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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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月海原の神話(4)

 あの巨大ALはどんな武装を持っているのだろうか、司令部では憶測が飛んだ。少なくとも複数の魚雷と機銃、そして水中用ALの装甲すら握りつぶしてしまうほどの馬力を持つアームがあるようだ。マシンガンのような携行武器は持たないだろうというのは全員の考えで一致していた。理由は三つある、一つ目にあれだけの巨大ALが持てるような巨大なAL用携行火器をわざわざ作るような真似はしないだろうということ。二つ目にあれだけの巨体でわざわざ携行火器を持っていても寧ろ邪魔になるはずで、その分の火力はボディに収めきれるだろうというものであった。そして最後が水上ならまだしも水中では自力で推進力を持たない弾丸はすぐに水の抵抗で止まってしまうためである。それはマシンガンだろうとハープーンだろうと同じことである。ならば水上に顔を出した時はどうするのだという意見があるかもしれないが、そもそも水中で使用されるALはほぼ水面に顔を出さない。出せばいい的になるのは明らかで、わざわざそんなことをしなくても魚雷という非常に優秀な対艦兵器がある。

 これらが予測されたが問題は未知なる武器を搭載していた場合である。あれだけの巨体、国籍不明、試作機の可能性、全てはあのALが完全に未知のベールをかぶっているせいであった。いや、そもあれはALなのか……

「推進音すら出さないとは……」

 モーリン中佐が頭を抱える。するとケイマンタン大尉が神妙な面持ちでこう呟いたのを、司令は聞き逃していなかった。

「水流か……?いや……」

「そうだ、潮流だ!」

「は?」

 突如大声を上げた司令に一同は顔を上げ注目する。彼はすぐに潮の流れの向きと速さを調べさせる。すると彼がおおよそ予想していた通りの結果が出た。

「そうか、奴は推進力は使わずに潮の流れを利用して潜んでいる可能性がある、というわけですね!」

「だとすると……この辺りは深度……問題は位置だ……」

 そう、敵が推進音を出さない理由は分かった。しかし問題はどの方角と深度にいるかが不明なのであった。奴がまだ離れていないと思うのは戦士の勘がそう囁いているためだ。だが勘はそこまで詳しくは教えてくれなかった。

「パリオーサ軍にヨッターの出撃待機を頼んでくれ、こちらは全艦に聴音士に水中の注排水音に注意するように通達!」

 すぐさま命令が伝えられ、動き回っていた駆逐艦たちは一旦停止し水中の雑音をなくしていく。

 彼が注排水音に注目するように伝えたのは、いくら潮流で移動をできても深度の調整まではさすがにバラストに注排水をしなければならないはずだと考えたためであった。

 その成果はすぐに上がった。艦体の後方五百メートル付近にわずかだが時折注排水を行うような微かな空気と水の流れの音が確認できたという。が、それでもその付近にソナーの反応がないのか。

 それが巨大ALの能力であった。特殊な材質と塗装、表面の形状によってソナーの反射を抑える効果を持っていることと、使用には制約があるもののある種のEMP兵器が搭載されていたのである。それはまだ実験段階のものでその国でしか実験段階に入っていないものであった。それでもまだこのような巨体をもつ兵器でなければ搭載できないような状態であった。

 その頃リンドたち旅客も、ことが進展したことに気づき始めた。何故なら船団に非常に張り詰めた空気の流れを感じ、また駆逐艦たちが微速後進をはじめたからである。

〈伍長、準備しとけよ〉

「はい」

 キリルムたちもいつの間にかALに搭乗していたようで、前後のキリルムとヴィレルラルのALが起動し突撃銃を構えていた。なおスライとジュードルは他の輸送船に乗船しているためここにはいない。

 船の機銃がゆっくりと旋回し、いつ浮上してくるかと待ち構えている。リンドは気づかなかったが、後方で海面で係留されていたヨッター二機が舫を解き静かに潜航し始めていた。

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