表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第九章 帝国
369/382

撃ち込まれる鉄杭(2)

コロナに感染したためお休みしていました。

まだ調子が戻っていないため今回はちょっと短めになります。

 シェーゲンツァート陸軍第四師団所属の第二AL大隊所属、リッカーゲンサル隊という混成部隊は良く奮闘していた。

 元々AL三個小隊と機械化歩兵小隊、AW二個小隊で構成されていたこの隊は、年若い経験も少ない者達で主に構成されていた第一小隊とは異なり、過半数が成人した半年から一年以上の軍歴を持つ兵士で構成されている部隊で、その為死傷率も他部隊と比べると少なく、その死者も練度の浅い兵士が起こしやすい死因よりは純粋な戦死などの割合が主だった。

 そんな彼らももうAL残り五機、車両は全て失われ歩兵十名、AW三機と壊滅状態に陥っていた。しかしながら、彼らは経験のお陰でそのような壊滅的状況にあっても、単純なミスも少なく戦い続けられている。

「ボーレン!一時方向に戦車!R45-4二輌!」

 ルスフェイラ最終生産型という、ルスフェイラというモデルとしては完成した高性能なALに乗るリッカーゲンサル大尉が、部下であり三番機であるボーレン兵長に向かって注意を促す。同じくルスフェイラ(最終生産型ではない)の左腕を喪失したカスタム機に乗るボーレン兵長は、突撃銃のマガジンを交換しながら指示された方角を見ると、隊長の言う通り連合国製のR45戦車というMBTの4型が二輌、彼へと近づいており、一輌が前進するのをもう一輌が停止して相互援助を行いながら前進しているようだった。

 120mmライフル砲から発射された砲弾が、ボーレン機に向かって飛翔するが、それを予め構えていた左足に固定している大盾で受け止める。砲弾を弾くことを試みたものの、ただの分厚い鉄板でしかなく傾斜装甲や爆発反応装甲を増設しているわけでもないため、そのまま砲弾は突き刺さり爆発、盾の上から四分の一程度が爆発によって裂けてしまい、千切れた巨大な断片が地表に落着し、大きな空薬莢の山に落ちた。

 はずみで跳ね上げられたALスケールの空薬莢は、空薬莢ながらもサイズは榴弾砲のものと殆ど変わらず、人を殺傷するに余りある重量を有しているため、近くにいた守備隊の兵士は危うく潰されかける。

  わざとではないとわかっているものの、やり場のない怒りというのは当の本人には持て余すもので、ボーレン機に向かって拳を振り上げ短く罵声を浴びせるが、ボーレンはそれを聞きもしなければ見もせずに戦闘に集中していた。

〈まるでメッザザ(※1)漁だぜ〉

 吹き飛ばせども吹き飛ばせども変わらず波となって押し寄せる敵部隊を見て、ボーレンはそう物の例えにする。

〈似てらぁ〉

 五番機のフトゥルトゥーイル伍長は、父と共に漁に出た子供の頃によく見た光景を思い出し、せせら笑った。その父も半年前に漁に出ている最中に、連合軍の航空機によって船ごと海に沈められて帰らぬ人となった。それを思い出したフトゥルトゥーイルは、苛立ってバックパックから伸びる迫撃砲を発射し、R45戦車の片割れのすぐ横に着弾、ひっくり返る。ひっくり返った戦車はその重量の為、ALでも起こすのは難しい。軽戦車やAPCならともかく、R45というMBTは現用戦車の中でも重い部類に入るため、まず無事に持ち上げるのは難しいだろう。無理に持ち上げればマニピュレータの破損を招くか、戦車が損傷を被るはずだ。

 そのためとりあえず無力化には成功していると判断し、彼は別の目標へと移行する。

「いいぞ、ん?」

 リッカーゲンサルは部下を誉める最中、視界の端に気になる光を見てそちらを拡大する。遠くに映っていたのは重装型の何らかの機種らしき味方ALが、ガトリングをぶっ放して次々と敵を薙ぎ払っていく様子だった。

「はっ!まーだ重装型が残ってたのか。重装乗りにしちゃあ長生きなもんだな」

〈え?ああほんとだ。もう絶滅したもんだと……どこの部隊ですかね〉

〈整備部が仕上げたなんちゃって重装型じゃねえっすか?ハハハ!〉

「かもしれねえな、あいつらは真っ先に狙われちまう」

 彼らはまさかその重装型ALが純粋な重装型の生き残りであるなどとは思っていない、それほどに重装型乗りの死傷率は高かった。故にこの部隊にはもう一年以上重装型を配備していない。いくら強力な火力を得られるとしても、真っ先に部下を死にに行かせるような真似はしたくなかったからだ。

 実は、現在本土決戦において戦闘継続中の重装型は彼の機しかおらず、後は首都決戦に備えて温存されている機体しか残っていなかった。誰もそんなことを知らずに、戦場は変わり続ける。

 九番機ルーク上等兵機が、頭部に戦車砲の直撃を受け仰向けに倒れる。泥が高々と舞い上げられ、下にいる兵士達に大量の泥をひっかぶせる。

「ルーク!無事か!」

〈ごほっ、大丈夫です。消火装置も働いてる……ですがかなりの情報が制限されました。リンクを〉

「ベンブル、ルークに情報リンクを」

〈了解〉

 六番機ベンブル上等兵が自機の得ている情報を全てルーク機にも渡るようにつなげる。すると頭部を失ったことで得られるはずの情報の半分を失っていた彼の機にも、頭部がある時とメインカメラ映像以外の各種情報が提供される。

「サブは生きてるか」

〈ハイ、映像は映ってます〉

「よーし援護する。起き上がれ」

〈助かります〉

 ルーク上等兵は、機体のスラスターをゆっくりとふかしながら、上半身を起こす。

※1 メッザザ:夏にシェーゲンツァート西岸辺りでよく獲れる体長10cmほどの小魚で、淡白な味が特徴。骨も細く柔らかいため、フライにして食べられることが多い。近年長年の大量漁獲によって数が減ってきている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ