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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第八章 錆び付く鉄鋼
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積み上がる壁(2)

 現在リンドの指揮する第一AL中隊の内リンドが直接指揮する第一小隊は彼含めて十機、メンバーはリンド・オーセス中尉、フーフラーファ曹長、ビテールン伍長、リットール上等兵、ルルペラ二等兵、ケレッテ一等兵で新メンバーとして十五歳のピュループ上等兵、モトルリル一等兵、十六歳のムルタ伍長、十七歳のルー兵長である。また、珍しくルー兵長は女性であるがこうして十五の少年やまだ年端もいかぬ少女まで駆り出されているという現状に、古参兵たちは俯かざるを得なかった。その古参兵もかなり減ってしまったのだが……

 カトマ一等兵は重傷でまだ治療が住んでおらず入院中、アンディーポ上等兵はごたごたでどこに行ってしまったのかわからず結局再び彼がリンドの部隊に戻ってくることは無かった。

 リンド達の厳しい指導の元日々何時間もALの戦闘訓練に明け暮れているが、戦闘力というものはそう一石二鳥で身につくものでもなく、同じミスを繰り返してばかりであった。だが仕方がない彼等はまだそもそも学校に通っている子供達なのだから。

 ヒヨッコの指導に手を焼いているのはALパイロットだけではない、ALシミュレータのある部屋の隣では戦闘機のシミュレータや戦車、装甲車のシミュレータからも怒声と泣き言が絶えず聞こえてくる。どこも現状は一緒なようだ。鬼畜なようだがそうでもしてやらなければ彼等は死ぬしリンド達だって死ぬ、何より故郷と銃後の家族が敵の銃弾を浴びて倒れる。それだけは絶対に許されない、リンドはもう家族を失いたくはなかった。

 彼等の訓練の横では、整備されたALが仕上がっていく。リンド機は最終調整が済み、隊員九名のALも出来上がる。内訳としては重装型一機、半重装型二機、中装型五機、指揮型一機、砲撃型一機、と言ったところで補給型はいないが、このうちレーアルツァスはたったの三機でリンド機、フーフラーファ機、ピュループ機であとはルスフェイラと新型ALのザザルェイファというルスフェイラを設計元にしより生産能力を高めるべく各種ブロックが簡易化や量産性を高めた機体で、性能はルスフェイラを上回る。

 第二小隊は指揮型一機、重装型一機、半重装型一機、中装型六機、砲撃型一機の編成でルスフェイラ七機ザザルェイファ三機。第三小隊は中装型六機に砲撃型二機、そして対空型二機だ。この対空型は古くなった初期型のルスフェイラの両腕をガルヴォフォールのように旧式の対空機関砲のレーダーを更新して換装、他各種対空兵装を満載したものだ。

 第四小隊は何と寄せ集めで、超旧式のサイオスに重装甲を着せた現地改修型二機、半分ルスフェイラの部品を使った中装型アルグヴァル一機、ヴィシューカパパの陸戦小型ALクァルドーが二機、鹵獲したクォーツァイト一機、モルガット帝国製の山岳地帯用のALノバノ、そして三機の試作ALの計八機だった。

 試作機の内一機は試作の武装試験を行うために技術試験隊で使用されていたルスフェイラB3型、元はただのルスフェイラだったが色々な武装を試験するためにあちらこちら、全身が弄繰り回されており見た目も中身もルスフェイラと言われてもわからないほどに変貌していた。特に重装型よりマッシブな両腕が特徴で見た目通り、腕のトルクは半端ではなく重装型でもないのに機関砲を両手に一丁ずつ抱えていた。

 二機目はXAA-992という名前のないALで、頭部がなく代わりに顔に当たる部分が首元に埋まっている姿をしており、両腕がマニピュレータではなくマシンガンになっている武器腕タイプのALだった。それを整備している開発会社の整備士に聞くところによると、どうやらコンペに負けた機体で負けた理由は背中の装甲が要件を満たさず満たそうとすると重量アップの結果、機体強度は問題ないのに何故か火器管制システムが原因不明のエラーを起こすから、らしい。

 三機目はXAA-882-3Fというこれまた機体名のない機体だったが、製造したウル社の開発チームではコットゥル(足りない)とよばれているらしい。何故「足りない」という名前なのかと言うと、その名の通り色々と部品が足りていない。元々ルスフェイラの次として開発コンペに出される予定だった機体で良い部品をふんだんに使っていたのだが、諸事情でコンペが中止になり機体の開発も中止、保管されていたが別の機種の開発にあちこち電子部品やシリンダ、モニタやセンサーなど取られた結果使えなくなってしまった。

 それを今突貫工事でスクラップやジャンク部品、軍の部品から使える物を取って取り付けている。おかげで至る所が見覚えのあるちくはぐな装甲で覆われてきたが、開発者曰く本来はもっとシュッとしてかっこよかったらしい。

 元の写真を見せてもらったが確かにちょっとアニメに出てきそうなヒロイックさがあったが今は見る影もなく、シェーゲンツァートらしい直線的で武骨なスタイルに収まっている。

「性能は?」

「お察しだがこれにウチのコマタンが乗るんだ、完璧に仕上げてやるさ」

 そう言って開発主任はフォークリフトで左のサブアームの先を運んでいる女性を見た。二児の母である彼女は実家に預けている子供達のためにもここで戦い抜き、生きて帰らなければならない、家族と生活を守るその意思で今ここにいる。

「さて……いつ来るか」

 こうしている間にも、外洋では潜水艦がシェーゲンツァート周辺海域に展開しており、現在近隣国であり同盟軍でシェーゲンツァートと深い関係にあるパリオーサ諸島国が焼かれていく様を観測し続けていた。

 そして敵艦隊の情報を本国とパリオーサの軍司令部に送りつつ雷撃、沈め沈められていった……。この支援作戦の間に八隻の潜水艦が沈没、十二隻が損傷したものの一隻の正規空母を大破漂流させ三隻の十五隻の駆逐艦などを沈め、輸送艦二十八隻を沈め、他複数の艦に損傷を負わせたのだから彼等の死は無駄ではなかっただろう。

 また、当然ながらここ以外でも戦争は続いている。キサナデア帝国はつい最近遂に本土に爆撃を受けた、シェーゲンツァートは一カ月ほど前から爆撃を被って入るが、その多くを対空砲によって撃退・撃墜しているため、甚大な被害は被っていないものの少なくはない死者が出ているのが実情だった。

 ただし、各戦線は戦力がこのシェーゲンツァート攻撃に引き抜かれているため他の連合軍戦力で作戦を進める必要があり、苦戦しているようだ。

 シェーゲンツァートは果たしてこの戦いを守り切ることが出来るのだろうか……

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