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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第九章 帝国
328/382

焦点、合わせて(2)

 美しい物ほど棘がある。人を殺す物は美しい。

 誰が言ったのか、この星でも同じことを言った人間がいるのかはわからないが、まだ陽の光昇りつつある明るい空に瞬いた美しい星々が、地上へと降り注ぐ。それは一斉発射された砲撃で、自走砲、牽引砲、迫撃砲、ALによる砲撃で、砲弾だけでなく地対地ロケット弾も含まれていた。

 すぐに砲撃警報が流されたが、流れた直後に砲撃は落着し始め地面が抉られ土が舞い上げられる。舞い上げられるのは土だけではなく、人や兵器も含まれ、人間ならば木っ端みじんに、兵器ならば原形を留めないまでに粉砕される。

 リンドとルルペラがその砲撃に巻き込まれ、咄嗟に盾で機体を庇ったおかげで被弾自体はすれども損傷は殆どなくやり過ごすことができた。だが、ルルペラは二発の砲撃と一発のロケット弾の直撃を食らい、大爆発を起こす。ALの下半身が埋まるほどの巨大な塹壕を一回り大きく抉り取るほどの爆発は、おそらく彼の持っていたバズーカランチャーの予備弾薬が誘爆を起こしたのだろう。それほどの規模の爆発に巻き込まれた付近の兵士も皆即死だった。

 ルルペラ機は上半身が完全に吹き飛び、融合炉が破壊され放射能があたりに噴き出している。

〈隊長!敵の砲撃が!〉

 ルー兵長やモトルリル一等兵の声が、激しい砲撃と爆発音にかき消されながら届くが、そんなこと砲撃を浴びているリンドだって言われなくともわかっている。

「コックピットと頭を庇ったまま耐えろ!」

〈そんな!〉

 彼らが求めていたのは確実に生き延びられる打開策、しかしリンドだってそんなこと知るわけがないし知っていたらまずルルペラが死ぬことはなかった。

 全ての砲弾が着弾したのか、束の間の沈黙が流れる。恐らく敵は上空に飛ばしている観測機から砲撃の効果と着弾地点を確認し、座標位置を修正して第二波を飛ばしてくるはずだ。

「オーセス中尉より第一中隊へ!状況を知らせろ!」

 気になるのは他の部隊が展開している陣地だ。陣地はてんやわんやの大騒ぎで、状況分析どころではない。部隊の半数はまだ休憩に入ったばかりであるため起きている可能性があり、生きていればもうすぐ連絡を取ってくるはずだ。

 連絡はすぐに帰って来た。

〈ノーラ准尉より中尉へ!〉

 第四小隊が一番先だった。

〈こちらではあまり被害は無く総員無事であります。地上ではいくらかの被害が出たようですが死傷者までは不明です〉

「了解。第二波以降があるかもしらん。警戒を続けろ」

 あの状況下で死者が出なかったのは幸いだが、油断はならない。

〈こちらモリノ軍曹。オーセス中尉殿〉

 今度は第三小隊からだった。

〈第三小隊は私の機とキョーットル二等兵の機に損傷。二等兵のは両手を破壊されましたが砲撃型のため戦闘自体は可能であります〉

「負傷者は」

〈出てませんぜ〉

「……了解。引き続き警戒を」

〈了解〉

 これで二個小隊において死者は出ていないことが確認できた。後は第二小隊とフーフラーファ曹長に預けた分隊だが、果たして無事でいてくれているだろうか。この二つの隊からはなかなか連絡が来ず、じれったさに頭を掻きむしりたくなったが、目をレーダーとモニタに、耳を通信機に意識を集中させねばならないため、そんなことをしている場合ではない。

「第二小隊応答せよ。フーフラーファ曹長応答せよこちらオーセス中尉」

 だがまだ返答は無く、じれったい空気が彼をいら立たせる。着弾位置はこの防衛線の全域に散らばっているため、配置図と着弾予想地点を重ね合わせたところで彼らの戦線が無事だったかはわからない。

「フーフラーファ曹長、ケレッテ一等兵、ピュループ上等兵、ケプルーム一等兵そちらの状況は」

 第二分隊全員とピュループと共にネイヴェロープに登場している第二小隊所属、ケプルームの名を呼んでみるとようやく返答があった。

〈……もしもし〉

「曹長!生きてた!」

 聞こえて来たのはフーフラーファ曹長の声だった。通信の音質が非常に悪く数世紀前の原始的で質の悪い通信機でも使っているのかというくらい聞き取りづらかったが、その声は聞き間違えようがない。

〈すみません。至近弾を受けて通信機が狂って。でももう大丈夫です〉

「ああよかったです。そちらの被害は」

〈全員無事ですが、ケレッテ機と私の機が被弾して損傷を受けました。詳細はまだ何ともですが、ケレッテは両足を破壊されて身動きできません〉

「塹壕に入れてなかったんですか」

〈大きすぎたんですよ塹壕が。それで出来た隙間に飛び込んだんです、ロケット弾が〉

「はあ……とにかく無事ならよかった。ケレッテ一等兵、爆発の危険性は」

〈はい、えーっと……大丈夫だな……爆発の恐れはありませぇん!〉

「戦えるか」

〈上半身は無事なのでいけますが、移動ができません〉

「なら敵が四……いや五百mより内に入ったら機を捨てて曹長か上等兵の機体に乗り込め」

〈了解であります!〉

「曹長、引き続き警戒を。そちらに敵の反応が増えてます」

〈わかりました。隊長もお気をつけて〉

 通信を終えたリンドは胸を撫で下ろした。機体の損害はあったようだが、全員が無事らしい。あとは第二小隊だが、マターリ少尉の機体の通信機がピンポイントで破壊でもされたのだと祈るが、その場合は他の機に発光信号で状況を伝えてそれをリレーするなりして接触してきてもいいはずだが、それが無いということは最悪の事態が脳裏に過る。

 しかしその最悪のパターンだけはよしてくれと祈るリンドであったものの、最悪にほど近い事態が発生していたことを、副隊長のノイントイン軍曹からの報告で知らされる。

〈第二小隊副隊長ノイントイン軍曹よりオーセス中隊長殿へ〉

「軍曹!少尉は!損害は!」

〈少尉の機体に直撃がありました。二発。回収班がハッチを開けようとしていますが生死は不明です。あっ、少尉が引き摺り出されてます。怪我をしているらしい……〉

「どのくらいだ!」

〈血まみれです〉

「クソッ!軍曹が第二小隊を引き継げ!」

〈了解であります。部隊はケプルーム一等兵とポパ一等兵の機体が損傷しましたが、戦闘継続可能です。警戒を続けます〉

「頼んだ」

 これで全員の安否は判明した。戦死者は第一小隊のルルペラ二等兵だけで、生死不明の重傷がマターリ少尉の一人。砲撃の規模に対して第一中隊への損害は軽微だった。あとはノモメス隊、リンリ隊だが、リンリ隊は今ちょうど無線が飛んできた。

〈こちらリンリ隊。車が一台やられました。ズルダルも移動不能です。マルゼンとカッチーチが戦死。ナタンダーレ、バニモサ、モトルリルが負傷しバニモサはかなりの重傷です〉

「了解した」

〈ノモメス隊シャーレシャーレ軍曹よりオーセス中隊長へ。ノモメス隊に被害はありません〉

「よし、第二波もしくは地上軍の侵攻に備えろ」

〈わかりました〉

 これでリンド指揮下全隊の状況が判明した。一番損害が酷いのはリンリ隊で、マルゼンとナタンダーレ、バニモサは元々リンリ隊所属の兵士で、カッチーチとモトルリルは壊滅した部隊から拾ってきた兵士だ。これから敵の第二波攻撃が降ってくるだろう、射撃の座標を修正しているだろうから、より酷い被害も覚悟しなければならない。ああ、生き残れるのだろうか彼らは。

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