表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
39/382

シュート・スラッグ

 破壊された路地を回り込み、チューリングとフィップは路地裏にある穴に飛び込んだ。そこは単なる穴ではなく、元々地下室があったらしい建物の根元が戦闘で破壊された結果直接外から地下室に通じる穴が生じたようである。最初にまだ動けないビットーを放り込むと、続いてフィップが先に落としたビットーを踏まないように気を付けて入り込んだ。それを確認すると、チューリングも周囲に誰もいないことを確認し静かに飛び込んだ。

「隊長」

 AAのヘッドハッチ※1を開けて半分顔をのぞかせたフィップが呻いているビットーを揺り動かすと、少しずつ意識がはっきりとしてきたのか、まだ定まってはいないものの目で二人の位置を確認している。

「ふう……無事ですかね」

 そこら辺にあった何年物かもわからない埃を被ったシャツで、彼の顔を染めている赤い血を拭う。まだ微妙に固まっていない血は、当人の顔にそこそここびりついたままだが拭っていないよりはましなはずである。

「ああ、クソ……」

 悪態をつくビットー。

「どうしました」

 シャツをそこらへんに捨てると、のそのそと体を動かしてビットーの方を見る。彼は若干ニヤリとして

「ターンビーチで妻とバカンスしてると思ったのに……ハッ……頭がまだふわーっとしてらあ」

「どうやらかなり重傷みたいだぞ」

 と、チューリングはフィップに向かって頭がおかしいというジェスチャーを示した。

「他の部隊は大丈夫でしょうか」

 他の二人も気になっていたことを、フィップが呟く。ビットーはハッチを閉じてモニターを起動すると、味方と自身の現在地を確認した。最初の交差点からはおよそ100mは離れただろうか。三人がいる場所から最も近くにいるのは二班で全機無事なようだ、いや訂正、三機になった。違う、二機……そしていなくなった。

「クソ……」

〈二班もやられましたか……〉

 外を警戒しながらチューリングが吐き捨てる。位置は最初の地点から殆ど離れていない。退路をふさがれるか何かして動けなくなったところを集中砲火といったところか。そろそろ動かねば、とゆっくりと体を助けられながら起こす。スタビライザーサーボに少し異音があるものの、これくらいで止まるAAではない。三人は今度は入ったところからではなく階段を上がり中から出ることにした。ビットーが隙間から光のこぼれる扉に手をかけると、ノブを握る前に扉は音を立てて倒れた。

「はあ……」

 家の地表部分は既に無く、入り口のドアとその周囲のコンクリートだけが瓦礫の中に唯一立っていたようだ。チューリングが外から確認したときはきちんと家が建っているように見えたのは、そちら側だけの壁がいくらか残っていたためのようだ。

「行くぞ、ついてこい」

 まだよろめく足を、AAがオートで修正し瓦礫を踏み潰していく。

〈こちら四班!敵戦車一両撃破!〉

 不意に思わぬ朗報が通信機を介して飛び込んできた。

「何?本当か!」

 喜びを隠せないビットーは思わず聞き返す。しかし結果は同じであちらも嬉しそうに、だが逼迫したような声を上げている。彼は通信機の向こうで報告をしてきた隊員の激しい息遣いと絶え間ない銃声に気づいていた。恐らく逃走中なのだろう。

「クラメンス、合流するぞ!今行く!」

 幸い、四班の位置はそれほど離れておらず、北上する一班に対して四班は西に向かっていた。これならば少し戻って東進すればすぐに合流できるはずだ。ビットーは二人に合図すると来た道を引き返し、四班の反応がある方角へと向かう。

〈第五小隊、敵らしき装甲車二両と兵士およそ四十を確認。どうします〉

 第五小隊は六小隊と共にサッキビルでATRを展開しているはずだ。数は十六人いる、それなら十分に対応できるだろう。

「退路をふさがれないように気を付けてかかれ」

〈ハッ!〉

 通信が閉じられると、二つの小隊の展開地点で戦闘が始められた。遠くで鳴る銃声をAAの収音マイクが微量に拾う。

〈こちら機動部隊、指定地点に到着〉

 ようやく、機動部隊がD6ポイントに到着したようだ。しかしもう援護可能な範囲に味方はいない。ビットーは更に移動を命じると、足を止めた。

「デッジ、そっちはどうだ」

 デッジと分かれたのは随分前に感じる。

〈ああ隊長、こちらは今のところ犬一匹通りはしませんね。そっちはお祭り騒ぎのようで〉

「まあな。追って待機」

 デッジの冗談を軽くいなすと、残りの部隊の位置を確認する。第二小隊に動きは無い。第七も同じく、しかし第八、九小隊は何故か反応が皆消失している。何の報告もなしに十六機のAAが消えるはずがない。そちらは直進した可能性のある敵とは正反対の位置にある。通信でコンタクトを試みるが雑音があるのみで遮断されている。敵はEMP兵器でも使ったのかそれとも識別装置があの時イカレたのか。兎に角悪いことが起きてないことを祈る。

「行け」

 三人は適当な身を隠せる場所に分かれると、四班を待ち受けた。ほどなくして四機のAAが視界に入ると同時に彼らを狙っている流れ弾が近くに着弾し始めた。

※1 AAにはいくつかのタイプがあり、ボディと頭部が一体化したタイプや胸、腰、四肢、頭とそれぞれが独立したタイプの二つに大きく分けられる。トリオンは一体型で顔の上半分辺りに跳ね上げるハッチがある。


パルコーム:セルジュア共和国を挟んで向かいにあるヴァルチャーカイ=サルモンタス王国の主力戦車。武装は八十mm砲。重装甲ながらも航続距離に優れた中戦車で、劇中のように対戦車砲に耐えうるほどの装甲を持ってはいるものの、構造上の欠陥がありハッチが薄い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ