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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第九章 帝国
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双頭の巨人

 暫くして、前線にトレーラーがやってくる。先ほどリンドの機体を載せていったものと同じ個体だろう、フロントのへこみとそこから生じた錆に見覚えがある。トレーラーは荷台に大きな積み荷を載せており、近づいてみると整備部隊より修理が完了して回されてきたALであることが伺える。先ほど電話で話した余りの一機という奴だろう。

 ただ、見たことのない機体だった。

「ここに受け取りのサインを」

 曹長の襟章をつけたツナギの兵に、物資受け取りのためのサインをするようボードを渡されたので、は三であった汚れた書類にサササッと名前と階級をサインすると、機体について尋ねる。

「これは」

「マーリウト社と兵器開発局の合同で製造されたとか、ネイヴェロープです」

 へえ……とそっけなく相槌を打つのは、マーリウト社のALのことなどよく知らないためだ。二人は機体の元に近づいていく。機体は一緒に運んできた整備士が乗り込んで、トレーラーから降ろし始める。

「特徴としては通信能力の強化とバックパックの重突撃砲ですね。弾数はえーっと確か千二百発ずつだったかな」

「それはいいな、すごくいい」

 見るからに重装甲重火力、申し分無い機体がゆっくりと地面に降り立ち地面をへこませている姿を見て、満足げに頷く。数で劣るならば一機で多数を撃破すれば、戦いにも勝ちやすくなる。機体を見上げていたリンドだったが、ふとあることに気が付いた。

「……ん?頭がデカいな?」

 彼の言う通り、ネイヴェロープは頭部が他のALより大きいように見える。頭部自体はレーアルツァスだとかよくある首のない、頭部と胴体が一体化しているタイプなのだが、この機体の場合まるで何か仕込まれているような、そんな。

 彼の言葉に、整備士は目を丸くして答える。

「ええ!そうなんですよ。こいつ実は複座でしてね」

「複座!珍しいなあ……訓練機みたいだ」

「一人が操縦担当一人が固定火器とシステム担当。システムといっても問題が起きたり機体の熱のバランスが崩れているときにモニタの指示に従って操作するだけなので誰だってできます」

 説明を聞く限り、高度で複雑なシステムを分割して担当させるというよりは、どちらかというとALを経験の浅いパイロットでもより扱いやすいようにしたまさに訓練機の実戦仕様のように思われる。乗せるとすれば、機体を失ったピュループ上等兵をと思ったが、それだけだと一人足りない。そこにふと先ほどのマターリ少尉の話が頭に浮かんできた。

「パイロットの当てはちょうどあるからありがたくいただくよ」

「調整は済んでいますからいつでも使えますよ」

「信じよう」

 信じようといったのは、ルスフェイラのことがあっての皮肉なのだが果たして通じたのかどうか。ともかく無事機体を受領したのでピュループ上等兵とケプルーム一等兵を呼び出す。

 新しい機体を前にした二人は、眉間に皺をよせ目の前にそびえたつ十八m級の大型ALを見上げていた。

「複座でありますか?」

「ああ、とりあえず上ってみてくれ」

 とリンドは二人を伴ってコックピット内に入ると、まず驚いたのはコックピットの広さだった。大型で頭部自体も大きいために、内部空間が広々としており、ALのコックピットながらも閉鎖空間という狭苦しさをあまり感じさせない居心地の良さそうな造りに、感心してしまう。

 コックピットシートは縦で後部座席が少し機体正面から見て右と上にずれて配置されており、前列の操縦者側のシートの横の通路を使うことで、狭いもののシート移動などをせずに後部座席に乗り降りできるようだ。

「ピュループ、操縦を。ケプルームは後ろに」

「わかりました」

「了解であります」

 理由は特にない、両者の適正などわかっていないためどちらがいいなどわからないからだ。実際、二人の軍学校での成績は比べてもほとんど変わらない成績のため、どちらをどう配置しても結果は変わらなかっただろう。

 機体を起動すると、大型機らしいパワーあふれるジェネレータの駆動音が空間内に響き、思わず吐息が漏れる。

「ああ……」

「パワーがありますよこいつは……」

 二人も嬉しそうだ。装備を確認すると、バックパックから伸びている長砲身の重突撃砲と、左わき腹にある二十五㎜機関銃、両肩の四十㎜ガンタレット、各所の対空・対地機銃と頭部横にある四十㎜機関砲、右腕の火炎放射器と左腕のショックワイヤーガンなる奇妙な武器が。

「なんだこれ」

 見慣れぬ兵装に戸惑うケプルーム一等兵は、システムの説明を読む。ピュループも同じ画面を開いて確認しリンドも身を乗り出してのぞき込んだ。

 説明はこうだ、射程六百mの弾頭を発射しセンサーで目標の前四十m付近で展開、X字状にワイヤーが伸び先端の重りが遠心力で目標に巻き付き高圧電流を流し、システムと内部の人員を殺傷・破壊する、とのことだ。

「使いどころがよくわからん変なもん作りやがって……」

 手練れが使えばいいのかもしれないが、正直言って並みの兵士が特殊兵装などまともに扱えるわけがない。設計者はこんなあほみたいな兵装を積むくらいなら、バックラーシールドなり機銃なりをつけてくれていた方がよっぽどありがたいし使いやすい。弾数も弾頭の大きさのせいで四発しかないではないか。

 モニタも大型で見やすく、操縦もしやすそうで申し分ない機体だが、最後の最後に変なものが付いているケチがついてしまった。ともかく、それ以外は良い機体のようだから彼らには協力して頑張ってもらいたいものだ、リンドは二人にうまく連携できるよう尊重し合うように伝えると、機体を降りた。

「あ、そうだ。部隊のところに移動させておけよ」

「はい!」

 ぎこちなく背後で前線に向かって歩いていくネイヴェロープを振り返ることもなく、今度は防御陣地再構築の様子を視察しに行くため、車両に乗り込むリンド。工兵隊が突貫で新たな塹壕や鉄条網といった防御陣地を設営してくれているのを見るのだ。

 工兵隊もこの長い戦いの中で疲弊し、数も減ってしまったために設営は望んだものの一部しか叶わないだろうが、仕方がない。ALで支援したいところだが、皆休息に入っているしリンドの今の機体は土木工事を全く想定していないため、大概の陸戦ALに装備されているはずのウインチ一つ有していないのだから、できることなど殆どない。

 通り過ぎていく景色を、後部座席から眺めていると目に入るのは兵器の残骸、残骸、残骸、破壊された陣地、回収もままならない死体、死体、死体……中には腐敗し始めているものまである。ふと、セレーンの顔が頭を過った。彼女は生きているのだろうか、前線は常に後退し続けているために、決まった場所で会うこともできず、戦力の不足から碌な護衛もつけられずに輸送部隊は失われた制空権の下を進み続ける。

 そのために多くの輸送部隊が一方的に航空攻撃によって破壊されたと聞いており、彼は悪い予感が外れていることを願った。

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