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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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鯨狩り

 巨大ALのパイロットも水面での標的の動きに気づいていた。見つかるのも時間の問題かはたまた既に見つかっているか。いずれにせよ進退を考えなければいけない。船団を葬ってしまいたいのはやまやまだが、残弾の問題がある。それに既に出撃から六十時間も経過しておりパイロットにも休息が必要である。いくら機械が疲れ知らずとも、それを動かす人間は当然の如く疲労する。パイロットはこの襲撃の後に帰還しようと考えていた。帰還すれば名誉と休息、それに酒と女が待っているのだ。

 逸る気持ちを抑え慎重に機体を動かし始めた。

「深度調整タンクブロー。艦首上げ10、機関微速」

 機長の指示と共に機関士が姿勢制御を行う。巨体はゆっくりと能動的に海面へと昇っていく。

「深度八十でSRH二発発射。目標はこの駆逐艦だ。発射後船団左翼に離脱。九百で反転し再度SRHを発射、目標は任せる」

 今度は操縦士に指示を出す。

「分かりました」

 そう、このALは一人のパイロットの手によって動かされているのではない。機長、機関士、そして操縦士の三名によって操縦されているのだ。これほどの巨大な水中用ALはとても一人では動かしきれない。機長が状況判断と指示を下し、機関士が機体の状態の維持と整備、機体への注排水を行う。そして操縦士が機体の操縦と武器の使用を行う。

 人数が必要なこのALだが、もしオースノーツの先進的なAIを組み込むことができれば一人での運用も可能となるだろう。

「ALが二時方向より向かって来る。二機だ気を付けろ」

 ソナーに二機のALがこちらへ向かってきているのが確認できる。機種は間違いなくヨッターだ。たった二機のヨッターではこいつを倒すことはできない。だが目障りであるのは確かだ。それに敵はALだけでなく対潜ヘリや駆逐艦もいる。連携されれば撃破されかねないのだ、油断は禁物である。



「……ちか、近いぞ気を付けろ」

 ヨッター一番機のパイロットが僚機に呼びかける。二機は背後から敵をつっついて味方の対潜網に追いやる作戦であった。ソナーには巨大な影が二百m先に映っているが、モニターに映るのは真っ暗な夜の海で、今真っ暗闇の中で恐ろしい化け物に剣を片手に勘で近づいているような気分であった。生物としての本能が、闇を恐怖と捉える。今まで夜の出撃がなかったわけではない。対AL戦闘がなかったわけでもない。だのに恐怖が、震えが収まらないのだ。見えないということがこんなにも恐ろしく感じたのは初めてであった。

「ンッ!……ふう」

 咳をしてもひとり、相棒は百mとなり。最早敵はすぐ目と鼻の先である。敵も当然だが気づいているらしく、先ほどからゆっくりとだが海面に向かって上昇している。と、その時アラートが鳴り響く。敵が魚雷を二発発射したのだ。二機の間を高速ですれ違っていった魚雷はまっすぐと駆逐艦に伸びていった。

「魚雷がそちらに向かっています!」

〈こちらでも確認している!〉

 どの船にあたるかはわからなかった、しかしすぐにそれは通信機からの悲鳴で判明する。

〈クソッ、ブルントが喰われた!救命ランチ急げ!〉

 パリオーサの駆逐艦ブルントが被雷したようだ。あれには確か既に救助した者達が百名は乗っていたはず。せっかく助けた命がまた失われるという事実に怒りを覚えたヨッターのパイロットたちは速度を上げ敵の後ろについた。

「こちらベルゲン隊、敵ALの後方についた。攻撃を開始する!」

 二機のヨッターが、船団の左側へと離脱していく敵ALを逃がすまいと追いすがる。ヨッターは小回りは効くものの速度では巨大ALには敵わない。そこで魚雷で進行方向を変えさせる作戦に出た。魚雷槽を装備している二番機が魚雷を時間差で二発、敵の左側ギリギリを狙う。二発とも当たることはなかったが、それでも狙い通り敵の進行方向が右にずれていく。そこにさらに追い打ちをかけるように左と下に魚雷を放つ。ある程度の針路変更は出来たもののこれでもまだ艦隊と並走する形で対潜網にはかからない。その上残りの短魚雷は二発で、これ以上は使えない。魚雷も安くはないのだ。

 そこで二人は覚悟を決めてブレードで白兵戦を仕掛けることとした。敵がどれほどの装甲を備えているかは不明だが、戦艦すら切り裂くこのヨッターのブレードにはいくら化け物とてひとたまりもあるまい。

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