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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第二章 舞い降りる機動要塞
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月海原の鮫(2)

「まずい!」

 ラロは何処かへと走り去る。リンドは身を乗り出して航跡を見つけようと夜の海面をにらみつけるが、陣形の中心にいるビキネム号からはまったくもって見えなかった。それに真っ暗な海面では四本の航跡すら、監視員でもなければ見えはしなかった。緊張の時が流れる。そして鈍く激しい爆発音と同時に、ビキネム号の三百m南西に位置していた駆逐艦の側面に二本の巨大な水柱が上がった。

「ああ!!!」

 爆発炎上し六水戦所属の駆逐艦オラーストスの艦体は瞬く間に断裂し、沈んでいった。沈まなかった部分も燃え上がり、夜の海を赤く照らしていた。

 あっという間の出来事に、初めて海戦に居合わせたリンドは全身が震えていた。海が、シェーゲンツァート人になくてはならない海が一瞬にして牙を剥いたという事実に、彼は怯えていた。

 残りの二本はそのまま下を通過していったようで被雷した艦は無かった。他の駆逐艦から殺到してきたカッターがオラーストスの周囲に群がるが、あまり芳しくないようで積極的に救助が行われているようには見えなかった。一瞬の出来事であったために脱出できたものが僅かなのだろう。それでも約二十名がどうにか救助され収容されたようだ。

 駆逐艦が三隻、魚雷の放たれた方向へと疾走ししきりに爆雷投下をしているようで、月明りに海面の起伏が激しく反射している。護衛空母からも対潜ヘリが順次発艦し、爆雷か、はたまたソナーか、投下を始めた。警報は依然として鳴ったままで、乗組員たちはせわしなく働いていた。自分もできることはないかと考えたが、現在自分は旅客みたいなものだ。海の民だが海軍ではない。自分に出来ることと言えばALの操縦くらいで……

「そうか!」

 彼は思いつくや否や、アルグヴァルに駆け寄った。パネルを操作し、アルグヴァルのコックピットハッチを開く。中に飛び込むとシステムを起動させ機体の状態を確認する。状態は良好で火器も問題ないようだ。彼は操縦桿を握りしめると機体を覆っていた幕を取り払い膝立ちの状態にした。完全に立ち上がると船の重心がずれ、バランスを崩して輸送船を転覆させかねない。そのため慎重に膝立ちに姿勢を制御すると、九時方向を上半身だけ向かせた。

「な、なにやってんだ!」

 外からの声に見下ろすと、三人ばかし輸送船の船員がこちらを見上げて拳を振り上げている。彼らからしたら、船が転覆する可能性があるためたまったものではなかった。

「すみません、立ち上がるつもりはないです!」

 スピーカーで外にそういいながら、左腕を上げた。アルグヴァルの左腕には突撃銃が収まっており、いつでも撃てる状態にあった。

「どこだ……どこにいる……」

 ALの優秀な光学機器を駆使して敵潜を探すが見つからない。恐らく潜航しているのだろう。

「あっ、あれは!」

 リンドの視界の端に動くものを見た。それに注目し拡大すると、一隻の大型輸送船から巨大な人型のものが三機、次々と海に飛び込むのが見えた。輸送船の所属は第二〇二AL混成艦隊、つまりパリオーサ諸島国のものだ。その姿に彼はこの状況にありながらも興奮していた。それは普段見る機会のないもので海を愛する国の軍人としてもその血を滾らすものであった。

「パリオーサの水中用AL!!」

 そう、リンドが目にしたもの、それはパリオーサ製の水中用ALヨッターであった。パリオーサは小国ながらも海洋国家であるため海軍に力を入れている。中でもパリオーサの水中用ALはコストの割にそれなりの性能を持っていることで知られていた。

 恐らく今から潜水艦という狩猟者を狩猟するのだろう。狩る者が一瞬にして狩られる者へと変わる、現実の恐ろしさというものだ。その証拠にヘリや駆逐艦の爆雷攻撃が完全に止み、両者はその海域を離脱し始めた。

ヨッター:PPOAL‐m202ヨッター 全高:10.66ミラス 重量:100.4ガトン 動力:タロルモ水冷式サーマルリアクター 

 パリオーサ製の旧式水中専用AL。足は無く代わりに五基の推進器がある。特徴的な巨大な三角形の頭部をしておりその中には生産性に優れたソナーなどが詰まっている。武装は両腕に搭載された超振動ビッグブレードで、11ミラスも伸びる腕を伸ばし敵艦船の船体を巨大なブレードで切り裂く。現在新型の水陸両用ALに置き換わり始めているが、鋼鉄資源の少ないパリオーサでは生産が進んでおらず大戦を通じて同国で運用された。故障しても手動で機内のバラストを用い漂流することができる。


パリオーサ諸島国:シェーゲンツァートの120km南西に位置する小さな島の集まってできた国。国民は皆地球でいう黒人で公用語はタパリス語。鋼鉄資源は少ないが、漁業資源と巨大な油田、海底レアメタル資源を保有する。古くよりシェーゲンツァートと友好があり、幾度もの戦争を共に戦ってきた。そのため両国は非常に固く結ばれており、両国人のハーフが両国内では一番多い。

 特産品は干物。

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