないが、ビスクスムと戦うためには連合に加わっていた方が支援を受けられ優勢で戦えるだろうと踏み、連合に加わって戦火を広げたのである。つまりオースノーツもシェーゲンツァートも小国同士の野望のために巻き込まれた形となる。

 こうしてビスクスムの防衛に駆り出されたシェーゲンツァート軍およびパリオーサ軍は、テルミル線で敵の進軍を食い止め、反撃に転じるための作戦に従事することとなった。当初同盟軍の兵士たちは、連合の支援があるとはいえ、そう大きな戦闘にはならないだろうと楽観視していた。しかし、その油断が彼らを窮地に追いやることとなったのだ。

 油断はしつつも深く強固に防衛線を築いた同盟軍は、攻撃を仕掛けてきたコリューションを主軸にした連合軍を確実に受け止めていた。しばらくはこちらが優位に防御していたものの、十五日を過ぎたあたりから、形勢は変わり始めていた。敵の想定よりも激しい肉薄攻撃によって後方からの補給線が削られ始めたために、防御陣地の火力や交代要員が不足しはじめ徐々に戦線を維持できなくなっていたのだ。

 敵は大国オースノーツの支援がある上に、兼ねてより戦争の準備をしていたコリューション側。対してこちらは初め中立を掲げていたためにビスクスムの軍備が遅れていたことが原因で、基礎からあちらよりも弱いのだ。その上シェーゲンツァート軍上層部の采配のミスがある。空挺部隊とは奇襲攻撃を得意とする部隊であるが、今回彼ら空挺部隊が駆り出されたのは根っからの防衛戦である。不得意な分野での戦闘が彼らの才能を殺してしまっていたのだ。故に第四小隊をはじめとしたいくつかの空挺部隊は、ぎこちない防御戦法を取らざるを得なくなり、前線に綻びが生じ始めていたのである。

  


 三十日経ってもいまだに第四小隊に隊員に欠員がいないのは流石といったところであるが、さしものタフな彼らでも、疲労の色が濃くなっていた。集中力の欠如と体力の消耗により撃ち漏らしが多くなっていることに苛立つこともあった。このままでは疲労で倒れるが先か、敵弾に斃れるが先か、といったところである。そして今、三十一日目にして敵の一大攻勢が始まったのだ。あらゆるところで前線が破られ、リンドたちの控えるEラインに敵がなだれ込んでいた。何故彼らが後方に回っていたのかというと、これもまた上層部の失敗と、現場の総指揮を受け持っていたビスクスム軍のAL空挺部隊という特殊な部隊の運用の仕方がわからなかったためと、同国において非常に貴重な戦力である人型装甲兵器を出し惜しみしてしまったためであった。

 こうして間違った運用をされた空挺部隊は、慣れない防衛戦によって酷い命の危険にさらされていたのであった。現在、彼らの守るEライン第三ブロックでは、目前どころか既に後方にも敵が周りはじめ、第四小隊含むおよそ三百名が孤立し始めていた。左翼の第二ブロックは三日前に敵の手に落ちている。右翼の第四ブロックも落ちるのは時間の問題であった。このままでは包囲殲滅されてしまうだろう。それを防ぐために防衛線の後退を進言したキリルム中尉であったが、錯乱した司令官グルザーメス大将によって空しく却下されてしまい、下がることもできずにいたのであった。いつしかAL用の弾薬も尽き始め、整備もままならない状態で運用をしなければならなくなっていた。

 キリルム機は左腕を破壊されて四日経っているが、修復のめどは立たない。スライ機は脚部の前面装甲がほぼなくなりフレームをむき出しにさせている。頭部もカメラに不具合が生じ、常に左モニターが死んでいる。ジュードル機はジェネレータが破損し、出力が半分以下に低下、装甲もかなり破壊されており隊の中では一番損傷が激しい。ヴィレルラル機は機能に異常はないものの、100㎜砲の弾が無く右腕の指が全損、右ひざもオーバーホールが必要と来ている。そしてリンドの重ヴァルは前述の通りであり、また装甲も激しく被弾しているのが現状だ。既に満身創痍であった。このままでは全滅すると考えたキリルムはある決断をした。

〈後退するぞ〉

 彼のその発言は隊の者を驚かせた。命令は死守である、にもかかわらず後退をするのはとどのつまり命令違反である。軍において命令違反は重罪であり、現在の状況を鑑みるに、後退すれば敵前逃亡とみなされてもおかしくはない。とりわけ現地司令官をみるとなおのことである。それでも後退を決意した彼に、隊員たちはその心配と同時に、感激していたのが本音である。

〈俺たちだけ、すか?〉

 ジュードルの問いに、キリルムは否定から入る。

〈ブロック全体を後退させる。まず戦車隊に物資と人員を乗せて下がらせる。次に歩ける生身の人間だ。俺たちは最後だ、最後に皆の盾になって後退する〉

〈うっす〉

〈ラジャ〉

「は、はい!」

 不満など誰も抱いていない、自分たちが殿になることくらいわかっていたし、なによりキリルムのことを信頼していたからだ。彼に従えば生き残れる、そう信じていた。

〈責任は全て俺がとる、上のアホどもには絶対に漏らすなよ、他の奴らにも強く言っておけ〉

「隊長……」

 キリルムの頭には既におおまかな作戦は構築してある。あとはこれを各隊の隊長に伝え細かな作戦を立てるだけである。彼は夜、隊長格を集めると自らの作戦を提案した。はじめは形では承諾しようとしていなかった彼らも、今の命令に不満を一様に抱いていたために反論という反論もなく了承された。そして作戦の決行は翌二十二時である。

 

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