ささやかな花火
最近この小説がやけにランキングに載っていますが何故でしょうか。もう八年前からだらだらやってるだけの、お姫様も派手にビームぶっ放して飛び回る主人公機も空飛ぶ戦艦もいない、かといってしっかり調べたわけでもない想像で書いた珍妙なミリタリー要素満載の地味な話なのに不思議なものです。なぜかこの前書きを書いている今日(20250907)は日間アクションジャンルランキング一桁にまでなっていました。
嬉しいものですが、それよりも困惑という気持ちが大きいです。読んでくださる皆さんのお陰です。
リッカーゲンサル隊を蹂躙したヴィエイナの隊では、隊長であるヴィエイナが怒りをあらわに地上の敵を蹴散らし続ける。
「ジェリク!」
ジェリク曹長の名を叫んだのは、先ほどリッカーゲンサル機によって撃破されたのが彼の機だったためだ。彼はらしくもない油断と傲慢さをここにきて初めて見せたが、それが最初で最後の彼のエゴであった。
恐らくだが、数年戦い続け諸悪の根源(※1)であるシェーゲンツァート帝国にも最後の時が迫っていることで、ようやく戦争に一区切りつけられると安心してしまったのだろう。
あろうことか彼は飛行型ALの有利な点である飛行能力を捨て地上まで降り、敵陣ど真ん中で停止して銃撃しようとしたのだ。故に、撃破したはずの敵機が再起動し、彼を背中から撃った。断末魔すらなく地上に堕ちた彼を、ヴィエイナは惜しむ気持ちよりは恥じる気持ちの方が大きかったが、それでもやはり、この戦争の間ずっと連れ添って来た部下を失った悲しみと怒りを捨てることは出来なかった。
苛立ち紛れに荒々しく銃を撃つが、そのやたらめったらな銃撃でさえも地上の敵を撃ち抜いていく(ただしチューフによる射撃照準の補正が入っている)。
〈大尉、落ち着いて〉
メイネーイ少尉がヴィエイナを諫めると、彼女は思いのほかすぐに冷静さを取り戻し、詫びの言葉を述べる。
「ごめん……つい……らしくないな。各機引き続き地上の敵を掃討」
ここで突然彼女の言葉が切れたかと思うとそれとほぼ同時に彼女のリジェースは、有人機とは思えぬ軌道を取って直後に彼女のいた場所を貫いた無数の弾丸の帯が、ザーレ中尉機の両足を撃ち抜いた。
〈きゃあああっ!!〉
彼女の悲鳴が小隊全機に響き渡り、バランスを崩した彼女の機体はもがれた両脚のあった場所からオイルを噴き出しながら地上へと墜ちていった。
「ザーレ!」
ヴィエイナは彼女がそのまま墜落死するかと危惧するが、彼女の機体は墜落しながらも姿勢制御を行い、レットルーレ線の正面外、つまり味方の陣地へと墜落していき、安定していたとは言えなかったものの比較的安全に地上に激突した。足が失われているため着地は出来なかったものの、二転する程度で済んだため、機体は完全に大破したが中の彼女は軽い鞭打ちで済んだ。
〈あだだ……大丈夫です大尉。私は無事です火事も発生してません。地上が空に来てますが〉
完全に天地がひっくり返っている状態であるため、腕と脚が宙ぶらりんになっている彼女は小粋なジョークを飛ばすことで、ヴィエイナを安心させようと試みる。彼女の試み通り、通信機越しに僅かながらも小さくフフッと鼻息が聞こえて来た。
「了解、近くの地上部隊が近づいてる。攻撃はしないように」
〈ハイ!〉
さて、大事な部下をもう一人失いかけた、その主が誰かはもう既に先ほどの攻撃の種類でわかっている。あの光線のような局所的銃弾のゲリラ豪雨を放てるのは、この戦場ではただ一つ。そう、重装型リヴェンツ以外にはいない。
ヴィエイナは弾の飛んできた方向を睨みつけると、その視線の先にいたのは確かに重装型リヴェンツことレーアルツァスであった。ガトリングは片方だけになり、登録されているデータとはかなり見た目の異なった現地改修仕様と化してはいるものの、機体の発する周波数や識別信号などからレーアルツァスであると判別できた。
「各機、重装リヴェンツのいる箇所に攻撃を仕掛ける!あそこを破ればここは落ちる!」
〈了解!〉
〈了解です〉
ヴィエイナ機を先頭に、メイネーイ少尉とカニータ准尉が続き、リンドの率いる第一小隊の守る地点へと向かう。ヴィエイナは低空飛行をし他二機は高度を取って上空から仕掛ける。ただし、リヴェンツには手を出さない、それはヴィエイナの獲物であることを理解しているからだ。
距離にしておよそ二千mは離れているが、空を飛ぶ者にとってはそんな距離は玄関先の様なもので、ほんの一瞬でたどり着いてしまう。白い鳥へとリンドが攻撃した時点で彼の部隊は対空戦闘を主眼とした円陣形へと移行しており、中心に最も対空能力を残しているリンド機、その周囲に部下たちを展開していた。
「各機全力で敵飛行部隊に対処しろ!前回と同じだとにかく撃て!小細工が通じる相手じゃない!」
技量も性能も機体状況も、全てがリンドよりヴィエイナの方が優位に立っていた。ただ一つ勝っているとすれば、八対一という数の優位だが、その程度の数はヴィエイナ一人で全て覆してお釣りがくるため、大して意味がない。
「盾を持っているものはとにかくコックピットを庇え!ないものは何でもいいから防御できるものを持てえ!」
彼の指示に、両腕がまだ残っている機体は利き腕じゃない方のマニピュレータに盾の残骸や防御壁だった大きな鉄筋コンクリート塀を持ち、自らを守る最後の盾であり殻であるコックピットを守ろうと試みる。
カニータとメイネーイが上空から銃撃を浴びせて、ヴィエイナの突撃を助ける。ある程度の距離があるため、あまり直接的な有効打とはならないものの、それでも目標を怯ませ動きを制限することが出来る。ドゥーリッポ上等兵の機体が被弾した際、盾を構えていた右腕の付け根が損傷、盾の重さに耐えきれなくなりオイルを噴き出しながら肩軸がへし折れてしまう。
そこにメイネーイが放った翼下懸架のロケット弾が直撃、ドゥーリッポ機は機体上部を炎上させながら転倒する。コックピット内には警報が鳴り響き、非常灯が点灯している。すぐに脱出するようにと血が迸ったモニタに危険表示が表示されるものの、ドゥーリッポは動かない。
リンド達は倒れた味方機を救出したいものの、そんなことをしている余裕は一切なかった。白い鳥を相手取っている時は、瞬きすら命取りになる。そんな状況下で味方の安否確認など到底。
ささやかで弱々しい弾幕が上方とほぼ水平に近い角度に撃ち上げられる。ただし、水平に向かって撃っているのは中央のリンド機だけで、残りは皆彼の邪魔にならないように上空の二機に対応しているためだ。
フーフラーファ曹長の機が更に被弾し、右脚部油圧装置の損傷と膝メインシリンダの折損を被ったことで、その場にガクンと倒れ込むが、ギリギリで右足を滑らせて前に出したことで転倒を免れ、膝立ちで銃撃を続ける。
しかし先に機体よりも銃身が焼き付いて使えなくなってしまった。
〈誰か!銃を寄越せ!〉
上空を白い鳥がパスする中、彼が叫ぶとピュループ上等兵が短銃身に切り詰められた突撃銃を投げ渡す。
〈よし!〉
彼は銃を受け取ると、膝立ちのまま今度は地上から接近しつつある敵装甲車に向かって使えなくなった方の銃を投げつけると、装甲車のフロントを潰してそのまま持っていきひっくり返す。
※1 諸悪の根源:オースノーツでは世界統一に対し真っ先に反抗し自由権利同盟を立ち上げ陣営の盟主となり、最もシェーゲンツァートがオースノーツに打撃を与えていることから、民間、学校、軍人への教育として、この世の平和を乱し戦乱の世にしているのはシェーゲンツァートであると徹底的に教育している。その為、シェーゲンツァート軍の軍人への捕虜虐待や拷問、殺害が自由同盟所属の捕虜の中でも最も多い。




