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武装鉄鋼アームドローダー  作者: 戦艦ちくわぶ
第七章 若き芽よ
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敵自走砲陣地を破壊せよ

 友軍兵士を救出できた、しかし戦いが終わったわけではない。

 リンド達先遣部隊が敵の思わぬ秘匿戦力に苦戦し、敵の築かれたばかりの防御線を打通する予定であった基地までの最後の突破作戦はのっけからくじかれてしまった。

 今は稜線の影に追い込まれ中々抜け出すことの出来ない彼等を救い、またこの停滞を解消する必要がある。

 そのためにはまず敵の自走砲部隊の位置を特定しそれらを撃滅乃至機能不全に陥らせるような打撃を与えなければならない。それにはやはり最も有効なのは航空支援による爆撃であろう、だが前述の通りこの周辺にはまともな航空戦力は無く、ジジェメッツはこの周辺空域の制空権を完全に喪失していた。恐らく残っているのは小型輸送機が一機そこら、良くて攻撃ヘリも一機、そう言ったところだろう。

 司令部はカカポラック航空基地との連絡を常に取っているが向こうもあまり芳しくはないようで、ありったけかき集めた対空戦力も連日の航空爆撃によって疲弊し戦力も削られ続けているようだ。

 つまり、彼らにもこの撤退の行列を迎えに行く戦力はない。




〈方位からすると恐らくこのあたりかと〉

 フーフラーファ曹長は飛んでくる砲弾の方位、侵入角度、速度からおおよその敵自走砲陣地を割り出すが、確定はしていない。それに問題は距離であった。フーフラーファの予測地点から彼らのいる地点まではおよそ二十km、ALならあっという間にたどり着ける距離ではあるがこの十字砲火の中では星の反対側よりも遠く感じられる。

「決行するなら夜だろう」

〈まだ日没まで二時間はありますよ〉

 ビテールンはひびの入ったモニタを見つめながらそうぼやく。

 あれからしばらくの時間が経過した、しこたま砲撃を繰り出してきた敵軍もそろそろ弾薬を使い果たしつつあるようで、昼時に比べればまるで田舎の夜のような沈黙に感じられるほど散発的になりつつあった。

 嵐の前の静けさでなければいいのだが、彼らにはこの敵の砲弾の補給がある前に行動を、短い時間での決死作戦を敢行しなければならなかった。

 さてそのメンバーであるが、まずリンドは除外、さらに機体の損傷の激しいビテールンとフォボルヴも待機である。対して指揮をとれるものが必要であるから必然的にフーフラーファはメンバーとして選出確定である。また、砲撃型であるムートル兵長も必要とされ、残りはバーノウィッツ小隊の残存機である隊長機と補給型の二機が随伴する。とはいえ、階級はバーノウィッツ一番機のパイロットであるカタンタスが准尉であるためフーフラーファたちが彼らに従う形となっていた

〈では隊長、行ってきます〉

「ご武運を。戦車隊、ビテールン伍長、援護射撃の用意」

〈了解〉

 四機のALが北西の方角へと走っていく。彼らに動きがあったことを当然認知した敵部隊は彼らに攻撃を加えようとするが、マズルフラッシュで位置を確認した居残り組がAIによる射撃補正を受けつつ横合いから援護射撃を行い、決死隊の発進を支援した。

 化石燃料と原子力のエンジン両方を最大出力でぶん回し、不整地を猛スピードで駆け抜けていく。岩を削り、残骸を踏み慣らし、敵陣地をすりつぶす。鋼鉄皮膚と鋼鉄の骨格を持つ巨人は、最早何者にも止められない。

 蹴り上げられた土は人によるそれとはけた違いの量で、簡単に人が埋まってしまう。中には蛸壺にこもっていた兵士が土に埋もれた後そのまま踏み潰され殺害と埋葬とをいっぺんに済まされてしまった者さえいた。

 補給もままならないまま敵部隊は砲撃を強いられる、彼らは弾薬が底を尽きかけているだけでなく、短時間の間に撃ちすぎて交換が必要になった砲身もあったが当然それらがこのような場所で交換できるはずもなく、撃てない砲もあった。勿論、交換用の砲身はさらに後方にある。

「うわっ!」

 ムートル兵長は被弾しコックピット内に火花が散ったのを見て思わず声を上げる。下手すればモニタが割れそうで恐ろしいが、今のところスモークディスチャージャーを発射するスイッチが落下して使えなくなったくらいで、戦闘行動にこれといった支障は出ていない。

「あいたっ」

 訂正、アームのマニュアル切り替えスイッチがはじけ飛んでメットに当たりどこかコックピット内の暗闇に消えていった。

 前を行くバーノウィッツ一番機の肩が被弾し右肩側面の垂れ下がっている装甲が大きな音を立てて地面に落下し、それを四番機が踏み潰す。

「曹長右から敵車両!」

〈あいよ!〉

 フーフラーファはその場に立ち止まると腕部機関砲を三点射して車両に直撃、完全に撃破とはいかなかったものの前部が大破し白煙を上げ停止、乗員もハッチから這い出てきていたのを確認したため結果オーライである。

 装甲に跳弾すると、黄色い火花が上がって綺麗だった。そうムートルは率直にこの死地においてそう感じていた。

 一直線に駆け抜けた彼らは味方の援護射撃もあり全機無事に森の中に突っ込むことができた。先頭のカタンタス准尉は棍棒を前に突き出しながら左右に振るい木をへし折りつつ盾をぶつけてなぎ倒す、そうして道を突貫で作りながら進むためその騒々しさから彼らが進む道は森の外からでも丸わかりであるが、彼らに回り道をしている時間は無かった。

 森の中に入れば巨大なALとて姿を隠せるためこちらのものであったが、逆に敵が外から撃ってきても対処しづらくなってしまうという欠点もあった。事実、今彼らは右側面の木立の隙間の闇から飛来する砲撃を受けており、今のところ命中弾はないもののいつヒットするかわからない。

〈AL!〉

 カタンタス准尉の声が耳に入り正面の一角を拡大すると、僅かに盾を構えた敵ALが二機待ち構えているのが確認できた。しか持構えているのは恐らくAL用の大型キャノン砲でああして膝立ちなどで機体を安定させなければ扱えない重火器だろう。

 このまま無暗に突っ込んでも一方的に撃破されるだけ、やむを得ず彼らはそこでいったん足を止め、フーフラーファはリンドに報告する。

〈隊長、足止めを食いました。正面約三千ほどに重火器を持ったALがいます。二機!〉

〈わかった、ムートル兵長、やれるな〉

「了解であります!」 

 自信は無かった、しかしこの場にいる四機で最も射程距離が長くこの位置から敵を撃てるのは彼だけ。砲撃用のモードに射撃システムを切りかえるとすぐにシステムは目標との彼我の距離を測定し始める、観測によると距離は三千五百、風は無し、しかし木々が邪魔をしており一撃で仕留めるのは針の穴を射貫くよりも難しそうであった。しかし、それゆえに敵もなかなか撃てないようで、足を止めて二、三分が経過していたが今ようやく一発目がバーノウィッツ小隊の補給型から十二mほど離れた位置を通過した。

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