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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第九章 帝国
340/382

エンドライン

 第二〇一中隊を退けた第一中隊は、後方にある通称レットルーレ線と呼ばれる大きな防衛要塞線に到着した。

 現状で戦力として残っているのは、第一小隊がリンド、フーフラーファ、ルー、ケレッテ、ピュループの五名で、ルルペラは死亡、ムルタは未だPTSDから復帰できず、モトルリルは傷がまだ癒えていないものの、もう少ししたら戻れると聞いている。

 第二小隊は隊長のマターリ少尉が重傷を負い、救出後治療を受けたもののほどなくして出血多量で息を引き取り、副隊長のノイントイン軍曹、ポパ一等兵と傷が癒えて戦線復帰したタウケン伍長がいる。ベルーケウ上等兵はタウケンと入れ違いで負傷し後方へ、ケプルーム一等兵はピュループと共にネイヴェロープに乗って第一小隊として編成されている。

 第三小隊はモリノ軍曹、ジェローリラ兵長、キョーットル二等兵、ライメル二等兵の四名が生存。第四小隊は先の戦いで全滅した。また、AWのノモメス隊も全てのAWを失い解体され、歩兵として再編成され、リンリ隊車両三両と兵員十四名。最早戦力として機能していないまでに減少した第一中隊であったが、ここで思わぬ補充が入った。

 四機のALと四名の新米パイロットである。ルスフェイラとサイオスが二機、旧式機が送られてくるというこの国の現状に目を細めつつも、それでも兵員の補充が来た方の喜びが勝り、思わず口元も緩む。

 補充されたメンバーはンジャル二等兵、コイリ二等兵、ドゥーリッポ上等兵、ニクルアウ一等兵で、ンジャル、コイリは学徒兵だが、ドゥーリッポとニクルアウは中年男性で、二人とも志願兵らしい。ちなみに全員が男性だ。

「ドゥーリッポ上等兵です。よろしくお願いします」

 顎に傷のある長身の男はそう言った。

「開戦初期にミストラ大陸で戦っていましたが、怪我で退役しました。ですがもう言い訳してられませんからね」

 ドゥーリッポ上等兵は開戦時パイロットをしており、サイオスに乗ってミストラ大陸西端にある同盟軍側の国の軍港で、守備隊として派遣されていたらしい。半年ほど戦っていたが右足を失う重傷を負い退役。しかし本土決戦ということで復帰したのだそうだ。

「ありがとうございます。とても助かります」

「我々大人が中尉達のような若い者に任せてしまって申し訳ない、そう思っています」

 二人目のニクルアウ一等兵も、ドゥーリッポと同様に元兵士で三年前まで空軍の陸戦部隊としてALパイロットをしていた。

「よろしくお願いします。ペンゾラ・ニクルアウ一等兵であります」

 リンドと同じくらいの少し腹の出た男は、右目にアイパッチをしていた。また左目にも視力矯正用の特殊なモノクルを嵌めており、どうやら主に目に負傷を負ったらしい。

「右目はもってかれましたがこれのお陰で見えていますので安心してください」

 疲れた声色の彼は、三年前に機体が損傷した際有毒ガスを浴び、左目の視力の殆どと右目を失った。それでもこうして再び前線に立って戦おうとしている真の勇者だ。そしてそのうえリンドは彼らが傷痍軍人であることにシンパシーを感じていた。

「ありがとうございます。本当に助かります」

 さて、残る二人は十五、六歳の少年で、どうにかALで戦える程度で、きっと敵が格闘戦を挑んできたら対応できずに一方的に殺されてしまうだろう。そんな程度だが、それでも彼らを使わなければいけないのは、ALのパイロットになるには適性が必要で、その適性を持つ人間も十人に一人程度に収まる。彼らのようなヒヨッコにすら満たない未熟者でも、マシなほうなのだ。

 多くの兵士候補はALパイロットになるのを望むが、ほとんどはなることが出来ず、AW、AAならまだいい。たいていはA兵器に不適正の烙印を押されて歩兵などの他の科へと進むことになる。

「ンジャル二等兵とコイリ二等兵だな」

「ハイ!よろしくお願いいたします!」

「目一杯頑張る所存です!」

「ああ、よろしく頼むよ」

 軽い挨拶を返すと、リンドは四人を整備科の兵士に任せ、自分は自機の元へと向かった。重装型レーアルツァスは、本土決戦開始時には全身が火薬庫だったが今は殆どの火器を失い、通常のフル装備よりも火力は大幅に劣る始末。だが嘆いたところで積むべき武器が無いのだからしょうがない。他の機体から引っぺがして来ることも出来るが、その場合武器を盗られた兵士が割を食うことになる。

 このレットルーレ線には、今彼らがいる場所のようにキチンと整備された整備場があり、正面及び天井が分厚いコンクリートで覆われているため、陸空両方からの敵の攻撃を受け止めることが出来る。対戦中期より念のためとして建設され始めた防衛戦であったが、まさか本当に活用することになるとは提案したビックランバー中将ですら思いもよらなかっただろう。ただ、救いがあるとすればこの防衛線が実際に稼働するのを見る前に将軍が死んでいることかもしれないが。

 旧式戦艦の主砲を流用した要塞砲や、百二十年前の戦争の際建設され使われることのなかった列車砲等巨大な防御火力が連合軍を待ち構えている。防衛線としては最大のものであるが、ここを突破されるということはつまり、最早北部を守る防衛線は無く、本土防衛は失敗しシェーゲンツァート帝国の完全なる敗北となる。それだけは避けねばならない。

 ここが正念場、ここが最終防衛ライン。そんな防衛線を一月程度で使う羽目になるとは。正直言ってここまで押し込まれれば、押し返して国土から一人残らず連合軍を追い出すのは至難の業だろう。だが彼らが諦めることはない、シェーゲンツァート敗北のその日まで銃を手に握りしめ続けるのだ。

 機体は先ほどの戦闘で大した傷はつかなかったものの、格闘戦と支援砲撃によっていくらかの装置にガタが来たので整備士達がチェックしている。

「よろしく頼むよ」

「勿論」

 


 食事を摂りながらリンドは白い鳥について考えていた。ただの鳥ではない、あのヴィエイナ・ヴァルソーのことだ。虚空のようなスープをスムーズにかき混ぜる。

(あいつはどこにいる。あれほどの女がここに投入されないはずがない……でも目撃情報もないぞ……)

 それは単にまだ出てきていないからなのか、それとも考えたくはないが、奴を見た兵士全員が奴に殺されたかのどちらかと言えるが、あいつがいる限り同盟軍に勝利は見えない。奴を戦闘以外で仕留められるとすれば、母艦を潰し海上に墜落させるか、暗殺でもするかそれくらいしか無いだろう。

「勝てるのか……」

 勝てる算段が見当たらない。あれほどのパイロットとALを用いての戦いで倒す方法がわからなかった。せめて彼女も陸戦用で来るならば十分に勝ち目はある、しかし向こうは飛行型ALであるため陸戦用のALではあまりにも不利だった。ああ、勝ちたい、勝たねばならない。だが、勝ち筋が見えなかった……

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