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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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Armed Armor(2)

〈こちらデッジ、ケッセルデパート確保〉

〈第二小隊、目標地点に到着〉

「了解、追って指示を待て」

 三つの小隊が指示した場所に到着し展開したようだ。続いてビットー率いる第一、十小隊も展開予定地であるビルバン交差点に到着し、四つに分かれて交差点を囲むように周囲のビルに潜り込んだ。これで四方から交差点に進入してきた敵部隊をハチの巣にすることができる。

 それから二分程で残りの部隊も到着したようだ。この高速展開を可能にしているのもAAのおかげである。

 窓の隅から通りを覗き込んでいる彼の背後では、対戦車砲の組み立てが行われていた。この百ミリ対戦車砲は、持ち運び可能なサイズにするために簡略化と砲身を短く切り詰めることで小型軽量化されている。そうすることにより二機のAAがあれば弾薬を除いて運べる程になったが、短砲身の分初速がなく貫徹力や射程に劣ってしまう。その分を彼らAA装着者たちはAAの装甲に身を委ね、相手の近くまで詰め寄り砲撃するのだ。組み立てが完了した対戦車砲は窓の外に向けられ、運搬要員が運んできた弾薬が装填される。この砲を運ぶのに三機のAAが必要である、撃つのには二人。砲術長は砲主のAAのコンピュータが測距や最適な着弾点を計測するため必要がない。その間もう一人は銃を手に取り戦うのである。

〈敵戦車隊間もなくE1-7地点を通過します……〉

 ゴイが敵の現在地を伝える。つまり角を曲がって視界に入る直前ということだ。それ、

「見えた」

 百m先の角から三人の歩兵が現れこちらに向かって右折する。それに続いて戦車と随伴歩兵が次々と現れた。

〈あっ!〉

 隊員の一人が声を上げた。

「AAか?」

 嫌な予感が的中した。敵は戦車と歩兵に加えAAも持ち出してきたようだ。AA対AAはあまり好ましくはない。何故ならあまりAA対AAの戦闘がおこることはなくそのためビットー中隊の面々の殆どがAAとの実践を経験したことがなかったのである。

(戦力差があまりに大きいな。こちらの方が数が上回るとはいえ……)

 不幸中の幸いか、敵のAAはごく少数のようだがやはり数の差と戦車の存在が大きい。恐らく敵の歩兵は一個中隊およそ二百名規模だろう。徒歩のほかに戦車に跨乗しているものも多数いるようだ。それにこちらに曲がってきたものだけが全てとも限らない。既に分かれて行動している可能性もある。歩兵自体は距離があれば攻撃は効かないが無視はできないため厄介である。

「ビットーだ、機動隊はD6ポイントに移動して呼んだらすぐ援護できるように待機していてくれ」

 一旦は退避させた歩兵と装甲車に移動を命じ支援攻撃ができるように備えておく。AAと歩兵の相手なら出来るはずだ。

「とにかく、俺たちの任務は敵AA及び戦車の無力化にある。それが第一の目標だ、いいな?」

 そう呼びかけると野太い声で部下たちからの勇ましい返事が返ってき、頼もしく感じた彼は思わず笑みを浮かべた。兵士たちが戦意を喪失しない限り戦える。

 三両目の戦車が角を曲がり、一両目の戦車が既に交差点の目と鼻の先に差し掛かっていた。通りは狭く、戦車が二両通るのは若干厳しい。攻撃の危険性を考えてここは相手は通るべきではなかったが、通らざるを得なかった理由があった。それは他の通りはさらに狭いか、戦車も乗り越えられないほどの砲撃で穿たれた大穴が邪魔をしているか、はたまた崩れたビルの残骸が邪魔しているか、そしてまたは地雷が設置されているためなどといった理由であった。長い間激戦にさらされてきたためにさしものスラッグも形をとどめてはいられなくなったのである。

「目標最後尾パルコーム、用意…………撃て!」

 彼の合図と同時に三門の対戦車砲から放たれた徹甲弾は最後尾にいるパルコーム中戦車に向かって真っすぐ飛んだ。兵士の肉の壁はまったくもって意味をなさずに四散すると徹甲弾は戦車の正面装甲に二発、命中した。一発は防盾に阻まれ抉るに過ぎなかったが、もう一本が操縦手の正面の覗き穴になっている比較的薄い装甲を突き破り内部から破壊した。爆発こそしなかったものの乗員は全員殺傷され完全にスタックしてしまったようだ。

「よし、次弾装填急げ!四班撃て!」

 残りの一門を持つ四班が、一両目を見下ろすように砲口を下に向けると、発射する。激しい反動が生じるも、AAのパワーで抑えきり砲弾は薄い戦車の上部装甲をぶち破ってエンジンを破壊した。黒煙を上げるパルコ―ムだが、乗員まではやれていなかったようだ。砲塔がゆっくりと旋回すると、三班が隠れている一角に砲撃した。コンクリートと鉄筋が吹き飛び崩れた壁から黒煙が噴き出す。それとほぼ同時に一機のAAがビルから転落してくのが見えた。

「三班!無事か!」

 必死に呼びかけるが返事はない。四機全員がやられたのかと恐れたが、黒煙の中から敵に向かってマシンガンの反撃が飛んでいるのを見て安堵した。が、その数が少ない。先ほど一人転落したのを覗いても残り三機、だが反撃しているのは射撃の量からして一機。つまり残り二機は動けない状況にあるということか。

 いくらAAとはいえ戦車の砲撃を防げるほどの装甲はない。ましてやこの距離で。

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