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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第九章 帝国
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鋼鉄の兵士達(3)

「うおおおーーっ!!クソ共が!!みーんなまとめてえっ!皆殺しだあ!!捕虜なんざとるかよ!!」

 心からの雄叫びに、リンドの喉ははちきれんばかりに膨らみ、その雄叫びと合わせて彼は一斉射撃を行う。右から左へ、ガトリングシステムのみではあるが敵軍を薙ぎ払う。防御態勢が整っていようがいまいが、無数の小型徹甲榴弾をばら撒いて地表を廃墟にしてしまうガトリングシステムの前では、屈んでいようが盾を構えていようが、無意味に他ならない。

 一瞬のうちに五千人近い兵士の命が木端微塵に吹き飛び、そのほとんどがドッグタグすら残せない。歩兵連隊が丁度射線上に入ったのでそれだけの殺傷が一瞬で行われた。いつもならばそれで敵兵力は一掃出来ていただろう。だが今回の敵は一味違った。

 この攻撃で完全にレットルーレ線を落とす予定だった連合軍は、その奥にも攻撃部隊を配置していたのだ。彼らの中にはガトリングの流れ弾に飲まれ損害を被った者もいたが、ほぼほぼ無事であったために彼らの反撃が飛んでくる。

 雨霰と降り注ぐ敵弾に、次々と突撃している味方が倒れていく。

「クソッ!ガトリングは冷却中だってんだぞ!」

 必殺のガトリングも、砲身が冷却できていなければ無用の長物。手に持った突撃銃と左腕のバトルライフル、それとわずかなロケット弾しかない。彼はそのなけなしのロケット弾を七発中四発撃って敵の重装甲タンク型ALの腹部を爆破し炎上させると、その後方にいるもう一機のタンクに向かって残りの三発を撃ち込む。

 内二発が命中したが、重装甲ゆえに撃破まではいかず、逆に反撃を受けてしまう。近距離で主砲の直撃を受けたリンド機は、左肩に命中し、バトルライフルを腕ごともぎ取られてしまう。すわ万事休すかと思われたが、そこに後方から飛んできた援護射撃がタンク型の主砲に命中し、損傷を与え発射不能にした。

「コイリか!」

〈任せてください!〉

 モニタの中のコイリは、破顔して敬礼すると、援護射撃に戻る。更にそこにフーフラーファが援護射撃を行って行動不能なレベルにまで破壊する。完全に撃破できたわけではないようだが、動けず撃てずという状態ならばそれで十分だ。

「次!」

 リンドは再びペダルを踏みこんで走り出す。敵は皆逃げ腰だが、たまに異常者が出てくる。なんとメイスを振り上げ銃を撃ちながら突っ込んできたALがいるのだ。

「何だアイツ!」

 撃てばいいものをわざわざ八百mはある距離を単騎で突っ込んでくるのだから、よく目立つ。格闘プログラムもインストールしていない機体で、そんなものに馬鹿正直に相手してやる必要は無い。リンドが手を下すまでもなく、他所の部隊の戦車が突撃しながらの砲撃で頭部の根元ごと吹っ飛ばして撃破してしまった。転倒した勢いでマニピュレータから離れてすっ飛んでいき地面に刺さったメイスが空しい。

〈隊長!敵が揃い始めました!〉

「もうかよ!」

 フーフラーファの言う通り、突撃に狼狽えてばらけていた敵の第一波は、少しずつ落ち着きを取り戻して揃い始めている。揃いきる前にガトリングでまた散らしてやりたいが、もう少し冷却が必要だ。しかしこのままでは囲まれて十字砲火を浴びる恐れがある。だが今彼の使える火器は右手の突撃銃のみ、それでどうにか出来る手持ちではない。フーフラーファ曹長も変わらない。

 焦っていたところに、後方からホバリングで突っ込んできた味方ALがリンド達の五百mほど左からそのまま彼らをパスしていった。

〈今の!爆装!〉

「えっ!?」

 フーフラーファがその機体の異変に気付き、リンドがもう一度その機体に注目したのも束の間、全身に銃弾を浴びながらも敵陣に突入したその味方機は大爆発を起こした。

「自爆攻撃!」

 幸いにして融合炉の誘爆はしなかったので巻き込まれることは無かったものの、相当量の爆弾を全身に積んでいたのだろう、その爆風でリンド機やフーフラーファ機も転倒し、爆心地は深さ十m直径百二十mがクレーターと化した。

「覚悟決まってんな……!」

〈ええ……〉

 顔も名前も知らないが、それほどの覚悟と勇猛さを持った同胞に敬意を表し、コックピットの中で敬礼しつつ、機体を立ちあがらせる。立ち上がりながらも彼は突撃銃で二騎のAAを粉砕すると、爆風で飛ばされたらしいひっくり返った敵の装甲車を踏みつぶす。

〈隊長!右前方に敵車両!〉

 コイリの声に、右前方地面を見下ろすと、装輪車両が主砲をリンドに向けていたので、突撃銃を発射、敵主砲とすれ違いで装甲車は爆発、リンド機は空のロケットポッドに被弾しポッドが基部からねじ切られて地面に落ちた。

(外れと命で交換か!ご苦労さんな!)

 死者を鼻で笑いつつ、そろそろ冷却がある程度済んだであろうガトリングの温度計に目をやると、二秒程度なら発射できる温度にまで下がっていたので、腰を落として反動に備えると、ガトリングのレバーを引く。敵弾が飛んでくる中での発射だが、あまりにも一方的だった。

「よし!行ける!」

 第二波も蹴散らし前進しようと、フーフラーファと並んで走り始めたところで、一発の砲弾がフーフラーファ機の頭部をもぎ取った。

〈うおおっ!!?〉

 コックピットにけたたましく鳴り響くアラート、至る所が停止する機体そして酷くノイズの走るモニタに、彼はすぐにモニタを復旧しようとサブカメラに切り替えようとするが、マズいことに彼は足を止めてしまった。次々と砲撃が彼の機体に飛び込んでいく。

「曹長ーっ!」

 すかさずリンドがその間に割って入り盾となるが、遅かった。全身を撃ち抜かれた彼の機体は最早動くこと叶わず、その場に崩れ落ちてしまう。

〈た、い……長、すみ、ま〉

 そこで言葉は途切れた。

〈曹長!隊長!曹長はどうなさったんですか!〉

「やられた!撃て!撃て!コイリ!」

〈えっ、あっはい!〉

 遠くから狙撃をしながらも、発砲音の間に曹長、と言葉を零す彼の声が聞こえた。リンドはフーフラーファともし自分が死んだ時はお互いに故郷の家族に手紙を渡してほしいと伝えあったことを思い出し、涙を滲ませる。

「曹長がいたから俺はここまでっ、くっ……」

 年長者の彼が副隊長として皆をまとめ経験の少ない年若いリンドに助言やアシストをしてくれたからこそ、彼は上手くここまで隊長としてやってこれた。そんな存在がいなくなってしまったという現実が、彼を苦しめる。

 動きの鈍くなったリンド機に、命中弾が増える。増加装甲が次々と剥ぎ取られていく。衝撃で機体が常に揺さぶられ続け、火花が散り、どこかの配管が千切れる。この機体ももう長くはもたないことは、パイロットとしての勘でわかる。そもそもここまでもっていること自体が不思議なくらいだった。

「畜生があああーーっ!!」

 彼は溜まった鬱憤を全て込めて吐き出すかのように、もう一度ガトリングシステムを斉射する。冷却の済んでいない銃身が空転し、焼け石に水程度の予冷却を行ったうえで、薙ぎ払われた。この時の斉射は、銃身の焼き付きをとうに起こしているはずの時間を過ぎても銃弾が発射され、更に千八百強の連合軍兵士がシェーゲンツァートの土に還る。

 正確な時間は分からないが、ほぼほぼ弾丸を撃ち尽くすほど撃ったガトリングの砲身は焼け付き、真っ赤に燃えていた。これでもうリンド機には突撃銃しか残されていない。それを彼は弾倉の交換をすると、ゆっくりと進みながら起き上がろうとしていた敵AWに撃ち込んで撃破する。飛び散ったAWとパイロットの死体が地面に刺さる。

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