第21AL空挺連隊、降下セヨ(3)
ミラスはメートル
ガトンはトン換算でお願いします。
リンドのアルグヴァルは重装型のALだけあって直撃にも耐えた。
シェーゲンツァート帝国の空挺用ALは、5機一個小隊で編成され、それぞれ役割を持っておりその役割ごとに装備や機種がことなる。だが互換性を高めるために可能な限り同一機種が運用されていた。彼の乗るアルグヴァルはそもそもFRALL-S/06 アルグヴァルという空挺部隊用汎用型ALをもとに火力と装甲に特化した装備が施されている。
全高15.9ミラス 総重量178.5ガトン という超重量級で、武装はその都度異なるものの重装型に関しては要塞攻略用として設定されてはいた、しかし実際には通常の作戦でも使用されている。そのほか指揮官型、中装型、砲撃型などがいる。
リンドは機体を起こすと周囲の状況を確認し始める。敵の反応は濃くはなく、どちらかというと味方の数のほうが多い。ここはどうやら前線の対空陣地の領内のようだ。正規の降下地点まではまだ8000ミラスもある。そうしているうちにも味方はどんどん前線へと進んでいる。
〈名前は?〉
僚機が訪ねてきたので、名前と階級を手早く述べた。
〈さっきは本当に助かった。感謝してもしきれないよ。俺はマオール。同じ伍長だよろしく〉
「ああよろしく。気にしないでくれ」
マオールのALは中装型のアルグヴァルのようだ。携えているのはSLW/M-P01 60㎜(モルミラス)突撃銃で、シェーゲンツァートALの最も一般的な携行機関銃だ。あとはグレネードと予備弾倉がいくつかといったところか。
「俺が援護をするからマオールが倒してくれ」
〈折角の重ヴァルだろ?〉
彼のものよりもはるかに武装を積んだリンドのALを何故援護の役割にするのか、マオールは訝しむ。命の恩人だが、自分を弾除けにしようとしているのではないのかという疑念がよぎっていた。だがリンドから返ってきたのは非常に真っ当な答えであった。
「できるだけこいつの弾は要塞にぶち込みたいんだ。そのために俺は火薬庫を背負う危険を冒しているんだぞ。教練を真面目に聞いていなかったのか?」
そうだった。マオールはこれが上官に聞かれていなかったことに心底安心した。もし聞かれていればげんこつの2発や3発飛んできてもおかしくはない。重装型アルグヴァルは自身の重量の半分強に匹敵する武器と弾薬をしょい込み、それを装甲で守っている機体だ。時が来れば重AL乗りは敵の矢面に立って、味方の代わりに全身に砲弾を浴びながら突撃しなければならない。要塞攻略用兵器が、道中で弾薬を使い果たしてしまっては、元も子もない。彼は非礼を詫びると、彼を疑った自分への戒めに、メットを取ると一発力強く自分の頬をぶった。
「今の音はなんだ」
通信機の向こうから聞こえた乾いた音に、思わずリンドが聞き返す。それに彼はなんでもないさと笑って見せた。
〈行こうぜオーセス伍長〉
「ああ、マオール伍長」
2機のALは深い森で目標地点へ向かって歩を進めた。
FRALL-S/06 アルグヴァル
全高:15ミラス 総重量:88ガトン 動力:マルコーニ型複合エンジン
シェーゲンツァート帝国空軍空挺部隊で使用されるAL。その汎用性もさることながら、空挺部隊という一度降下すれば激戦地に放り込まれ、場合によっては単独で数週間の行動を強いられるため、そのためのサバイバル装備や作業用装備が充実していることが特徴である。
KMBAL005プロップトン 全高:9.1ミラス 総重量:60ガトン 動力:サマニュエ型複合動力炉
クルイテ共和国及びシャマーナ共和国、パガウィ民主主義共和国で運用されている小型AL。機動性に優れているが装甲を犠牲にしているわけではないため大きさの割に少々重い。対戦車戦闘などには十分な性能を発揮するが、貫徹力に定評のあるシェーゲンツァート製武器には敗れた。シェーゲンツァートからはラルガー(木登り蛙)と呼ばれる。